ここまでの計算は、天体が つの世界のものでした。実際の太陽系はそうではありません。
地球は太陽に引かれているだけでなく、金星にも木星にも引かれています。ほかの惑星は近づいたり離れたりするので、その引きは向きも強さも変わりつづけます。
この、ほかの天体からの引きを摂動といいます。 体として計算した答えに、あとから足していく分です。
摂動を入れると、 体問題そのものになります。閉じた式では解けません。それでも、引きが小さいことを使えば、近づける手が使えます。
まず大きさを見ます。地球にとって、木星が引く力は太陽が引く力のどれくらいでしょうか。
木星は太陽の 分の ほどの重さです。そして、いちばん近づいたときでも太陽までの 倍以上離れています。割り算をすると、およそ 万分の になります。
だから、 体として計算した答えはたいてい合います。 年ぶんの地球の動きなら、木星を無視しても実用に差し支えません。
合わなくなるのは、長い時間が経ってからです。そこが摂動の厄介なところです。
周ごとのずれは、目に見えないほど小さい。ところが、いつも同じ向きにずれるなら話が変わります。
ばらばらの向きにずれるなら、行ったり来たりして打ち消し合います。向きがそろっていれば、 周ごとに足し算されていきます。
周あたり 度でも、 周すれば 度です。 度は、望遠鏡どころか目で見て分かる大きさです。
向きがそろうかどうかは、周期の関係で決まります。そこが次の記事の主題になります。
年に天王星が見つかったあと、その位置を追っていくと、計算した通りになりませんでした。ずれは 分角ほど。当時の観測でじゅうぶん目に見える大きさです。
ル・ヴェリエとアダムズは、それぞれ別に同じ問いを立てました。天王星をこれだけずらすには、もっと外側にどんな惑星がなければならないか。
計算は、質量と軌道と、いま空のどの向きにいるかまで返しました。 年 月 日、ベルリン天文台がその向きへ望遠鏡を向けます。その晩のうちに、予言から 度以内のところに海王星が見つかりました。
計算だけで惑星の場所を言い当てた。ニュートンの重力にとって、これ以上ない検証になりました。
ル・ヴェリエは、同じやり方を水星に当てました。水星の近日点の動きにも、ほかの惑星では説明の付かない分が 秒角だけ残っていたからです。
答えも同じ形で出しました。水星より内側に、まだ知られていない惑星があるはずだ。名前まで付けられ、バルカンと呼ばれました。
見つかりませんでした。日食のたびに探され、太陽面を横切る影が何度も報告されましたが、どれも確かめられませんでした。
摂動という考え方が破れたのではありません。足りなかったのは重力の法則のほうで、答えは 年後、一般相対性理論から出ました。同じやり方が、片方では惑星を見つけ、片方では新しい重力を指し示したことになります。