太陽系は 億年、いまの形で来ました。惑星は つとも同じ向きに、ほとんど同じ平面の上を回っています。
では、この先はどうでしょうか。 億年後も、 億年後も、同じ形をしているのでしょうか。
ケプラーの 法則も、逆二乗の力も、この問いには何も答えません。どちらも 体の話で、惑星どうしが引き合う分が入っていないからです。
この問いは、天体力学がずっと抱えてきたものです。そして、いまも完全には片づいていません。
世紀の終わり、ラプラスとラグランジュがこの問いに答えを出しました。
摂動を項ごとに展開していくと、 種類の項が出てきます。時間とともに際限なく大きくなる項と、行ったり来たりするだけの項です。前者が残れば、いつかは惑星が飛び去ります。
人は、際限なく大きくなる項が互いに打ち消し合って消えることを示しました。残るのは行ったり来たりする項だけです。だから軌道は決まった幅の中で揺れるだけで、太陽系は永遠に安定である。
この結論は 年ものあいだ受け入れられました。ラプラスは、神の手を借りずに天体の動きが説明できると言い切った人です。その自信は、この計算に支えられていました。
年、ポアンカレがその計算を調べ直しました。
摂動の級数は、項を足していくと、はじめのうち誤差が小さくなります。だから収束しているように見えます。ところがあるところを過ぎると、足すほど誤差が大きくなり、やがて発散します。
こういう級数を漸近級数といいます。途中まで使えば良い近似になりますが、無限に足すことはできません。ラプラスの証明は、収束していないものを収束したと見なしていました。
ポアンカレはこの仕事で、 体問題そのものの見方を変えました。カオスという言葉はまだありませんでしたが、初めのわずかな違いが開いていくことに気づいたのは、このときです。
級数が使えないなら、刻んで進めるしかありません。計算機が使えるようになって、ようやくそれができるようになりました。
ラスカーは 年、初めをわずかずつ変えた 本の計算を 億年ぶん走らせました。本ごとに違う先へ開いていくので、 本では意味がなく、何本も走らせて割合で見るしかありません。
ほとんどの本では、 つの惑星がいまと変わらない形で回りつづけます。ところが 本に 本ほどで、水星の離心率が大きく振れます。 を超えると金星の軌道と交わりうるところまで来ます。
その先では、水星が太陽へ落ちるか、金星とぶつかるか、弾かれて内側の惑星をかき乱すか。いずれも、いまの太陽系の形は残りません。
億年先までは、惑星の並びはまず動きません。どの計算もそろって同じことを言うので、ここは確かです。
その先は、本ごとに開いていきます。前の記事で見たとおり、 万年ごとにずれが 倍になるのですから、 億年先を 本で言い当てることはできません。
ただし、その心配より先に来るものがあります。 億年ほど先に太陽が膨らみ、内側の惑星を飲みこみます。軌道が安定かどうかは、そのころには問いとして残っていません。
ケプラーの 法則から始めて、ここまで来ました。 体は解け、 体は解けず、それでも刻めば値は出る。そして、いちばん大きな問いには、まだ答えが出ていません。