こんどはボールを高さ h_0 から落とします。相手は床で、壁と同じく動きません。
まず床に着くときの速さです。落ちているあいだ仕事をするのは重力だけですから、力学的エネルギーが保存します。ジェットコースターの講義で使ったのと同じ式です。
\dfrac{1}{2}mv^2 = mgh_0 を解いて v = \sqrt{2gh_0} となります。質量が消えました。重いボールも軽いボールも、同じ高さから落とせば同じ速さで着きます。
図では落ちるボールに速度の矢印を添えてあります。高さが減るにつれて伸びていきます。
床に触れた瞬間の話は、壁とまったく同じです。相手が動かないので、決まるのはボールの速度だけです。
v' = -ev。速さは e 倍になり、向きが上に変わります。
ここで運動量は保存しません。床が、そして床につながった地球が、その差を受け取っています。前の講義で見たとおりです。
図では床のところで矢印が向きを変えます。上向きの矢印は、下向きより短くなっています。その比が e です。
はね返ったあとは、また重力だけの運動です。ですから上がる高さも、同じエネルギー保存で出ます。
h' = \dfrac{v'^2}{2g} に v' = ev を入れます。v'^2 = e^2v^2 ですから、h' = \dfrac{e^2v^2}{2g} です。
そして \dfrac{v^2}{2g} はもとの高さ h_0 でした。まとめると h' = e^2h_0 となります。
速さは e 倍、高さは e^2 倍。2 乗になるのは、高さが速さの 2 乗で決まるからです。e = 0.8 なら速さは 8 割ですが、高さは 6 割 4 分までしか戻りません。
2 回目のはずみも、まったく同じ話です。高さ h_1 から落ちて、e^2h_1 まで上がります。
ですから h_2 = e^2h_1 = e^4h_0 となります。同じことをくり返すだけなので、n 回目は h_n = e^{2n}h_0 です。
等比数列になりました。1 回はずむごとに、決まった比 e^2 を掛けるだけです。落とした高さがいくつでも、比のほうは変わりません。
ここから e を測ることもできます。\dfrac{h_1}{h_0} = e^2 ですから、はずんだ高さともとの高さを測って、その比の平方根を取れば e が出ます。物差し 1 本でできる測り方です。