糸につるしたおもりを、水平な円を描くように回します。糸は円錐の面をなぞるので、円錐振り子といいます。
おもりにはたらく力は 2 つだけです。糸に沿う張力 S と、真下を向く重力 mg。回っているからといって、ここに何かが増えることはありません。
おもりは同じ高さを回っていて、上下には動きません。ですから鉛直の向きはつり合っています。重力を支えられるのは張力しかなく、そのためには張力に鉛直の成分がなければなりません。これが S\cos\theta = mg です。
ここから、糸が水平になれないことが分かります。\theta が 90^\circ になると \cos\theta が 0 になり、鉛直の成分が消えて重力を支える相手がいなくなるからです。どれほど速く回しても、糸はわずかに傾いたままです。
張力は斜めを向いているので、そのままでは式が立ちません。つり合っている向きと、加速している向きに分けます。鉛直と水平です。
鉛直の成分 S\cos\theta は、いま見たとおり重力とつり合います。合力は 0 で、だからおもりは上下に動きません。
水平の成分 S\sin\theta には、打ち消す相手がいません。重力は真下だけを向いていて、水平の成分を持たないからです。ですからこれがまるごと残り、中心を向く合力になります。S\sin\theta = mr\omega^2 です。
向心力の役をしているのは、張力そのものではなく、張力の水平成分だということに気をつけてください。S = mr\omega^2 と書いてしまうと、鉛直の成分まで中心向きに使ってしまうことになります。
式が 2 本そろいました。ただし r がまだ残っているので、これを糸の長さと角で書き直します。図の水平の寸法がその r で、円錐の底面の半径ですから r = L\sin\theta です。
S\sin\theta = mL\sin\theta\,\omega^2 を S\cos\theta = mg で割ります。左辺では S が、右辺では m が消えて、\tan\theta = \dfrac{L\sin\theta\,\omega^2}{g} が残ります。\tan\theta = \dfrac{\sin\theta}{\cos\theta} ですから \sin\theta も約分できて、\omega^2 = \dfrac{g}{L\cos\theta} です。
周期に直せば T = 2\pi\sqrt{\dfrac{L\cos\theta}{g}} となります。質量が消えました。単振り子のときと同じ理由です。おもりを引く力 mg も、おもりの動きにくさ m も、同じ m に比例するので、差し引きで消えます。
残った L\cos\theta は、支点から軌道の面までの深さです。図の軸に書き入れてあります。これを h と置けば T = 2\pi\sqrt{\dfrac{h}{g}} で、単振り子の T = 2\pi\sqrt{\dfrac{L}{g}} とそっくり同じ形になります。円錐振り子の周期を決めているのは、糸の長さそのものではなく、この深さのほうです。
T = 2\pi\sqrt{\dfrac{L\cos\theta}{g}} の \theta を動かしてみます。寝かせるほど \cos\theta は小さくなり、周期は短くなります。つまり速く回ります。
図の傾きは、立てた角と寝かせた角を行き来します。糸の長さは変えていないのに、寝かせたほうが目に見えて速く回ります。速く回したいから寝かせるのではなく、速く回すと寝る、という向きで読んでください。\theta を決めれば回る速さが決まり、逆に回す速さを決めれば \theta が決まります。
軌道の面の深さ h = L\cos\theta にも同じことが出ています。速く回すほど浅いところを回り、ゆっくり回すほど深いところを回ります。糸の長さは変えていないのに、面の高さだけが変わります。
\theta を 90^\circ に近づけると、周期はいくらでも短くできそうに見えます。ところが張力のほうは S = \dfrac{mg}{\cos\theta} で、こちらはいくらでも大きくなっていきます。糸が水平にならないのは、支える相手がいないからでもあり、その前に糸が切れるからでもあります。