滑車に糸を掛け、その両端におもりを吊るします。重いほうが下がり、軽いほうが上がります。式を立てる前に、この 2 つがどうつながっているのかを決めておきます。
糸は伸びません。ですから片方が下がった分だけ、もう片方がきっかり上がります。動いた距離が等しいので速さも等しく、加速度の大きさも等しくなります。向きは互いに逆ですが、大きさは 1 つの値です。これを a と書きます。
滑車はなめらかで、重さがないものとします。すると糸が滑車を回すのに力を取られません。糸が引く力、つまり張力は糸のどこでも同じ大きさになります。左のおもりを引き上げる力も、右のおもりを引き上げる力も、同じ S です。
加速度は同じ、張力も同じ。この 2 つが、これから立てる式の土台になります。2 つの物体の問題が、a と S という 2 つの未知数の問題に変わりました。
運動方程式は物体 1 つずつに立てます。2 つまとめて 1 本、とはしません。かかっている力がそれぞれ違うからです。
下がるほうのおもりから見ます。はたらいているのは、下向きの重力 m_2g と、上向きの張力 S の 2 つです。動く向きを正に取ると、m_2g - S = m_2a となります。
上がるほうのおもりも同じ手つきです。はたらいているのは下向きの重力 m_1g と上向きの張力 S で、こちらは上へ動きます。上向きを正に取れば S - m_1g = m_1a です。
未知数は a と S の 2 つ、式も 2 本そろいました。これで解けます。糸でつないだ 2 つの物体は、いつでもこの形になります。
2 本の式をそのまま足します。左辺どうし、右辺どうしを足すだけです。
張力は片方の式で -S、もう片方で +S ですから、足した瞬間に消えます。残るのは (m_1 + m_2)a = (m_2 - m_1)g です。
S が消えたのは偶然ではありません。張力は 2 つのおもりが糸ごしに及ぼし合っている力で、2 つを合わせた系の中では内側で打ち消し合います。外から見れば、はじめからなかったのと同じです。
あとは割るだけです。a = \dfrac{(m_2 - m_1)g}{m_1 + m_2} が出ました。
出てきた式を読み直します。分子は (m_2 - m_1)g で 2 つの重さの差、分母は m_1 + m_2 で 2 つの質量の和です。
動かしているのは重さの差だけ、動かされているのは 2 つ合わせた質量。つまりこの式は、糸でつないだ 2 つを 1 つのものとして見たときの ma = F そのものです。
ですから、はじめから一体として見てしまえば式は 1 本で済みます。張力は内力なので書かなくてよく、外からはたらくのは 2 つの重力だけです。差を和で割る、それだけになります。
図では吊るす重さを変えていきます。2 つが等しくなると分子が 0 になって動きません。片方をどれだけ重くしても、加速度は g に近づくばかりでそれを越えません。落ちようとするものを、軽いほうのおもりが引き留めている。その様子がそのまま式に出ています。