h_n = e^{2n}h_0 でした。この高さは、何回はずんでも 0 になりません。
e が 1 より小さいので e^{2n} はどんどん小さくなりますが、掛け算をくり返しているだけですから、ちょうど 0 になることはありません。
ということは、はずむ回数は無限です。100 回目にも 1000 回目にも、ボールはわずかに浮き上がります。
それなのに、本物のボールは目の前で止まります。無限にはずむのに止まる。この 2 つをどうやって両立させるのかが、この講義です。
時間のほうを数えます。まず落ちるのにかかる時間です。h_0 = \dfrac{1}{2}gt_0^2 を解いて t_0 = \sqrt{\dfrac{2h_0}{g}} です。
1 回目にはずんだあとは、高さ h_1 まで上がって戻ってきます。上りと下りは同じ時間ですから、往復で 2\sqrt{\dfrac{2h_1}{g}} です。
h_1 = e^2h_0 ですから、根号の中の e^2 が外へ出て 2e t_0 となります。高さは e^2 倍でしたが、時間は e 倍です。
n 回目も同じで、t_n = 2e^nt_0 です。1 回はずむごとに、時間も決まった比 e で縮んでいきます。
止まるまでの時間は、これを全部足したものです。T = t_0 + 2et_0 + 2e^2t_0 + \cdots となります。
項は無限にあります。ですが、後ろへ行くほど小さくなります。図の帯を見てください。1 本ずつ足していっても、右端が伸びきらずにある線へ近づいていきます。
足しているのは等比級数です。公比が e で、e は 1 より小さい。こういう級数は無限に足しても有限の値になります。e + e^2 + \cdots = \dfrac{e}{1 - e} です。
項の数が無限であることと、和が無限になることは、別のことでした。ここがこの講義の勘どころです。
代入します。T = t_0\left(1 + \dfrac{2e}{1 - e}\right) で、括弧の中を通分すると \dfrac{1 + e}{1 - e} になります。
まとめると T = \sqrt{\dfrac{2h_0}{g}} \cdot \dfrac{1 + e}{1 - e} です。無限にはずむのに、止まるまでの時間は有限でした。
e を 1 に近づけていくと、分母が 0 に近づいて T は際限なく伸びます。図のグラフがそれです。e = 1 なら永遠にはずみ続けます。エネルギーが減らないのですから当然です。
シミュレーターの式のパネルに、この T がそのまま出ています。落とす高さと e を変えて、止まるまでの時間と見比べてみてください。