前の講義で、横と縦を別々に追いかけました。水平は x = v_0\cos\theta \, t、鉛直は y = v_0\sin\theta \, t - \dfrac{1}{2}gt^2 です。分けたおかげで、どちらもよく知っている運動になりました。
この 2 つの式には、同じ t が入っています。時刻を 1 つ決めれば x が決まり、y も決まる。図の球の位置は、そうやって決まっています。寸法で測っている x と y は、いつも同じ時刻のものです。
ところが、この形のままでは軌道の形が見えません。x と y の関係が、t を間に挟んでしか書かれていないからです。時計を持っていない人には、球がどんな線を描くのか読み取れません。
軌道の形を知るには、t を消してしまえばよいことになります。y を x だけで書き直すのです。
消すといっても、片方の式を捨てるわけではありません。t を x で書き直して、もう一方の式へ入れます。
使うのは水平の式です。x = v_0\cos\theta \, t を t について解けば t = \dfrac{x}{v_0\cos\theta} になります。水平の速さは飛んでいるあいだ変わらず、0 にもなりません。だからこの割り算はいつでも通ります。
図には、等しい時間ごとの目印を 2 列に置いてあります。軌道の上の目印は、上のほうでは詰まり、下のほうでは開いています。ところが地面に並んだ目印は、どこも等間隔です。
この等間隔が効いています。時刻と x が 1 対 1 で結ばれているので、t を言う代わりに x を言えばよい。目盛のついたものさしとして、時計の代わりに地面を使えるということです。
鉛直の式の t に、いま作った \dfrac{x}{v_0\cos\theta} を入れます。整理すると y = x\tan\theta - \dfrac{g}{2v_0^2\cos^2\theta}x^2 になりました。t はどこにも残っていません。
これは x の 2 次式です。x^2 の係数は -\dfrac{g}{2v_0^2\cos^2\theta} で、g も v_0^2 も \cos^2\theta も正ですから、全体は負になります。2 次の係数が負なら、グラフは上に凸の放物線です。
図から時間の目印が消えているのに気づいたでしょうか。もう要らないからです。x を 1 つ決めれば y が決まる、というのがこの式の言っていることで、そこに時刻は出てきません。
地面と交わる 2 点にも印を打ってあります。y = 0 とおいた 2 次方程式の解が、発射点と着地点です。放物線という名前は、まさにこの運動から来ています。物を放ったときに描く線、という意味です。
2 次関数の頂点は、放物線のいちばん高いところです。運動のほうから見れば、上がるのをやめて下りに変わる瞬間にあたります。
その変わり目は、鉛直の速度が 0 になるところです。v_y = v_0\sin\theta - gt が 0 になるのは t = \dfrac{v_0\sin\theta}{g} のときで、この時刻の高さを求めると H = \dfrac{v_0^2\sin^2\theta}{2g} になります。平方完成で頂点を出しても同じ答えになりますが、物理としては、鉛直の速度が消える瞬間として取るほうが素直です。
ここで取り違えやすいのは、頂点で球が止まると思ってしまうことです。0 になったのは鉛直の成分だけで、水平の成分 v_0\cos\theta はそのまま残っています。図の矢印を見てください。頂点にさしかかると縦の矢印が消え、横の矢印だけが 1 本残ります。最高点での速さは v = v_0\cos\theta です。
頂点を通る縦の線で、放物線は左右対称です。上がるのにかかる時間と下りるのにかかる時間が同じであること、同じ高さを通るときの速さが同じであること。どちらもこの対称性の言い換えです。