周期表と電子配置

元素を原子番号の順に並べる

1869 年、メンデレーエフは、当時知られていた元素を原子量の順に並べ、性質の似た元素が一定の間隔で現れることを表にまとめました。まだ見つかっていない元素の場所は空けておき、その性質を予言しています。ガリウム、スカンジウム、ゲルマニウムは、その後に見つかり、予言とよく合いました。

今の周期表は、原子番号、つまり原子核の陽子の数の順に並べています。X 線のスペクトルの記事で見たように、1913 年にモーズリーは、特性 X 線の振動数から原子番号を決められることを示しました。

横の行を周期、縦の列を族といいます。同じ族の元素は似た性質を持ちます。1 族のリチウム、ナトリウム、カリウムは水と激しく反応する金属で、18 族のヘリウム、ネオン、アルゴンはほとんど反応しない気体です。

図の色は、原子番号の順に電子を入れていったとき、最後の電子が s, p, d, f のどの軌道に入るかで分けたものです。左の 2 列が s ブロック、右の 6 列が p ブロック、中ほどの 10 列が d ブロック、下に離して置いた 14 列が f ブロックです。

列の数 2, 6, 10, 14 は、それぞれの軌道に入れる電子の数 2(2l + 1) です。ヘリウムは 1s で終わるので s ブロックの色にしていますが、性質が貴ガスに近いので 18 族に置かれます。

電子が入る順番

電子が 2 個以上ある原子では、エネルギーが n だけでなく l にもよります。原子番号が 1 増えるたびに、加わった電子は、空いている中でいちばんエネルギーの低い状態に入ります。

入る順番は 1s, 2s, 2p, 3s, 3p, 4s, 3d, 4p, 5s, 4d, 5p, 6s, 4f, 5d, 6p, 7s, 5f, 6d, 7p です。4s が 3d より先に入るのは、4s が原子核のすぐ近くにも確率を持ち、内側の電子による遮へいを受けにくいからです。カリウムとカルシウムでは、4s のエネルギーが 3d より低くなります。

この順番は、n + l の小さい順に並べ、n + l が同じなら n の小さいほうを先にすると得られます。図は、n を縦、l を横にして軌道を並べ、n + l が同じ軌道を斜めの矢印でつないだものです。矢印に沿って上から順にたどると、入る順番になります。

この規則はマーデルングの規則と呼ばれます。すべての元素で成り立つわけではなく、順番どおりにならない例は最後の場面で扱います。また、原子がイオンになったり化合物を作ったりすると、4s と 3d のエネルギーの順が入れかわることもあります。

周期の長さが決まる理由

周期は、新しい n の s 軌道に電子が入り始めるところで始まり、p 軌道が埋まって貴ガスになるところで終わります。第 1 周期は 1s だけで 2 個、第 2 周期は 2s と 2p で 8 個、第 3 周期は 3s と 3p で 8 個です。

第 4 周期では、4s と 4p のあいだに 3d が入るので、2 + 10 + 6 = 18 個になります。第 6 周期では 6s、4f、5d、6p が入り、2 + 14 + 10 + 6 = 32 個です。周期の長さ 2, 8, 8, 18, 18, 32, 32 は、こうして決まります。

第 3 周期が 18 個ではなく 8 個なのは、3d のエネルギーが 4s より高く、第 3 周期のうちには埋まらないからです。主量子数 n = 3 の状態は 18 個ありますが、周期の長さは n ごとの状態の数ではなく、エネルギーの近い軌道のまとまりで決まります。

図の横棒は、それぞれの周期に入る軌道と電子の数を、軌道の種類ごとの色で表したものです。4f と 5f が入る第 6・第 7 周期の 14 個の元素は、周期表では下に離して書かれる f ブロックです。

イオン化エネルギーのくり返し

原子から電子を 1 個取り去るのに必要なエネルギーを、イオン化エネルギーといいます。図は原子番号 1 から 36 までの値で、水素は 13.6 eV、ヘリウムは 24.6 eV です。

値は貴ガスで大きくなり、そのすぐ次のアルカリ金属で急に小さくなります。ネオンの 21.6 eV に対して、ナトリウムは 5.14 eV です。ナトリウムの 3s の電子は新しい殻に 1 個だけ入っていて、内側の 10 個の電子に遮へいされ、原子核に弱くしか引かれていないからです。

同じ周期の中では、原子番号が増えるほど原子核の電荷が増え、イオン化エネルギーはおおむね大きくなります。ただし、ベリリウムからホウ素(9.32 eV から 8.30 eV)と、窒素から酸素(14.5 eV から 13.6 eV)では下がります。ホウ素では 2s より高い 2p に最初の電子が入り、酸素では 1 つの 2p に 2 個目の電子が入って、電子どうしが反発するからです。

第 4 周期のスカンジウムから銅までは、内側の 3d に電子が入っていくので、イオン化エネルギーは 6.5 eV から 7.9 eV のあいだで、あまり変わりません。

イオン化エネルギーが小さい元素ほど陽イオンになりやすく、化学反応の起こりやすさに関わります。周期表で元素の性質がくり返すことは、電子の入り方がくり返すことの現れです。

フントの規則と例外

エネルギーの同じ軌道が複数あるとき、電子はまず別々の軌道に、スピンを同じ向きにそろえて入ります。これをフントの規則といいます。同じ軌道に 2 個入るより離れた軌道に入るほうが電子どうしの反発が小さく、スピンのそろった電子は、排他原理の記事で見たように同じ場所に来ないためです。

炭素では 2 個、窒素では 3 個の 2p の電子が、それぞれ別の軌道に同じ向きで入ります。酸素で 4 個目の 2p の電子が入ると、どれか 1 つの軌道に 2 個が入ることになります。前の場面で見た、窒素から酸素でイオン化エネルギーが下がる理由です。

順番どおりにならない元素もあります。クロムは、順番どおりなら 3\mathrm{d}^4\,4\mathrm{s}^2 ですが、実際は 3\mathrm{d}^5\,4\mathrm{s}^1 です。銅も 3\mathrm{d}^9\,4\mathrm{s}^2 ではなく 3\mathrm{d}^{10}\,4\mathrm{s}^1 です。3d と 4s のエネルギーが近く、5 つの d 軌道に 1 個ずつスピンをそろえて入った状態や、10 個で埋まった状態のほうが、全体のエネルギーが低くなるためです。

図では、上に実際の電子配置を、下に薄い色で、順番どおりに入れた場合を描いています。

周期表の形は、電子が状態を埋めていく順番と、1 つの状態には電子が 1 個しか入れないという排他原理から説明できます。1922 年にはボーアが、原子の模型をもとに周期表の形を説明しようとし、まだ見つかっていなかった原子番号 72 の元素が希土類ではなく、ジルコニウムに似た元素だと考えました。翌年に見つかったハフニウムは、その考えのとおりでした。

光の粒子性
物質の波動性
原子のエネルギー準位
シュレーディンガー方程式
角運動量と水素原子
スピンと周期表
分子と固体
量子もつれ