ミクロカノニカル集団:孤立系の統計力学

統計力学では、同じマクロ条件を満たす仮想的な系の集まりを「集団」または「アンサンブル」と呼びます。最も基本的なのがミクロカノニカル集団で、エネルギーが一定の孤立系を記述します。

ミクロカノニカル集団とは

ミクロカノニカル集団は、エネルギー 、体積 、粒子数 が固定された孤立系の集まりです。この条件を満たすすべてのミクロ状態が等確率で実現します。

固定される量

エネルギー 、体積 、粒子数

基本原理

エネルギー をもつすべてのミクロ状態は等しい確率 で出現する

外部との熱や粒子のやりとりがない理想化された状況ですが、統計力学の基礎を理解するうえで重要な出発点となります。

状態数とエントロピー

エネルギーが から の範囲にあるミクロ状態の数を とします。厳密には の取り方に依存しますが、マクロな系では結果は によりません。

エントロピーはボルツマンの公式で与えられます。

ミクロカノニカル集団では、この が基本的な熱力学関数となります。

温度の統計力学的定義

熱力学では温度 はエントロピーの 微分で定義されます。

この関係を使えば、状態数 から温度を計算できます。

状態数 を計算

エントロピー を求める

から温度を導出

他の熱力学量も導出可能

エントロピーがエネルギーの増加関数であれば となります。通常の系ではこれが成り立ちますが、スピン系など上に有界なエネルギーをもつ系では負の温度も可能です。

熱平衡の条件

2つの系 A と B が熱接触したとき、全系のエネルギー は一定です。全系の状態数は

と書けます。平衡状態はこの が最大となる分配で実現します。

最大化の条件を求めると

すなわち が得られます。これは熱平衡で温度が等しくなることの統計力学的な証明です。

系 A の温度が高い

が小さい。エネルギーを放出する傾向がある。

系 B の温度が低い

が大きい。エネルギーを吸収する傾向がある。

エネルギーは「温度の高い系から低い系へ」移動し、最終的に温度が等しくなって平衡に達します。

理想気体への適用

個の単原子理想気体分子がエネルギー をもつとき、状態数は

と計算できます。ここからエントロピーは

温度は より

これは理想気体の内部エネルギーの公式そのものです。ミクロカノニカル集団から熱力学の結果が再現されました。