分配関数:統計力学の中心的道具

カノニカル集団において、分配関数は最も重要な量です。一度分配関数を計算すれば、そこからすべての熱力学量を導くことができます。統計力学の問題を解くとは、多くの場合、分配関数を求めることに帰着します。

分配関数の定義

分配関数 (Zustandssumme、ドイツ語で「状態の和」)は、すべてのミクロ状態にわたるボルツマン因子の和として定義されます。

連続的なエネルギー準位をもつ古典系では、和を位相空間上の積分に置き換えます。

ここで はハミルトニアン、 は量子補正の因子です。

離散系(量子系)

(エネルギー準位 についての和)

連続系(古典系)

(位相空間積分)

熱力学量との関係

分配関数から、すべての熱力学量が導かれます。これが分配関数の威力です。

ヘルムホルツ自由エネルギー

で与えられます。 は温度 、体積 、粒子数 の関数であり、カノニカル集団の自然な熱力学ポテンシャルです。

分配関数 を計算

自由エネルギー

エントロピー

内部エネルギー 、圧力

よく使う関係式をまとめておきましょう。

自由エネルギー
内部エネルギー
エントロピー
圧力
比熱

具体例:二準位系

エネルギーが の2つの状態しかない系(二準位系)を考えます。分配関数は

自由エネルギーは

平均エネルギーは

低温では (基底状態)、高温では (両状態が等確率)となります。

独立系の分配関数

相互作用しない系 A と B の合成系を考えると、分配関数は積になります。

これは の加法性 に対応します。

同種の独立な粒子 個からなる系では、1粒子分配関数 を使って

と書けます。 は同種粒子の識別不可能性を考慮したギブズ因子です。

この性質により、複雑な系の分配関数も、独立な部分に分解して計算できることが多いです。分配関数は統計力学の計算における中心的な道具であり、その扱いに習熟することが統計力学をマスターする鍵となります。