理想気体の統計力学:状態方程式の導出
理想気体は統計力学の最も基本的な応用例です。相互作用しない粒子の集まりとして定式化でき、分配関数から状態方程式をはじめとする熱力学的性質がすべて導かれます。
理想気体のモデル
理想気体は以下の仮定に基づきます。
粒子間相互作用なし
粒子同士のポテンシャルエネルギーはゼロ。各粒子は独立に運動する。
点状粒子
粒子の大きさは無視できる。排除体積効果がない。
これらの仮定のもと、 個の単原子分子からなる系のハミルトニアンは、運動エネルギーの和だけになります。
1粒子分配関数
まず1粒子の分配関数 を計算します。
位置積分は体積 を与え、運動量積分はガウス積分で
3次元なので3乗して
ここで は熱的ド・ブロイ波長と呼ばれる量です。
N粒子分配関数
個の同種粒子からなる系の分配関数は、1粒子分配関数を使って
と書けます。 は同種粒子の識別不可能性を反映したギブズ因子です。
1粒子分配関数
粒子分配関数
自由エネルギー
状態方程式や内部エネルギーを導出
状態方程式の導出
自由エネルギーは、スターリングの公式 を使って
圧力は
これが理想気体の状態方程式 です。統計力学から熱力学の基本法則が導かれました。
内部エネルギーと比熱
内部エネルギーは
定積熱容量は
単原子理想気体では、1粒子あたり の熱容量をもちます。これは3つの並進自由度それぞれに のエネルギーが分配されることに対応しています。
単原子分子
自由度3(並進のみ)。
二原子分子(室温)
自由度5(並進3+回転2)。
エントロピー:サッカー・テトロードの式
エントロピーは
これはサッカー・テトロードの式と呼ばれます。ギブズ因子 がないと、混合のパラドックスが生じてしまうことがこの式から確認できます。
理想気体の統計力学的取り扱いは、より複雑な系への出発点となります。実在気体では粒子間相互作用を取り入れ、量子統計ではフェルミ-ディラック統計やボース-アインシュタイン統計を適用していきます。