グランドカノニカル集団:粒子数が変化する系
ミクロカノニカル集団やカノニカル集団では粒子数が固定されていました。しかし、化学反応や吸着現象など、粒子数が変化する系も数多く存在します。そのような系を扱うのがグランドカノニカル集団です。
グランドカノニカル集団の設定
グランドカノニカル集団では、系が熱浴だけでなく粒子浴とも接触しています。エネルギーと粒子の両方が系と外部の間でやりとりされます。
温度 、体積 、化学ポテンシャル
エネルギー 、粒子数 (どちらも確率的に分布)
化学ポテンシャル は、粒子を1個加えるときの自由エネルギー変化に相当します。粒子浴と接触した系では、 が一定に保たれます。
グランドカノニカル分布
エネルギー で粒子数 の状態が実現する確率は
で与えられます。指数の中に が加わっているのがカノニカル分布との違いです。
規格化定数 は大分配関数(グランドパーティション関数)と呼ばれ
と定義されます。 は粒子数 のカノニカル分配関数です。
逃散能(フガシティ)
計算上便利な量として、逃散能(フガシティ)
を導入することがあります。これを使うと、大分配関数は
と、粒子数についての母関数の形になります。
粒子数の小さい状態が支配的。系はほぼ空。
粒子数の大きい状態が支配的。系は粒子で満たされる。
熱力学量の導出
大分配関数から熱力学量を導く基本式は
です。これはグランドポテンシャル とも書けます。
平均粒子数は
で計算されます。
大分配関数 を計算
グランドポテンシャル
平均粒子数
圧力
理想気体への適用
理想気体の場合、各粒子は独立なので大分配関数は
となります。ここで は1粒子分配関数、 は熱的ド・ブロイ波長です。
より
が得られ、理想気体の状態方程式 が再現されます。
グランドカノニカル集団は、量子統計力学において特に威力を発揮します。フェルミ-ディラック統計やボース-アインシュタイン統計を扱う際には、粒子数を固定せずに扱う方が計算が格段に簡単になるからです。