相転移と臨界現象:秩序と無秩序の境界

水が氷になる、磁石が磁性を失う、超伝導が発現する。これらはすべて相転移と呼ばれる現象です。統計力学は相転移を微視的な観点から理解する枠組みを提供し、臨界現象における普遍的な法則を明らかにしてきました。

相転移とは

相転移は、温度や圧力などの制御パラメータを変えたとき、物質の状態(相)が急激に変化する現象です。

一次相転移

潜熱を伴う。氷と水、液体と気体など。2つの相が共存できる。

二次相転移(連続相転移)

潜熱なし。秩序パラメータが連続的にゼロになる。強磁性体のキュリー点など。

一次相転移では、転移点で自由エネルギーの一階微分(エントロピーや体積)が不連続になります。二次相転移では一階微分は連続ですが、二階微分(比熱や磁化率)が発散します。

秩序パラメータ

相転移を特徴づける量として、秩序パラメータが重要です。

秩序パラメータ高温相低温相
強磁性体自発磁化
超流動凝縮体密度
液晶配向秩序等方的配向あり

二次相転移では、転移温度 で秩序パラメータが連続的にゼロになります。

指数 は臨界指数と呼ばれます。

臨界現象

転移点近傍では、揺らぎが異常に大きくなり、多くの物理量が発散します。

転移点から離れた領域

揺らぎは小さく、平均場近似が有効。

転移点近傍

揺らぎが系全体に広がる。相関長 が発散し、臨界現象が現れる。

相関長 は、秩序の空間的な広がりを表します。

となり、系全体が相関をもちます。

臨界指数と普遍性

臨界指数は、相転移の性質を定量的に特徴づけます。

比熱の発散:
秩序パラメータ:
帯磁率の発散:
相関長:

驚くべきことに、これらの臨界指数は系の微視的詳細によらず、空間次元と秩序パラメータの対称性だけで決まります。これが普遍性(ユニバーサリティ)です。

3次元イジング模型(磁性体)

3次元気液臨界点

同じ臨界指数を示す

普遍性クラスが同じ

平均場理論の限界

単純な平均場理論では、臨界指数は空間次元によらず一定値( など)を予測します。しかし実験や厳密解では異なる値が得られます。

平均場

3次元イジング

平均場理論は揺らぎを無視しているため、臨界点近傍では不正確になります。くりこみ群の方法により、揺らぎを取り込んだ正しい臨界指数が計算できます。

相転移と臨界現象の研究は、統計力学の最も深い成果の一つです。異なる物理系が同じ普遍的法則に従うという発見は、複雑な系の中にある単純さを示しています。