ボース-アインシュタイン統計:ボソンの世界

光子や特定の原子などのボソンは、フェルミオンとは対照的に、同じ量子状態をいくつでも占有できます。この性質から導かれるボース-アインシュタイン統計は、レーザーの原理から極低温原子気体の凝縮まで、多彩な現象を説明します。

ボース-アインシュタイン分布

エネルギー の量子状態の平均占有数は

で与えられます。フェルミ-ディラック分布との違いは、分母が ではなく であることです。

フェルミ-ディラック

、占有数は

ボース-アインシュタイン

、占有数に上限なし

占有数が正であるためには 、すなわちすべてのエネルギー準位で が必要です。基底状態のエネルギーを とすれば、 という制約があります。

導出の概略

エネルギー の状態について、ボソンでは占有数 のいずれも許されます。大分配関数は

等比級数の和を使いました。平均占有数は

これがボース-アインシュタイン分布です。

光子気体(黒体輻射)

光子は質量ゼロのボソンで、生成・消滅が自由に起こります。そのため粒子数は保存せず、化学ポテンシャルは となります。

振動数 の光子のエネルギーは なので、平均占有数は

これを状態密度と組み合わせると、プランクの黒体輻射公式が導かれます。

光子はボソン、化学ポテンシャル

ボース-アインシュタイン分布を適用

状態密度 と組み合わせる

プランク分布

プランクが1900年にこの式を発見したことが、量子論の始まりでした。

高温・低温の極限

粒子数が保存するボソン系(ヘリウム4原子など)では、分布の振る舞いは温度によって変わります。

高温極限

で、マクスウェル-ボルツマン分布に近づく。古典理想気体の振る舞い。

低温極限

に近づき、基底状態の占有数が巨視的になる。ボース-アインシュタイン凝縮の発生。

フォノンと固体比熱(デバイ模型)

固体中の格子振動(フォノン)もボソンです。フォノンは光子と同様に生成・消滅が自由なので です。

デバイは振動数に上限(デバイ振動数 )を設け、振動数分布を考慮しました。デバイ温度 を用いると、低温での比熱は

となります。これはアインシュタイン模型の指数関数的減少と異なり、実験結果とよく一致します。

ダイヤモンド K
K
K

デバイ温度が低いほど、低温での量子効果が現れやすくなります。

ボース-アインシュタイン統計は、光子・フォノン・プラズモンなどの準粒子から、極低温原子気体まで、幅広い系に適用されます。その最も劇的な帰結であるボース-アインシュタイン凝縮は、次の記事で詳しく見ていきます。