比熱と熱容量の違い - 公式・物質ごとの値・熱量の保存
同じ火にかけても、水はなかなか熱くならないのに、フライパンはすぐ熱くなります。同じ熱を受けても温度の上がり方が違う。
その違いを表す量が比熱です。物体ごとにまとめた量が熱容量になる。
以下では熱と温度の区別から始め、熱容量と比熱の違いを押さえ、熱量の保存で混合の問題を解けるところまで進みます。
熱と温度は別のもの
温度は物体の熱さの度合いで、単位は か です。分子がどれくらい激しく動いているかを表す量。
熱は移動するエネルギーで、単位は です。高温の物体から低温の物体へ流れる。
の湯 と の湯 は同じ温度ですが、持っているエネルギーは 1000 倍違います。温度が同じでも熱の量は違う。
「熱が高い」という言い方はしません。高いのは温度で、熱は量として多い少ないと言う。
触れさせておくと温度がそろう
温度の違う 2 つの物体を触れさせると、高いほうから低いほうへ熱が流れます。やがて同じ温度で落ち着く。
この状態を熱平衡といいます。温度という量が測れるのは、熱平衡が推移的に成り立つおかげです。A と B がつり合い、B と C がつり合えば、A と C もつり合う。
落ち着く温度は真ん中とは限りません。温まりにくい側へ寄る。
左は温まりにくく冷めにくい物体、右はその逆です。落ち着く先が左に近い位置になっている。
どちらへどれだけ寄るかを決める量が、次に見る熱容量です。
熱容量
その物体の温度を 上げるのに要る熱を熱容量といいます。記号は 、単位は 。
熱容量は物体ごとの量です。同じ鉄でも、大きいかたまりのほうが熱容量は大きい。
は温度差なので、 で測っても で測っても同じ値になります。差をとる場面では単位を直す必要がない。
比熱
物質 の温度を 上げるのに要る熱を比熱といいます。記号は 、単位は 。
質量 の物体なら、熱容量は比熱に質量を掛けたものになる。
比熱は物質で決まる量です。鉄なら大きさによらず で変わらない。
熱容量と比熱の違い
混同しやすいところなので、図で分けておく。

左の組は同じ鉄で、質量だけが 2 倍です。熱容量は 2 倍になりますが、比熱は同じ のまま。
右の組は同じ で、物質が違います。比熱が違うので熱容量も違う。
物質の性質を言いたいときは比熱、目の前の物体について言いたいときは熱容量を使う。
例:水を温めるのに要る熱
の水 を まで温めます。水の比熱を とする。
温度差は です。
が要ります。 の電気ケトルなら、すべてが水に入るとして 秒。実際は容器も温まるのでもう少しかかる。
物質によって比熱が違う
主な物質の比熱を並べる。どれも での値です。
| 物質 | 比熱 J/(g·K) | 熱容量 100 g あたり |
|---|---|---|
| 水 | 4.18 | 418 J/K |
| 氷 | 2.05 | 205 J/K |
| エタノール | 2.44 | 244 J/K |
| 空気 | 1.01 | 101 J/K |
| アルミニウム | 0.90 | 90 J/K |
| ガラス | 0.84 | 84 J/K |
| 鉄 | 0.45 | 45 J/K |
| 銅 | 0.39 | 39 J/K |
| 鉛 | 0.13 | 13 J/K |
高校の問題では水を 、鉄を に丸めて使うことが多い。

水の棒だけが突き出ています。鉄のおよそ 9 倍、鉛の 32 倍。
金属はどれも低い値です。だからスプーンは湯につけるとすぐ熱くなり、口に運ぶころには冷めている。
例:同じ熱を加えて比べる
の水と の鉄に、それぞれ ずつ加えます。
水のほうは温度差が次のようになる。
鉄は も上がりました。同じ熱を入れても、比熱が小さいほど温度が跳ね上がる。
同じ質量の水と鉄を、同じ火で同じ時間だけ熱しました。温度が高くなるのはどちらですか。
- 水
- 鉄
- どちらも同じ
- 火の強さで決まる
水の比熱が大きいこと
水の比熱が高いのは、分子どうしが水素結合で結ばれているからです。加えた熱の一部が結合をゆるめるほうへ回り、そのぶん温度が上がりにくくなる。
この性質が気候を左右します。海は温まりにくく冷めにくいので、まわりの気温の振れ幅を小さく抑える。
砂浜は昼に足を置けないほど熱くなり、夜には冷えきります。すぐ隣の海はほとんど動かない。
海に近い土地の気温が内陸より穏やかなのも、同じ理由です。湯たんぽに水を使うのも、大きな熱容量に熱をためられるからになります。
熱量の保存
外へ熱が逃げない状態で 2 つの物体を触れさせると、片方が失った熱と、もう片方が得た熱が等しくなります。これを熱量の保存という。
高温側を 、低温側を 、落ち着く温度を とすると、次の式になる。
左辺も右辺も正の値になるよう、温度差を引く向きに気をつけて書きます。高温側は 、低温側は 。
例:お湯と水を混ぜる
の湯 と の水 を混ぜます。落ち着く温度を求める。
どちらも水なので比熱は共通で、式から消える。
真ん中の より低くなりました。量の多い水のほうへ引っぱられている。
赤と青の棒がいつも同じ長さで伸びていきます。片方が失った分だけ、もう片方が受けとっている。
温度のほうは同じ幅では動きません。湯は 下がり、水は しか上がらない。質量が違うからです。
例:金属の比熱を測る
に熱した金属 を、 の水 に入れました。全体が で落ち着いたとする。
金属が失った熱と水が得た熱を等しく置く。
鉄の に近い値が出ました。この手順が比熱の測り方そのものです。

外側との間に断熱材をはさみ、熱が逃げないようにします。かき混ぜ棒は水の温度を場所によらず同じにするためのもの。
内側の容器も温度計もいっしょに温まります。きちんと測るなら、その分を式に入れる必要がある。
容器の熱容量を忘れない
問題文に容器の熱容量が書いてあれば、低温側にまとめて足す。容器は水と同じ温度変化をするからです。
容器の熱容量を と書くと、次の形になります。
は の値なので、質量を掛けません。ここで を掛けてしまう誤りが多い。
例:容器を含めて解く
熱容量 の容器に の水 が入っています。そこへ の湯 を注ぐ。
容器は水と同じ から温まる。
容器を無視して解くと になります。 のずれ。容器が熱を分けとった分だけ低くなっている。
カロリーとジュール
熱の単位にはカロリーもあります。水 を 上げる熱が で、 にあたる。
定義がこうなっているので、水の比熱はカロリーで測るとちょうど です。
物理では を使います。食品の表示に出るカロリーは 倍の で、記号が大文字の になっていることもある。
1 mol あたりで測ることもある
気体を扱うときは、質量ではなく物質量で割った値を使う。 を 上げる熱がモル比熱です。
固体や液体では あたりの比熱、気体では あたりのモル比熱。どちらで割ったかで数値がまるで変わるので、単位を見て見分けます。
気体では体積を止めるか圧力を止めるかでも値が変わる。固体や液体ではその差がほとんどないので、区別せずに 1 つの比熱を使います。
よくある誤り
最後に、間違えやすいところを並べます。











同じ熱を受けたとき、ΔT=Q/(mc) は比熱に反比例します。鉄の比熱は水の 9 分の 1 ほどなので、温度は 9 倍近く上がります。