次の文章を読んで,[ ]に適した式または数値を,それぞれの解答欄に記入せよ。なお,二重の枠はすでに同じ記号の枠で与えられたものと同じものを表す。問 1,問 2 では,指示にしたがって,解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。ただし,円周率は とし,角度の単位にはラジアンを用いる。
偏光はディスプレーや光通信,光量子技術など様々な分野で利用されている。この偏光を操作する方法について考えてみよう。
光は電磁波の一種であり,電場と磁場が光の進行方向と垂直に振動しながら伝わる。電場の振動する方向を,ここでは偏光の方向と呼ぶ。電場はベクトルであり,異なる 2 つの方向の成分に分解し,また合成して考えることができる。偏光板は,ある特定の方向(透過軸と呼ぶ)と平行に振動する電場成分を損失なく透過し,透過軸と垂直に振動する電場成分を完全に遮断するとする。また以下で考える光検出器の信号強度 は,偏光の方向に依存せず,入射する光の電場の振幅の 2 乗に比例するものとする。
なお偏光板や光検出器および後述する透明物体は,その表面が光の進行方向と垂直になるように真空中に置かれており,表面における光の位相の変化や反射は無視する。また,以下での入射光の波長の値は真空中での値とする。
いま図 1(a)のように,波長が の単色の入射光を,偏光板 を通過させた後,光検出器で検出した。 軸を光の進行方向として図 1(a)の左下のように 軸と 軸をとり,偏光板の透過軸と 軸のなす角度を とする。偏光板は の範囲で, 平面内で回転できる。入射光にはいろいろな方向に振動する光が一様に含まれている。そのため, を上記の範囲で変化させたとき,光検出器の信号強度は で常に一定であった。また,他の波長の入射光を用いた場合にも同様の結果が得られた。偏光板 を通過した後の光の状態は,その大きさが電場の振幅で,その向きが電場の向きと一致するベクトル (以下,これを振幅ベクトルと呼ぶ)を用いて特徴づけられる。図 1(b)に示すように, は 軸方向の成分と 軸方向の成分に分解して考えることができ, と表せる。なお図 1(b)では紙面の裏から表の向きを 軸の正の方向とする。
(1) 図 2 のように,偏光板 と光検出器の間に偏光板 を設置した。偏光板 の角度 を に固定し,偏光板 の角度 だけを変化させた場合,前ページの下線部に注意すると,光検出器の信号強度は [あ] となる。また,偏光板 の角度 と,偏光板 の角度 を,同じ角度にして変化させた場合の光検出器の信号強度は [い] となる。
(2) 偏光の方向を操作する方法として,偏光板のみを用いる方法について考えよう。図 3 のように,偏光板 の角度を ,偏光板 の角度を に固定し,その間に偏光板 を,角度を にして設置した。波長 の光を入射したときの光検出器の信号強度 は,[う] である。
次に図 4 のように,偏光板 の角度を ,偏光板 の角度を に固定し,その間に偏光板を ( は 以上の整数)枚設置した。偏光板 に近いものから順に偏光板 (,…,)と呼び,偏光板 の角度を に設定する。波長 の光を入射したときの光検出器の信号強度 は,[え] であり, のときには [お] となる。
さらに が より十分大きい場合について考えてみよう。 が より十分小さい()とき と近似でき,また を定数として のとき と近似できることを用いると,[え] は [か] と近似できる。このことから, の極限での光検出器の信号強度 は, に漸近することがわかる。この結果より,光強度を減衰させずに偏光の方向を角度 だけ回転させることが,原理的には偏光板のみを用いて可能であるという,興味深い結論が得られる。
(3) 偏光の方向を操作する別の方法として,光の偏光の方向によって屈折率が異なる透明な媒質を用いる方法について考えよう。図 5 のように,偏光板 と偏光板 の間に,そのような媒質からなる直方体の透明物体を挿入した場合を考える。その光の進行方向の厚みを ,光の電場の振動方向が 軸方向の場合の屈折率を , 軸方向の場合を とし,これらの屈折率は光の波長によらず一定で,互いに異なる()とする。また,この透明物体中では,光は偏光の方向によらず同じ経路を直進し,光の吸収は無視できるとする。
いま偏光板 の角度 と偏光板 の角度 をともに に設定し,波長 の光を入射すると,光検出器の信号強度が になった。このような状況になる透明物体の最小の厚みを求めてみよう。
偏光板 を通過した光の偏光方向が 軸となす角度は であり,電場の 軸方向成分と 軸方向成分は,それぞれの振幅を , として同位相(位相差 )で振動している。透明物体部分の光路長は電場の 軸方向成分に対しては [き], 軸方向成分に対しては [く] であり,それらの光路差()は [け] で与えられる。この光路差が, および 以上の整数 を用いて [こ] と表されるとき,透明物体を通過した後の電場の 軸方向成分と 軸方向成分は逆位相(位相差 )となる。このとき,電場の振幅ベクトルの 軸方向成分が,透明物体を通過する前と変わらず だとすれば, 軸方向成分は,符号が反転し となる。これらの成分がベクトルとして合成される結果,偏光方向が 軸となす角度は となり,偏光板 の透過軸と直交し,検出器の出力は となる。この条件を満たす透明物体の最小の厚み を ,, を用いて表すと, [さ] である。
問 1 のとき,偏光板 と偏光板 の角度をともに として, を から まで変化させた際の光検出器の信号強度 の変化を,グラフに描け。その際, を横軸,光検出器の信号強度 を縦軸にとり,信号強度 の最大値,最小値と,それぞれに対応する の値が分かるように図示せよ。
(4) (3)の状況で,図 5 の偏光板 の角度 と偏光板 の角度 をともに に設定し,こんどは厚みが の 倍()の同種の透明物体を設置して,波長 の光を入射した。このとき,光検出器の信号強度は [し] となった。
問 2 (4)の状況で,入射光として波長が の単色の光を用いると,信号強度は となった。このような入射光の波長 は複数考えられる。 として,最小の を, を用いて表せ。導出過程も示せ。
以上で調べた,屈折率が異なる媒質における偏光方向の変化は,結晶の性質や厚みを調べる偏光顕微鏡などでも活用されている。
偏光板 を通った光の振幅ベクトルは、A の透過軸の向きで大きさ です。偏光板 は、そのうち B の透過軸に平行な成分だけを通す。
透過軸のなす角が なので、通る振幅は です。強さは振幅の 2 乗に比例し、[あ] となる。
2 枚を同じ角にすると透過軸が平行になり、振幅はそのまま通ります。[い]は で、2 枚をそろえてどちらへ回しても強さは変わりません。
A と B だけでは透過軸が直交していて、光は通りません。あいだに の偏光板 をはさむと、A から C で振幅が 倍、C から B でさらに 倍になる。
振幅は 倍なので、強さは [う] です。1 枚ふやしただけで、 だった強さが まで戻ります。
偏光板を ずつずらして並べると、A から B まで、同じ角だけ向きを変えることを 回くり返します。1 回ごとに振幅は 倍。
強さは振幅の 2 乗なので、[え] です。 では を 6 回かけて、[お] となる。
の より大きく、枚数をふやすほど強さは増えていきます。
で、 を使うと です。
これを 乗すると、与えられた近似式で として になる。[か]は です。
で は に近づき、強さは に近づきます。細かく刻んで回すほど、光を減らさずに偏光の向きを 回せる。
透明物体の中の光路長は、 成分が [き]、 成分が [く] です。差は [け] になる。
光路差が波長の半分の奇数倍なら、2 つの成分は逆位相で出てきます。[こ]は です。
いちばん薄いのは のときで、 から [さ] です。 成分だけ向きが反転し、偏光の向きは から へ回ります。
の透明物体は、 成分の符号だけを反転させます。A を通った光の成分は で、透明物体を出ると になる。
B の透過軸の向きは なので、通る成分は です。
強さは で、 と で最大値 、 で最小値 をとります。問 1 のグラフは、山から谷へ下りてまた山へ戻る形です。
厚みが になると、光路差も 20 倍になり、 です。
光路差がちょうど波長の整数倍なので、2 つの成分は同じ位相で出てきます。偏光の向きは A を通ったときの のままで、B の透過軸と平行です。[し]は 。
波長 で強さが になるのは、光路差 が の半分の奇数倍のときです。 から となる。
に近いのは が と のときで、 と です。 との差はそれぞれ と 。
小さいほうをとって、問 2 の答えは です。厚い透明物体ほど、わずかな波長の違いで強さが大きく変わります。