次の文章を読んで,[ ]に適した式または数値を,{ }からは適切なものを一つ選びその番号を,それぞれの解答欄に記入せよ。なお,二重の枠はすでに同じ記号の枠で与えられたものと同じものを表す。また,問 1 から問 3 では,指示にしたがって,解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。ただし,円周率を とし,以下に登場する物質や気体の透磁率はすべて とする。
(1) 図 1 のように,長さ ,半径 の円筒に抵抗の無視できる導線を一様に 回巻き付けて作ったソレノイド(以下コイルとよぶ)がある。円筒内部は気体で満たされており,コイルの長さ は と比べて十分長く,このコイルに電流を流すと円筒内部には一様な磁束密度ができる。このコイルに外部電源を接続して電流 を流したときに円筒内部に発生する磁束密度の大きさは [イ] である。
次に,微小時間 の間に電流を から にゆっくりと変化させると,コイルには誘導起電力 [ロ] が発生する( は微小量であり,起電力の符号は電流の上流側の電位が高い場合を正とする)。このことから,このコイルの自己インダクタンスは [ハ] である。また,時間 の間に外部電源がコイルにした仕事は [ニ] である。
図 1 のコイルに電流 が流れているとき,コイルにはエネルギー [ホ] が蓄えられている。コイルを流れる電流が から に変化する際のこのエネルギーの増加は, を満たす十分小さな に対して成立する近似式 (i) を使うと [ニ] となり,外部電源がコイルにした仕事と一致する。つまり,外部電源が行った仕事がコイルのエネルギーとして蓄積される。
(2) 図 2 のように,バルーンアート用の風船のような細長い円筒形状をした伸縮自在の閉じた膜に,伸縮自在で抵抗の無視できる導線を巻き数密度(円筒軸方向の単位長さ当たりの導線の本数)が一様となるように 回巻き付けて作ったソレノイド(以下コイルとよぶ)がある。膜内部の気体の量は調整でき,このとき膜は円筒形状を保ったまま半径や長さが変わる。導線は膜に接着されており,膜の半径や長さが変化するとき導線は膜に接したままむらなく伸び縮みし,巻き数密度は一様に保たれるものとする。また,膜は厚みの無視できる絶縁体でできており,膜と導線は容易に伸縮するものとし,膜の面積,導線の長さおよび形状の変化に要する仕事は十分小さく無視できるものとする。
なお,以下では必要に応じて近似式(i)を使ってを無視し,解答欄には を使わずに解答を記入せよ。
まず,コイルの両端を固定装置で固定して動かないようにし,膜の長さが に保たれるようにした。この状態でコイルに電流 を流し,膜内部の気体の量を調整して,図 2 のようにコイルの半径が となる状態を作った。このとき,コイル内部には一様な磁束密度 [イ] が発生した。この状態から,電流 を一定に保ったまま膜内部の気体の量をゆっくり増加させたところ,コイルの半径は速さ で大きくなり,微小時間 ののちに になった。このとき,コイル一巻きを貫く磁束は の間に [ヘ] だけ増加するので,コイルには誘導起電力 [ト] が発生する(起電力の符号は電流の上流側の電位が高いときを正とする)。また,時間 の間に外部電源がコイルに対して行う仕事は [チ] である。
一方,コイルに蓄えられるエネルギー([ホ])は,コイル半径が大きくなったことにより時間 の間に [リ] だけ増加する。このエネルギーの変化は,外部電源が行った仕事 [チ] と,膜内外の気体の圧力差が膜に対して行った仕事の和に等しい。時間 の間にコイルの体積は [ヌ] だけ増加するので,膜内外の気体の圧力差を 外部の気体の圧力内部の気体の圧力 とすると,膜内外の気体の圧力差が時間 の間に膜に対して行う仕事は を使って [ル] と書ける。以上のことから膜内外の気体の圧力差 を求めることができ, と [イ] で求めたコイル内部の磁束密度 のみを用いて表すと [ヲ] と書ける。
いま,膜には膜内外の気体がもたらす圧力差に加え,電流 が作り出す圧力が働いている。これらの圧力がつり合いの条件を満たすことから,電流 が作り出す圧力は,{ワ: ①コイルを膨らませる方向に働いている,②コイルを収縮させる方向に働いている,③働いていない}。
(3) コイルを図 2 の状態に戻してから,コイルの半径を に固定したうえでコイルの円筒軸方向の長さを自由に変化させられるようにした。コイルの円筒軸方向の長さが の状態から,電流 を一定に保ったまま膜の内部の気体量を変化させたところ,円筒軸方向の長さが速さ でゆっくりと大きくなり,微小時間 ののちに になった。このとき, を満たす十分小さな に対して成り立つ近似式 (ii) を使って の 2 次以上の項を無視すると,微小時間 の間に外部電源がコイルに対して行う仕事は [カ] であることが分かる。このとき問 1 から問 3 に答えよ。
問 1 膜内外の気体の圧力差を 外部の気体の圧力内部の気体の圧力 とするとき, を求めよ。ただし,近似式(ii)を使って の 2 次以上の項を無視し,解答には と [イ] で求めたコイル内部の磁束密度 のみを用いよ。
問 2 電流 がコイルの両端面に作り出す圧力の向きについて,適切なものを以下から選んで番号を解答欄に記入せよ。①コイルが円筒軸方向に伸びようとする圧力が働いている。②コイルが円筒軸方向に縮もうとする圧力が働いている。③圧力は働いていない。
問 3 問 2 の結果を,コイルを形成する各一巻きの導線を流れる電流が相互に及ぼす力に基づいて簡潔に説明せよ。
長さ 、半径 の円筒に 回巻いたコイルです。 が より十分長いので、内部の磁束密度は一様とみなせます。
単位長さあたりの巻数は なので、電流 を流したときの磁束密度は です。これがイの答えです。
この が最後まで主役です。膜が伸び縮みして や が変わっても、この形そのものは変わりません。
円筒の外に磁場はもれないものとして扱います。エネルギーも力も、中の だけで決まります。
コイル全体を貫く磁束は、一巻きぶんの に巻数 を掛けたものです。 になります。
電流を のあいだに から へ変えると、この磁束は だけ増えます。
起電力はこれを で割ったものなので、係数は です。ロの答えです。
電流が増えるとき、コイルは電流を妨げる向きに起電力を出します。上流側の電位が高くなるので、この符号の決め方では正です。
と見比べれば、この係数がそのまま自己インダクタンスです。ハの答えも同じ値になります。
電流を増やすあいだ、電源はこの起電力に逆らって電流を流します。 のあいだの仕事は です。
係数は で、これがニの答えです。
コイルに蓄えられるエネルギーは です。ホの答えです。
近似式 を使うと、このエネルギーの増分がちょうど になります。
つまり電源が行った仕事は、余さずコイルのエネルギーになります。ここまでは形が固定されているので、ほかに行き先がありません。
ここからは伸縮する膜に巻いたコイルです。長さを に固定したまま、中の気体を増やして半径を から へ広げます。
一巻きを貫く磁束は です。 の増分は なので、磁束の増分の係数は です。ヘの答えです。
全体では 倍になるので、起電力は です。トの答えです。
電流を一定に保つには、電源がこの起電力に逆らって働き続けなければなりません。仕事の係数は で、チの答えです。
コイルのエネルギー も、半径が増えれば増えます。増分は です。 を使わない決まりなので、答えるのは係数の で、これがリの答えです。
電源の仕事はその 2 倍です。どちらも の増分から来るのに、エネルギーのほうだけ が付いているからです。
差の分はどこへ行ったのでしょうか。膜が広がるとき、膜の内と外の気体の圧力差が膜に対して仕事をしています。
電源の仕事から溜まった分を引いた残りが、その仕事です。値は負なので、気体は膜に対して負の仕事をしています。
体積は です。 の増分から、体積の増分の係数は になります。ヌの答えです。
内側の気体は膜を押して仕事をし、外側の気体は押し返して仕事を奪います。差し引きは に体積の増分を掛けたもので、係数は です。ルの答えです。
帳尻を合わせると となり、 です。
を使うと になります。ヲの答えです。
が正なので、外のほうが高圧です。それでも膜が静かに保たれているのは、電流が作る圧力が外へ押し返しているからです。ワは①です。
半径を に固定し、長さを から へ伸ばします。巻数 は変わらないので、巻き数密度は薄くなります。
磁束は で、 が分母にあります。伸ばすと磁束は減ります。
近似式 を使うと、減り方は です。
磁束が減るので、起電力は電流を助ける向きになります。電源のする仕事は負で、 がカの答えです。
コイルのエネルギーも が分母なので、伸ばすと減ります。減り方は電源の仕事のちょうど半分です。
帳尻を合わせると、圧力差が膜にした仕事は正になります。体積の増分は なので、 です。
解くと で、これが問 1 の答えです。大きさは半径のときと同じで、符号だけが逆になりました。
今度は内側のほうが高圧です。気体が両端の面を外へ押しているのに長さが保たれているのは、電流が作る圧力が内へ引いているからです。問 2 は②です。
コイルを一巻きずつ見ると、どの巻きも同じ向きに電流が流れています。
平行で同じ向きの電流は引き合います。だから隣り合う巻きどうしが引き寄せ合い、コイル全体は円筒軸方向に縮もうとします。これが問 3 の答えです。
半径のほうは逆でした。一巻きの輪の中では、電流のどの部分も向かい側の部分から外向きの力を受け、輪を広げようとします。
大きさはどちらも です。磁束線に沿う向きには縮め、垂直な向きには広げる、とまとめて覚えられます。