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力の合成と分解(平行四辺形、成分、斜面のつり合い)

力は大きさと向きの両方を持つ量です。 つの力を足すときは、数値を足すだけでは足りない。

同じ点に働く つの力は、 つの力で置き換えられます。置き換えたものを合力という。

逆に、 つの力を つに分けることもできる。こちらを分解という。

同じ直線上に働く場合

向きがそろっていれば、大きさをそのまま足すだけです。

向きが逆なら、大きさの差をとって大きいほうの向きにする。正負の符号を決めてから足せば、どちらも同じ計算で済む。

右向きを正、左向きを負にとれば、 の和は になる。符号がそのまま向きを表す。

平行四辺形の法則

向きが違う場合は、 つの力を隣り合う 辺とする平行四辺形を描きます。その対角線が合力になる。

矢印を継ぎ足す描き方でも同じ結果が出る。 本目の矢先に 本目の始点を置き、最初の始点から最後の矢先へ引いた矢印が合力。

平行四辺形の対角線と、継ぎ足した矢印は一致する。どちらで描いても構造は同じです。

合力の大きさを式で出す

力のなす角を とすると、合力の大きさは余弦定理から求まります。

のとき で、根号の中が になる。単純な足し算に戻ります。

なら で、根号の中は 。差の絶対値になる。

例:直角に働く 2 力

が直角に働いています。 なので第 項が消える。

三平方の定理と同じ形です。直角の場合だけ、この簡単な形になる。

例:60 度で働く 2 力

どちらも で、なす角が 度の場合を計算します。 を代入する。

単純に足した より小さくなります。角度が開くほど、合力は小さくなっていく。

成分に分けて足すほうが確実

力が つ以上あると、平行四辺形を重ねる作業が面倒になる。座標軸を決めて成分ごとに足すほうが早い。

大きさ 軸との角が の力は、次の 成分に分かれる。

すべての力について 成分どうし、 成分どうしを足します。最後に三平方の定理で大きさへ戻す。

例:成分で合成する

軸方向に 軸方向に が働いています。

向きは から求まる。 はおよそ 度です。

力が何本あっても手順は変わらない。成分に落とし、足し、戻す。

分解は合成の逆

つの力を、指定した 方向の力に置き換える操作が分解です。分けた つを合成すると、もとの力に戻る。

分ける向きは自由に選べる。同じ力でも、選んだ 方向によって成分の値は変わる。

分解した つの力は、もとの力の代わりであって、新しく加わった力ではありません。図に書き込むときは、もとの力を消すか、分解した 本を破線にして区別する。両方を実線で残すと、力を二重に数えることになる。

同じ働きをする別の表し方。合成しても分解しても、物体に及ぼす効果は変わらない。

例:斜面上の重力を分ける

傾き 度の斜面に、 の物体を置きます。重力は で真下を向く。

斜面に沿った向きと、斜面に垂直な向きへ分解する。

斜面方向の成分が、物体を滑らせる力です。垂直方向の成分は垂直抗力と打ち消し合う。

角度が急になるほど が大きくなり、滑らせる力が増える。同時に が小さくなり、垂直抗力は減る。

つり合いは合力が 0

物体に働く力の合計が のとき、力がつり合っているといいます。

成分で書けば、軸ごとに になるという条件になる。

つり合っていても静止しているとは限りません。等速直線運動でも合力は になる。

つり合いと作用反作用は別

どちらも「大きさが等しく向きが逆の 力」に見えます。違いは、力が働く相手のほう。

つり合い

同じ つの物体に働く力どうしが打ち消し合っている。力の数は つとは限らない

作用反作用

つの物体が互いに及ぼし合う力。別々の物体に働くので、足し算の対象にならない

机の上の本に働く重力と垂直抗力は、つり合いのほうです。同じ本に働いているので、合計して になる。

3 力のつり合いは三角形が閉じる

力がつり合うとき、 本の矢印を継ぎ足していくと出発点に戻る。三角形が閉じる形になる。

言いかえると、どの 力の合力も、残り 力と大きさが等しく向きが逆です。この見方を使うと、図から比で解ける場合がある。

糸で吊るす

重力・左の糸の張力・右の糸の張力の 力。糸の角度が決まれば張力も決まる

斜面で静止する

重力・垂直抗力・静止摩擦力の 力。斜面方向と垂直方向に分けると計算が短い

壁に立てかけた棒

重力・床からの力・壁からの力の 力。棒には回転もあるので、力のつり合いだけでは足りない

例:2 本の糸で吊るす

の物体を、鉛直から左右に 度ずつ開いた 本の糸で吊るします。重力は です。

左右対称なので、水平方向の成分は自動的に打ち消し合う。鉛直方向だけを考えればよい。

本あたり で、 本の合計は 。重力より大きくなります。

角度を開くほど張力は増える。真横に近づけると へ向かい、張力はいくらでも大きくなる。

例:斜面上で静止する物体

さきほどの斜面で、物体が動かずに止まっているとする。

斜面方向のつり合いから、静止摩擦力は です。滑らせようとする成分と、ちょうど同じ大きさになる。

垂直方向のつり合いから、垂直抗力は になります。重力の全体 より小さい。

斜面では垂直抗力が重力より小さくなる。この点が、水平面の場合と違うところです。

軸のとり方で計算量が変わる

軸をどちらへ向けても答えは同じです。ただし手間は変わる。

斜面の問題で水平と鉛直を軸にとると、垂直抗力も摩擦力も両方の軸に成分を持ちます。式が長くなる。

斜面に沿った向きを軸にとれば、垂直抗力は片方の軸だけに乗る。未知数が減り、式も短くなります。

未知の力が多い向きを軸にそろえる。これが軸選びの基本になる。

大きさが等しい つの力が、 度の角をなして同じ点に働いています。合力の大きさはどうなりますか。

  • 力の 倍になる
  • 力の 倍になる
  • 力と同じ大きさになる
  • になる
__RESULT__

を代入すると、根号の中は になります。したがって合力の大きさは で、 力ぶんと同じです。 度ずつ開いた同じ大きさの 力がつり合うのも、同じ計算から出てきます。

向きの違う $2$ 力は、平行四辺形の対角線が合力になります。大きさは $\sqrt{F_1^2 + F_2^2 + 2F_1F_2\cos\theta}$ で、直角なら三平方の定理の形。$3$ 力以上は成分に分けて足すほうが早く、$x$ と $y$ をそれぞれ合計して最後に戻します。斜面では重力が $mg\sin\theta$ と $mg\cos\theta$ に分かれ、垂直抗力は $mg$ より小さくなる。つり合う $3$ 力は継ぎ足すと三角形が閉じます。$30$ 度に開いた $2$ 本の糸で $10\ \mathrm{kg}$ を吊ると張力は $1$ 本 $57\ \mathrm{N}$ で、開くほど大きくなる。軸を斜面方向にとると式が短く済む理由まで。