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万有引力の法則から地球の質量と第一宇宙速度を求める

質量を持つ つの物体は、互いに引き合います。その力の大きさは、次の式で表される。

は つの物体の中心を結ぶ距離、 は万有引力定数です。地上の物体どうしでも、地球と月のあいだでも、同じ式が成り立つ。

ニュートンがこの法則を立てたとき、リンゴを落とす力と月を回す力が同じものだと主張したことになる。

質量の積に比例し、距離の 2 乗に反比例する

どちらか一方の質量を 倍にすると、力も 倍になります。両方を 倍にすれば 倍になる。

距離のほうは効き方が強い。 倍離すと力は 分の 、 倍離すと 分の に落ちます。

万有引力定数はきわめて小さい

の値は次のように定まっている。

指数が という小ささです。日常の物体どうしが引き合っていることに気づかないのは、この定数が小さいから。

物理の基本定数のなかでも、いちばん精度が低い部類に入る。ほかの力に比べて重力が桁違いに弱いので、測るのが難しい。

例:身のまわりの物体どうしの引力

の物体を つ、 離して置きます。

円玉にかかる重力の、およそ 億分の です。感じられないのも無理はない。

それでも相手が地球のように巨大なら、話は変わります。質量が の桁になると、小さな を打ち消して余りある。

距離は中心から測る

は表面からの距離ではなく、中心どうしの距離です。地上の物体では、地球の半径がそのまま になる。

球対称に質量が分布していれば、球全体の引力は中心に全質量が集まった場合と同じになる。ニュートンが証明したこの性質があるので、地球を 点として扱える。

地球の半径はおよそ で、高さ の建物は をほとんど変えません。相対的な変化が 万分の 程度にとどまるため、地上では重力を一定として扱える。

もとの量に対する変化の割合。絶対的な差ではなく比で見るので、大きな量の上の小さな差は無視できる。

地表の重力から g を導く

質量 の物体が地表で受ける万有引力は、 を地球の質量、 を地球の半径として次のように書けます。

両辺の を消すと、 の正体が出る。

は地球の質量と半径だけで決まります。落ちる物体の質量はどこにも入っていない。

例:地球の質量を出す

地球の は精密に測られており、およそ です。

から半径を逆算する。

実際の地球の平均半径とよく合う。 を で割れば質量が出る。

測定値の と一致します。地球を秤に載せずに質量がわかる。

高いところでは弱くなる

高度 の地点では、中心からの距離が になります。

分母が大きくなるぶん、 は小さくなる。ただし が もあるので、数キロ登った程度ではほとんど変わりません。

例:高度 400 km での重力

国際宇宙ステーションの高度で計算する。

地表の パーセントほどが残っています。重力はほとんど減っていない。

宇宙飛行士が浮いて見えるのは、重力が消えたからではない。ステーションごと落下し続けているため。

万有引力と重力は厳密には別の量

地球は自転しているので、地表の物体には遠心力も働きます。私たちが重力と呼んでいるのは、万有引力と遠心力を合わせたもの。

万有引力

地球の質量が引く力。地球の中心を向き、緯度によらない

重力

万有引力と自転による遠心力の合成。赤道でわずかに弱くなり、向きも厳密には中心からずれる

赤道での がおよそ 、極ではおよそ になるのは、この効果と地球の形の両方によります。

ニュートンの月の検証

同じ法則が地上と天体で成り立つかどうか、ニュートンは月で確かめました。地球から月までの距離は、地球半径のおよそ 倍になる。

逆 乗が正しければ、月の位置での加速度は地表の 分の になるはずです。これを実際の公転から出た値と比べる。

例:月の加速度を計算する

月の平均距離は 、公転周期は 日です。周期を秒に直すと になる。

円運動の加速度の式に入れる。

逆 乗から予想した値も出しておく。

パーセント以内で一致します。リンゴを落とす力と月を回す力が同じものだという結論が、ここで数値として確かめられる。

キャヴェンディッシュの実験

の値そのものは、ニュートンの時代には測れませんでした。実験室の物体どうしの引力があまりに弱いため。

はじめて測ったのはキャヴェンディッシュで、 年のことでした。『プリンキピア』の出版から 年が経っている。

ねじれ秤を使い、鉛の球のあいだに働く力を測る方法です。地球の密度を求めるための実験でした。

第一宇宙速度

地表すれすれを円軌道で回るのに必要な速さを、第一宇宙速度といいます。万有引力が向心力になる条件から出る。

両辺の が消えます。人工衛星の質量によらず、同じ速さになる。

例:第一宇宙速度を出す

秒速およそ です。この速さに達すれば、落ち続けながら地球を回り続ける。

近い軌道

速く回る必要がある。国際宇宙ステーションはおよそ 90 分で 1 周する

遠い軌道

ゆっくり回ればよい。静止衛星は 1 日で 1 周し、地上から止まって見える

月

さらに遠いので 27 日あまりかかる。同じ法則がそのまま効いている

万有引力による位置エネルギー

地表付近では が使えますが、遠くまで離れると が一定でなくなります。より一般の形が要る。

無限に遠い点を基準にとるので、値はつねに負になります。引き離すのに仕事が要ることの現れ。

が大きいほど は に近づく。この差が、脱出に必要なエネルギーを決めている。

地球の半径を とします。地表から高さ の地点で、重力加速度はどうなりますか。

  • 半分になる
  • 分の になる
  • 変わらない
  • 分の になる
__RESULT__

中心からの距離が になるので、逆 乗から 分の です。高さではなく中心からの距離で考えます。表面からの距離で 倍と数えると誤ります。

$F = G\dfrac{m_1 m_2}{r^2}$ の $r$ は中心どうしの距離なので、地表の物体では地球の半径がそのまま入ります。$mg = G\dfrac{Mm}{R^2}$ から $m$ が消えて $g = \dfrac{GM}{R^2}$ になり、$g$ は地球の質量と半径だけで決まる。逆に $GM$ と $g$ から半径を、$G$ で割って質量 $5.97 \times 10^{24}\ \mathrm{kg}$ を出せます。月までの距離は地球半径の $60$ 倍で、加速度は $3600$ 分の $1$。公転から出した値と逆 $2$ 乗の予想が $1$ パーセント以内で合います。第一宇宙速度が秒速 $7.9\ \mathrm{km}$ になる理由まで。