ハウスドルフ空間では、収束する点列の極限が一意に定まります。つまり、ある点列が2つの異なる点に収束することはありません。この性質はハウスドルフ空間の重要な特徴の一つです。
ハウスドルフ空間の定義
位相空間 がハウスドルフ空間であるとは、異なる任意の2点 に対して、それぞれを含む開集合 で となるものが存在することをいいます。
ハウスドルフ空間は分離公理の一つである T2 空間とも呼ばれます。より弱い分離性として T0 空間や T1 空間があり、より強い分離性として正則空間や正規空間があります。
ユークリッド空間 はハウスドルフ空間です。一方、密着位相を持つ空間(開集合が空集合と全体のみ)は2点以上あればハウスドルフ空間ではありません。
点列の極限の一意性
点列 が点 に収束するとは、 の任意の開近傍 に対して、ある番号 以降のすべての点 が に含まれることをいいます。
ハウスドルフ空間において、点列 が と の両方に収束したと仮定します。 ならば、ハウスドルフ性により交わらない開集合 で となるものが存在します。
収束の定義から、ある 以降はすべての が に含まれ、ある 以降はすべての が に含まれます。 とすると、 は と の両方に含まれることになり、 に矛盾します。
点列が と に収束すると仮定
ハウスドルフ性により となる開集合が存在
十分大きな で は にも にも含まれる
矛盾が生じるため
したがって、ハウスドルフ空間では点列の極限は一意に定まります。
非ハウスドルフ空間の例
ハウスドルフでない空間では、点列が複数の点に収束することがあります。
集合 に密着位相 を入れた空間を考えます。この空間で定数列 を考えると、 の任意の開近傍は のみであり、すべての が に含まれるため、点列は に収束します。
同様に、 の任意の開近傍も のみなので、同じ点列が にも収束します。このように、非ハウスドルフ空間では極限の一意性が保証されません。