ブラックホールの「事象の地平面」とシュワルツシルト半径

戻ってこなくなる速さ

物を真上へ投げると、ふつうは戻ってくる。ある速さより速く投げると、天体の引力を振りきって戻ってこない。この速さを脱出速度と呼びます。

天体の質量を 、半径を とすると、脱出速度は 。地球の表面では秒速 km、太陽の表面では秒速 km になる。

質量を変えずに半径を小さくしていくと、脱出速度は大きくなり、いつかは に届く。そうなると、光でも出られません。

シュワルツシルト半径

を について解くと 。これをシュワルツシルト半径と呼ぶ。

ニュートン力学から求めたこの値は、一般相対性理論のシュワルツシルト解から求めた半径と偶然一致します。太陽の質量なら km ほど、地球の質量なら mm ほど。

この半径の球面を、事象の地平面という。面の上に物があるわけではなく、その内側の出来事が外へ届かなくなる境目です。

地平面に近づくと光円錐が倒れる

横軸を中心からの距離にとった時空図に、各地点の光円錐を並べる。遠くでは円錐は上を向いていて、外へも内へも進めます。

地平面に近づくほど、光円錐は中心のほうへ傾く。物が進める向きは円錐の内側に限られるため、進める向きも中心側へ寄っていく。

地平面の上では、外向きの光でさえ同じ距離にとどまる。その内側では、円錐の中のどの向きも中心へ向かい、外へ戻る向きがありません。

落ちる人は地平面を越えても気づかない

地平面には目印も壁もなく、落ちる人は何かにぶつかることもなく通り過ぎる。自由に落ちている人にとって、そこは重力の消えた箱の中と変わりません。

感じるのは潮汐力のほうで、足と頭で引かれ方が違う。太陽の 倍の質量のブラックホールでは、地平面での差が身長 m あたり m/s² にもなり、体は引き伸ばされる。

潮汐力は、ブラックホールの質量が大きいほど地平面で弱くなる。銀河系の中心にある太陽の約 万倍のブラックホールでは m/s² ほどで、越えても体には何も感じません。

遠くから見ると地平面の手前で止まる

遠くで見ている人から見ると、落ちる人の時計は地平面に近づくほど遅く進む。落ちる人の出す光は、どんどん赤へ寄って暗くなります。

遠くの人の時計では、落ちる人が地平面にたどり着くまでに無限の時間がかかる。落ちる人の姿は地平面の手前で止まり、薄れて見えなくなります。

落ちる人の時計では、地平面を越えるまでの時間は有限。 つの記述は同じ時空を つの立場から表したもので、どちらの時計の読みも、その立場では正しい。

2 つの原理
時間と長さ
ローレンツ変換
時空図
力学
一般相対性理論