シャピロ遅延(太陽の重力で遅れる電波の往復時間)

太陽のそばを通して電波を往復させる

地球から金星へ電波を送り、跳ね返って戻るまでの時間を測ります。地球と金星が太陽をはさんでほぼ一直線に並ぶとき、電波は太陽の縁のすぐそばを通る。

このとき往復にかかる時間は、往復の距離を光の速さで割った値より長くなる。 年にシャピロが一般相対性理論で計算し、その差が測れる大きさだと示しました。この遅れをシャピロ遅延と呼びます。

一般相対論の古典的な検証とされてきたのは、水星の近日点の移動、光の曲がり、重力による赤方偏移の つ。 つ目の検証と呼ばれるシャピロ遅延では、電波が届くまでの時間そのものを測る。

進みが遅くなり、道のりも伸びる

重力の強いところでは、遠くから見た光の進みが遅くなる。その場所の時計と物差しで測れば、光の速さは のままです。

変わっているのは時計と距離のほうで、太陽の近くでは時計がゆっくり進み、道のりも空間が曲がっていない場合より長い。遠くから見ると、この つが同じ大きさずつ光を遅らせます。

往復の遅れは で計算できる。 と は太陽から地球と金星までの距離、 は電波の道が太陽の中心にいちばん近づいたときの距離で、 は自然対数です。

が小さいほど遅れは大きく、縁をかすめるときがいちばん大きい。 は の中にあるため、 を 倍にしても遅れは 割ほどしか減らない。

縁をかすめると往復で 230 マイクロ秒

太陽の m³/s² と m/s から、 は マイクロ秒。

m、 m とし、縁をかすめるときの として太陽の半径 m を入れると、 の中が 万、 の値が になる。往復の遅れは で マイクロ秒ほどです。

光の進む距離に直すと km ほどで、往復およそ 億 km の道のりに対する差になります。

年代の終わりから金星と水星で電波を跳ね返らせる測定が続き、 年ごろには一般相対論の値と パーセントの範囲で合うようになった。 年には火星に降りたバイキング着陸機の送受信機を使い、 分の まで一致を確かめています。

波面の遅れが光を曲げる

光を波として見ると、太陽に近い側ほど進みが遅いため、波面は近い側で遅れる。

進む向きは波面に垂直なので、波面が傾けば向きも傾き、光は進みの遅い太陽の側へ曲がります。

日食のとき太陽の縁をかすめる星の光は 秒角曲がる。この曲がりも往復 マイクロ秒の遅れも、太陽の近くで光の進みが遅くなることから計算できます。

遅れは進みの遅さを道に沿って足し合わせた量で、曲がりは道の両側での遅さの違いで決まる。

カッシーニの測定で 10 万分の 2 まで

年、土星へ向かうカッシーニ探査機が太陽の向こう側を通るあいだ、地球と探査機を往復する電波の周波数を測った。電波の道が日ごとに太陽へ近づき、また離れていくため、遅れの変わり方が周波数のずれになって現れます。

一般相対論の予想とは、 万分の ほどの精度で一致しました。ほかにも重力の理論はいくつも提案されていて、この精度で合わないものは候補から外れる。

規則正しい間隔で電波を出す中性子星をパルサーと呼ぶ。別の星と組になって回るパルサーでも、同じ遅れが測られています。

パルサーが相手の星の向こう側へ回ると、電波は相手の星のそばを通るあいだだけ遅れる。その遅れ方から、相手の星の質量が決まります。

2 つの原理
時間と長さ
ローレンツ変換
時空図
力学
一般相対性理論