質量があると、まわりの時空が曲がる。その質量が自転していると、まわりの時空は回転の向きに引きずられます。
年にレンズとティリングがアインシュタイン方程式から導いた効果で、慣性系の引きずり、またはレンズ・ティリング効果と呼ばれる。
外から力を受けずに回るこま(ジャイロ)の軸は、ふつうは遠くの星に対して向きを変えない。回る質量のそばでは、回っていないことを決める基準そのものが引きずられるため、この軸の向きがゆっくりずれていく。
光さえ外へ出られなくなる境目を、ブラックホールの地平面と呼びます。回るブラックホールの時空は 年にカーが見つけた解(カー解)で表され、そこでは地平面の外側にもう つの境目がある。
その内側では、どれだけロケットを噴射しても、遠くの星に対して止まっていられない。引きずりが強く、回転と同じ向きに回るほかないため。この領域をエルゴ領域といいます。
エルゴ領域は地平面の外側にあるので、入って回転の向きに運ばれたあと、また外へ出てくることはできる。
自転する地球のまわりでも、同じ引きずりが起きている。
北極と南極の上を通る高さ km の軌道(極軌道)を回る衛星にジャイロを積むと、軸の向きが 年で ミリ秒角ずれます。 ミリ秒角は 度の 万分の なので、 ミリ秒角は 度のおよそ 万分の にあたる。
同じジャイロは、地球の質量で時空が曲がっていることによっても向きを変える。この向きの変化は測地線歳差と呼ばれ、 年に ミリ秒角と、引きずりの 倍ほど大きい。
つは軸の倒れる向きが直交しているため、分けて測れます。
年、ジャイロを 個積んだ衛星 Gravity Probe B が極軌道に打ち上げられた。ジャイロは直径 cm の石英の球で、当時つくれるかぎり真球に近づけてあります。
年に発表された結果は、測地線歳差が 、引きずりが ミリ秒角。予想の と は、どちらも誤差の幅に入っている。
地上から LAGEOS 衛星へレーザーを送り、跳ね返ってくるまでの時間で軌道を追う方法でも、引きずりで軌道面が回る量が確かめられています。
エルゴ領域の中には、遠くから測ったエネルギーが負になる軌道があります。
そこへ物を落として つに割り、片方を負のエネルギーの軌道へ入れて、もう片方を外へ逃がす。エネルギーは つの合計で保存されるため、外へ出たほうは入れたときより大きなエネルギーを持つ。 年にペンローズが示したもので、ペンローズ過程という名前がついています。
ブラックホールを貫く磁場を通して回転のエネルギーを運び出す仕組みも 年に提案され、ブランドフォード・ズナイエク過程と呼ばれる。銀河の中心から伸びるジェットの源だと考えられています。
どちらの場合も、とり出したエネルギーのぶんだけブラックホールの回転は遅くなる。