速さ で走る電車の中から、進む向きへ速さ でボールを投げます。地面に立って測ると、ボールの速さは 。
速さをそのまま足せるのは、電車で測る 秒と地面で測る 秒が同じ長さで、 m の物差しもどちらで使っても m だと考えているため。ニュートン力学は、時間と長さがどの立場から測っても同じ値になるものとして組み立てられています。
同じ電車から、こんどは前へ光を出す。ボールと同じ足し算なら、地面で測る光の速さは になるはずです。
年の CERN の実験では、光の速さの パーセント以上で飛ぶ中性パイ中間子を使い、壊れるときに出る光(ガンマ線)の速さを測りました。足し算なら 近くになるところ、測った値は と区別できなかった。
光源や測る人がどう動いていても、真空中の光の速さは になる。これを光速度不変の原理といいます。
年からは、 m を「光が真空中を 秒に進む距離」と定めている。 m/s は、測って求める値ではなく定義から決まる値。
等速で進む 2 つの実験室 A と B があります。窓を閉じていれば、中でどんな実験をしても、動いているほうが自分なのか相手なのかは決められない。
なめらかに進む船の中でも、水滴は止まっているときと同じくまっすぐ下へ落ち、魚は鉢の中をどの向きへも変わらず泳ぐ。ガリレオが 年の『天文対話』で挙げた例です。
上の段は A から見た図で、B が右へ進んでいく。下の段は B から見た図で、こんどは A が左へ進む。2 つの描き方に、正しいほうと誤ったほうの区別はありません。
等速で動く立場はどれも対等で、物理の法則はどの立場でも同じ形になる。この主張を相対性原理と呼びます。
光の速さが立場ごとに違うなら、窓を閉じたままでも、それを測って自分の動きを知ることができる。 年のマイケルソンとモーリーの実験は、この方法で地球の動きを測ろうとして、向きによる光の速さの差を見つけられませんでした。
速さは、進んだ距離 をかかった時間 で割った値。光では、この割り算の答えがどの立場でも同じ になります。
車内で、後ろの壁から前の壁へ光を送る。車内の人が測ると、光の進む距離は車両の長さ 、かかる時間は 。
地面から見ると、光が進んでいるあいだに前の壁も前へ動いています。光の進む距離は より長く、速さが同じ なら、かかる時間も より長くなる。
光を送ってから届くまでの時間は、車内と地面とで違う値になりました。時間が立場ごとに違えば、両端の位置を同じ時刻に読んで決める長さも、立場ごとに違ってくる。
特殊相対性理論の出発点は、相対性原理と光速度不変の原理の 2 つだけで、新しい力や粒子は持ちこみません。同時の相対性、時間の遅れ、長さの収縮は、どれもこの 2 つから導ける。
たとえば車両のまん中で光を出すと、光は車内の人から見て前後の壁へ同時に届き、地面の人から見ると後ろの壁へ先に届く。どちらの立場でも光の速さを とすれば、そうなるほかありません。
身のまわりの速さでは、どの効果もふつうの時計や物差しではわからないほど小さい。電車とボールの速さを足し算で求めて困らないのは、そのためです。