磁力を相対性理論で説明する:導線の電荷と長さの収縮

止まった電荷は導線から力を受けない

電流の流れている導線のそばに、負の電荷を つ置く。止まっているあいだ、電荷は導線から力を受けません。導線の中の正と負の電気量が等しく、導線全体としては電気を帯びていないためです。

同じ電荷を、導線の中の電子と同じ向きに同じ速さ で動かすと、電荷は導線へ引き寄せられる。動く電荷だけが受けるこの力が、磁場から受けるローレンツ力です。

電荷といっしょに走る人から見ると、電荷は止まっている。止まった電荷に磁場の力ははたらかないため、この立場では、導線へ引かれる理由を別に探すことになります。

導線の中の正と負の電荷

導線の中では、動かない正の電荷(金属のイオン)が等間隔に並び、そのあいだを負の電荷(自由電子)が流れている。電流は、この電子の流れです。

導線の立場で数えると、 つの列の間隔は同じ。単位の長さあたりの電気量を と とすると、足して になります。

流れている電子の列の間隔は、長さの収縮をすでに受けた値。電子が止まって見える立場では間隔が 倍に広がり、単位の長さあたりの電気量は になる。

電荷と走る立場では導線が帯電する

電荷と同じ速さで走る立場へ移る。この立場では電子が止まり、正のイオンが速さ で後ろへ流れます。

動きだしたイオンの列は長さの収縮で詰まり、電気量は 。止まった電子の列は広がって になる。

足すと で、 にならない。この立場から見た導線は、正に帯電しています。

その立場では静電気力で引かれる

正に帯電した導線のそばに、負の電荷が止まっている。電荷を導線へ引くのは、正と負が引き合う静電気力です。

導線から距離 のところの電場は で、電荷 が受ける力の大きさは になる。

導線の立場では、電流 がつくる磁場 から、動く電荷が の力を受けます。 を使うと、静電気力はこの磁力のちょうど 倍。

横向きの力は、物が止まって見える立場で 倍に測られる。この違いも含めて、 つの立場の力は一致します。

電場と磁場は立場で移り変わる

導線の立場では磁力、電荷の立場では静電気力。呼び方は違っても、電荷が導線へ引かれるという つの出来事を、 つの立場で書いたものです。

導線の中の電子の速さは秒速 mm ほどで、 は ほどしかない。それでも磁力を手で感じられるのは、導線の中の電気量がとても大きく、正と負のわずかなずれでも力として残るため。

電場と磁場は別々のものではなく、立場を変えると互いに移り変わる。マクスウェルの方程式は、この移り変わりを含めて、ローレンツ変換で形を変えません。

2 つの原理
時間と長さ
ローレンツ変換
時空図
力学
一般相対性理論