マイケルソン・モーリーの実験:干渉計でエーテルの流れを探す

波を伝えるものとエーテル

音は、空気の振動が伝わる波です。空気を抜いたガラス容器の中でベルを鳴らしても、音は外まで届かない。

水面の波も、水がなければ伝わりません。波を伝えるものを媒質といい、19 世紀の物理学は、どんな波にも媒質があると考えていた。

光は、真空の宇宙を通って太陽から届きます。そこで真空にも光の媒質が満ちていると考えて、それをエーテルと名づけた。

光は横波で、とても速く伝わる。当時の力学で考えると、エーテルは鋼よりはるかに硬い固体のようでありながら、惑星の動きをまったく妨げないものでなければなりませんでした。

流れに沿う往復と横切る往復

エーテルがあるなら、地球はその中を秒速 km で公転しています。地球の上から見ると、エーテルは逆向きに秒速 km で流れている。

この流れの中で、同じ距離 を往復する光を 2 本考えます。流れの速さを とし、 とおく。

流れに沿って往復する光は、行きが 、帰りが の速さになります。往復の時間 は次のとおり。

遅い行きで余分にかかる時間のほうが、速い帰りで縮む時間より大きい。そのため は、流れがないときの より長くなります。

流れを横切る光は、流れの を打ち消すように少し上流へ向けて進む。三平方の定理から横切る向きの速さは で、往復の時間は です。

は より大きいため は より短く、横切った光のほうが先に戻る。

時間の差を干渉縞のずれに変える

が小さいときは 、 と近似できます。これを使うと、2 本の光が進む道のりの差 は、およそ になる。

地球の公転では 、。腕の長さが m なら道のりの差は m で、時間にすると 秒ほどしかありません。

マイケルソンとモーリーは、時計のかわりに光の波を物差しにしました。1 本の光を半透明の鏡で 2 つに分け、直角に置いた 2 本の腕を往復させてから、もう一度重ねる。

重ねた光には明暗の縞ができ、2 本の道のりの差が波長 1 つぶん変わるごとに、縞は 1 本ぶん横へずれる。

腕は鏡で何度も折り返して、長さを m にしてありました。道のりの差は m で、黄色い光の波長( m ほど)のおよそ 分の 。

台を回しても縞は動かなかった

装置をのせた石の台は水銀に浮かべてあり、軽く押すとゆっくり回りつづけます。 度回すと、沿う腕と横切る腕がいれかわる。

度回すと道のりの差の向きが反対になるため、エーテルがあるなら、縞は波長の 分の の 倍、 本ぶん動くはずでした。

年の測定で読みとれたずれは、 本より小さかった。予想の 分の に届かず、論文には 分の よりも小さいだろうと書かれています。

同じ実験はその後も、季節や場所を変えてくり返されました。いまでは光共振器を使った実験で、向きによる光の速さの違いは割合にして より小さいと確かめられている。

光の速さはどの向きに測っても同じ

エーテルが地球に引きずられて一緒に動いているなら、地上でエーテルの流れは見えない。しかしそれでは、地球の公転に合わせて星の見える向きが 年周期でずれる光行差を説明できません。

フィッツジェラルド( 年)とローレンツ( 年)は、エーテルの中を進む物体が、進む向きに 倍に縮むと考えました。沿う腕の長さ を に置きかえると、 は とちょうど等しくなる。

ただ、なぜ縮むのかについては、物体をつくる分子どうしの力がエーテルの中で変わるのかもしれない、という仮説にとどまりました。

アインシュタインは 年に、光の速さがどの立場でも同じであることを出発点の原理とし、説明すべき結果として扱うのをやめた。縮みはこの原理から導ける結果の 1 つになり、エーテルを置く必要はなくなりました。

2 つの原理
時間と長さ
ローレンツ変換
時空図
力学
一般相対性理論