化学平衡

粒子をやり取りする

グランドカノニカル分布では、周りと粒子をやり取りする系を扱い、そこで化学ポテンシャル \mu が出てきました。エネルギーに温度が対応するように、粒子数には \mu が対応します。

図の 2 つの箱がやり取りをしています。左から右へ 1 個移すと、左の自由エネルギーは \mu_1 だけ下がり、右は \mu_2 だけ上がります。

移して全体が下がるなら、粒子は移ります。つまり \mu_1 > \mu_2 のあいだ、粒子は左から右へ流れ続けます。

等しくなったところで止まる

粒子が減れば \mu は下がり、増えれば上がります。だから流れているうちに、2 つの \mu は近づいていきます。

図がその近づき方です。等しくなったところで、どちらへ動かしても全体は下がらなくなります。そこが平衡です。

温度が等しくなったところで熱の流れが止まったのと、まったく同じ形です。熱には温度、粒子には化学ポテンシャル。やり取りする量ごとに、釣り合う相手が 1 つずつ決まっています。

反応も、同じやり取り

化学反応は、粒子の種類が入れ替わるやり取りです。A と B から C ができる反応なら、A と B が 1 個ずつ減って C が 1 個増えます。

そのときの自由エネルギーの変わりぶんは \mu_C - \mu_A - \mu_B です。これが負なら反応は右へ進み、正なら左へ戻ります。止まるのは 0 になったときです。

まとめて書けば \sum \nu_i \mu_i = 0 です。\nu_i は反応式の係数で、なくなる側が負、できる側が正になります。図がその運びです。ここまでに新しく置いた仮定は 1 つもありません。

質量作用の法則

理想気体では、化学ポテンシャルは \mu_i = kT\log n_i + \mu_i^0 の形になります。濃度が対数で効くところが肝心です。

これを \sum \nu_i \mu_i = 0 に入れて対数を外すと、\dfrac{n_C}{n_A n_B} = K(T) になります。濃度の積と商が、温度だけで決まる 1 つの数に等しい。質量作用の法則です。

図は濃度が平衡へ寄っていくところです。どこから始めても、この比のところで止まります。化学で習う法則が、化学ポテンシャルの釣り合い 1 つから出てきました。

温度で向きが変わる

K の中身は e^{-\Delta E/kT} です。\Delta E は反応で変わるエネルギーで、これが平衡の位置を決めます。

図が K の温度による変わり方です。熱を吸う反応なら、温度を上げると K が大きくなり、できる側へ寄ります。熱を出す反応なら逆で、温度を上げるともとの側へ戻ります。

ルシャトリエの原理として知られているものが、ここでは e^{-\Delta E/kT} という 1 つの因子から出ています。カノニカル分布で出てきたボルツマン因子が、化学反応の向きまで決めていた、ということです。

確率と多数
ミクロカノニカル分布
カノニカル分布
応用
相転移
量子統計
時間とゆらぎ