エネルギー等分配則

2 乗で効く自由度

前の記事で、速度の成分 1 つあたりの平均が \dfrac{1}{2}kT になりました。なぜこの形が出たのかを見ておくと、当てはまる先がぐんと広がります。

鍵は、エネルギーが \dfrac{1}{2}mv_x^2 という形をしていたことです。変数の 2 乗に比例している。この形の変数を、ここでは 2 乗で効く自由度と呼ぶことにします。

図はばねにつないだおもりです。位置エネルギーが \dfrac{1}{2}aq^2 で、これも 2 乗の形です。運動エネルギーのほうも \dfrac{1}{2}mv^2 ですから、この系は 2 乗で効く自由度を 2 つ持っています。

どの井戸でも、平均は同じ

2 乗で効く自由度の平均エネルギーを計算すると、係数によらず \dfrac{1}{2}kT になります。これを等分配則といいます。

図の 2 枚は、深さの違う 2 つの井戸です。左は硬いばね、右は柔らかいばねだと思ってください。柔らかいほうは大きく広がりますが、そのぶん同じ変位でのエネルギーが小さい。結果として、塗った面積で表した平均エネルギーは、どちらも同じになります。

そうなる理由は積分の形にあります。係数は変数を測り直せば吸収できてしまい、平均に残らないためです。ばねが硬かろうと柔らかろうと、分子が重かろうと軽かろうと、2 乗の形でありさえすれば \dfrac{1}{2}kT です。

自由度を数える

そうなると、あとは 2 乗で効く自由度がいくつあるかを数えるだけで、その系のエネルギーが出ることになります。

図の左は単原子分子です。動けるのは前後・左右・上下の 3 方向だけで、運動エネルギーが 3 つ。合わせて \dfrac{3}{2}kT です。前の記事の結果と合っています。

右は二原子分子です。並進の 3 つに加えて、棒の向きを変える回転が 2 つ(棒に沿った軸の回転は数えません)、それに 2 原子が伸び縮みする振動が入ります。振動は位置と速度の両方が 2 乗で効くので、1 つの振動で 2 つ数えます。全部で 7 つ、つまり \dfrac{7}{2}kT ということになります。

比熱が、階段になる

エネルギーが温度に比例するので、比熱はその比例の係数です。自由度が f 個なら、1 分子あたり \dfrac{f}{2}k、1 モルあたり \dfrac{f}{2}R です。

図はそれを並べたものです。単原子で \dfrac{3}{2}R、回転が入って \dfrac{5}{2}R、振動まで入って \dfrac{7}{2}R。比熱が飛び飛びの値しか取らないことになります。

実際、単原子気体のヘリウムやアルゴンの比熱は \dfrac{3}{2}R ですし、室温の窒素や酸素は \dfrac{5}{2}R です。よく合っています。

ただし、低温では崩れる

ところが室温の二原子分子は \dfrac{5}{2}R でした。振動のぶんの 2 つが数に入っていません。さらに温度を下げると、回転のぶんも消えて \dfrac{3}{2}R になります。

図の階段がそれです。低温から順に、並進だけ、回転が加わり、振動が加わる、と段が上がります。等分配則が言うとおりなら階段はないはずで、温度によらずいちばん上の段でなければなりません。

崩れる理由は、エネルギーが飛び飛びの値しか取れないことにあります。kT が段の間隔より小さいと、その自由度は下の段に張りついたまま動けません。これを凍りつくといいます。等分配則は、kT が十分大きいときだけ成り立つ話でした。次の記事では、この凍りつきを正面から扱います。

確率と多数
ミクロカノニカル分布
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量子統計
時間とゆらぎ