系の準位が分かっていて、エネルギーの平均も測ってあるとします。では、それぞれの準位に居る確からしさはいくつでしょうか。
図の 3 つは、どれも平均が同じ分布です。測ったことにはどれも合っています。それでも形はまるで違います。
測った量に合う分布は無数にあります。その中から 1 つを選ぶには、測っていないことについて何かを決めなければなりません。何を決めるかが、この項目の問いです。
指針は 1 つです。知らないことについて、勝手に決めない。言い換えれば、測った量に合う分布の中で、いちばん偏りのないものを選ぶ。
偏りのなさを測るのが S = -k\sum p\log p です。図は準位が 2 つのときで、p = 1/2 でいちばん大きくなります。どちらかへ寄るほど下がり、片方に決まりきったところで 0 になります。
何も測っていなければ、これは「どの状態も同じ確からしさ」を返します。それは等重率の原理そのものです。ミクロカノニカル分布で仮定として置いたものが、ここでは選び方の結果として出てきます。
課す条件は 2 つです。確からしさを全部足すと 1 になること。そして、エネルギーの平均が測った値になること。
この 2 つを課したうえで S を最大にします。条件つきの最大はラグランジュ乗数で解けます。条件が 2 つなので、乗数も 2 つ入ります。
出てくる答えが p_i \propto e^{-\beta E_i} です。図がその運びで、\beta はエネルギーの条件に付いた乗数、もう 1 つの乗数は全部足して 1 にするための割り算、つまり分配関数になります。
見覚えのある形です。「熱いほうから来る重み」で熱浴の状態数を数えて出したボルツマン因子と、同じものが出ました。
図がその分布です。\beta を大きくすると下の準位に集まり、小さくすると準位のあいだの差が消えていきます。
導き方はまるで違います。あちらは熱浴の状態数を数えました。こちらは何も数えず、知らないことを決めない、という指針だけを使いました。それで同じ答えに着きます。
\beta は、平均のエネルギーを合わせるために入れた数です。ここまでのところ、温度とは何の関係もありません。ただの乗数です。
図は \beta を動かしたときの平均のエネルギーです。\beta が大きいほど平均は下がり、小さいほど上がります。1 対 1 に対応するので、平均を 1 つ決めれば \beta が 1 つに決まります。
この \beta を熱力学の \dfrac{1}{kT} と突き合わせると、ぴたりと合います。温度とは、平均のエネルギーを合わせるために入った乗数だった、ということです。統計力学は、熱浴を数えるところからでも、ここから組み立てても、同じところへ着きます。