ばねにつないだおもりを、量子力学で扱うとどうなるか。答えだけを借りてきます。エネルギーが飛び飛びになり、しかもその間隔がどこでも同じになります。
図の梯子がそれです。下から 0、\varepsilon、2\varepsilon、3\varepsilon と、どこまでも同じ幅で続きます。\varepsilon = \hbar\omega で、ばねが硬いほど間隔が広くなります。
前の記事で凍りつくと言ったのは、この梯子のことです。kT が \varepsilon より小さいと、下の段から上がれません。では実際にどうなるかを、ここで最後まで計算します。
分配関数を書きます。Z = 1 + e^{-\beta\varepsilon} + e^{-2\beta\varepsilon} + \cdots です。n 番目の項は e^{-\beta\varepsilon} を n 回掛けたものですから、これは等比級数です。
図の棒がその項で、右へ行くほど同じ割合で短くなります。公比は e^{-\beta\varepsilon} で、1 より小さいので、無限に足しても値は有限です。
和は Z = \dfrac{1}{1 - e^{-\beta\varepsilon}} です。準位が無限にあるのに、分配関数がこんなに短い式で書けてしまいます。あとは前の章の規則どおり、対数を取って \beta で微分するだけです。
計算すると \langle E \rangle = \dfrac{\varepsilon}{e^{\beta\varepsilon} - 1} になります。プランクがこの形を書いたのが量子論の始まりで、いまはそれを分配関数から出したことになります。
図の明るい曲線がこれです。薄い直線は、比べるために置いた古典論の答えで、等分配則の言う kT です。振動子は位置と速度の 2 つが 2 乗で効くので、\dfrac{1}{2}kT が 2 つで kT でした。
高温では 2 本がぴたりと重なります。kT が段の間隔をはるかに超え、飛び飛びであることが見えなくなるためです。ところが低温では、明るいほうだけが 0 へ落ちていきます。
比熱を見ると、その落ち方がはっきりします。比熱はエネルギーの温度に対する傾きですから、高温では古典論と同じ k で平ら、低温では 0 へ落ちます。
落ち方が指数だというところが大切です。kT が \varepsilon より小さくなると、上の段へ上がる確率そのものがe^{-\beta\varepsilon} で押しつぶされます。少しずつ鈍るのではなく、ある温度を境にすとんと落ちます。
図の縦線が kT = \varepsilon のところです。ここより右では古典論どおり、左では凍りつく。前の記事の階段が、これでひとつ説明できました。
仕上げに、固体を振動子の集まりとみなします。原子 N 個が格子に並び、それぞれが 3 方向に振動する。振動子が 3N 個ある、と数えます。アインシュタインの模型です。
高温では 1 個あたり k ですから、全体で 3Nk、1 モルあたり 3R です。これはデュロン・プティの法則として、実験から先に見つかっていたものです。図の上の横線がその高さです。
低温では、実験でも比熱が落ちることが知られていました。古典論では説明できず、そこへアインシュタインがこの計算を当てはめました。図の曲線がその答えで、落ちるところまでは合います。ただし落ち方は実測よりも急で、そこを直したのがデバイの模型ですが、それはまた別の話です。