半角の公式は、2 倍角の公式を裏返しただけのものです。
cosθ=1−2sin22θ
sin22θ について解くと sin22θ=21−cosθ。両辺の平方根をとります。
sin2θ=±21−cosθ,cos2θ=±21+cosθ
公式そのものはこれで終わり[1]。残るのは ± をどちらにとるかで、そこは公式が決めてくれません。
2 倍角の 3 つの顔から 2 つが効く
cos2α の書き方は 3 通り。cos2α−sin2α、2cos2α−1、1−2sin2α です[1]。
このうち後ろの 2 つが半角を生む。sin だけの式と cos だけの式になっているため。
α=2θ と置けば 2α=θ です。1−2sin22θ=cosθ から sin の半角になる。
2cos22θ−1=cosθ からは cos22θ=21+cosθ が導ける。
最初の cos2α−sin2α は両方が残るので、この用途には向きません。
半角の公式は、次数を下げる道具 としても使われます。
sin2x=21−cos2x と読み替えれば、2 乗が消えて 1 次式になる。積分でよく使う形です。
符号は θ/2 がどの象限にいるかで決まる
± は、公式が決めてくれません。2θ の位置を自分で調べる。
sin は第 1・第 2 象限で正、第 3・第 4 象限で負。cos は第 1・第 4 象限で正、第 2・第 3 象限で負です。
| θ/2 の象限 | sin(θ/2) | cos(θ/2) | | 第 1 | 正 | 正 |
| 第 2 | 正 | 負 |
| 第 3 | 負 | 負 |
| 第 4 | 負 | 正 |
見るのは θ ではなく 2θ。ここをとり違えると符号が逆になります。
θ が第 3 象限、たとえば 200∘ なら、2θ=100∘ で第 2 象限。sin は正、cos は負。
θ の象限から 2θ の象限は一意に決まりません。θ に 360∘ を足すと 2θ は 180∘ 動くため。
だから問題文の「0<θ<π」のような範囲が要ります。範囲がなければ符号は決められない。
例:cos A = 3/5 の鋭角
A が鋭角、つまり 0<A<90∘ とします。すると 0<2A<45∘ で第 1 象限。
第 1 象限なので sin も cos も正。± は両方とも + に決まります。
sin2A=21−53=52⋅21=51=55
cos2A=21+53=58⋅21=54=525
検算します。(55)2+(525)2=255+2520=1。
sin2+cos2=1 が成り立ちました。半角を計算したら、この確認を挟むと符号ミスも拾える。
tan の半角には符号のいらない形がある
tan2θ は ±1+cosθ1−cosθ と書けますが、実は ± を消せる[1]。
tan2θ=1+cosθsinθ=sinθ1−cosθ
この 2 つには平方根も ± もありません。象限を調べなくても、sinθ と cosθ を入れれば符号ごと正しい値になる。
導き方は次のとおり。sinθ=2sin2θcos2θ、1+cosθ=2cos22θ を使います。
割ると 2cos22θ2sin2θcos2θ=cos2θsin2θ=tan2θ。
cosθ=−1 のときだけ分母が 0 になります。そのときはもう一方の形を使えばよい。
平方根の形
±1+cosθ1−cosθ。cosθ だけで書けるが、象限の判断が要る
分数の形
1+cosθsinθ。sinθ も要るかわりに、符号が自動でつく
例:22.5 度の値
22.5∘ は 45∘ の半分。cos45∘=22 を使います。
22.5∘ は第 1 象限なので符号は正。
sin22.5∘=21−22=42−2=22−2
同じように cos22.5∘=22+2 になります。二重根号のまま残る形がふつう。
tan は分数の形で計算します。tan22.5∘=1+cos45∘sin45∘=1+2222。
分母分子に 2 をかけて 2+22、有理化すると 22(2−2)=2−1。
tan22.5∘=2−1≒0.414。二重根号が消えて、きれいな形になりました。
三角形の角の半分を出す
a=5、b=6、c=7 の三角形で tan2A を求めます。まず余弦定理で cosA を計算する[2]。
cosA=2bcb2+c2−a2=8436+49−25=8460=75
三角形の内角なので 0<A<180∘、よって 0<2A<90∘ で第 1 象限。符号は正。
tan2A=1+751−75=71272=61=66
三角形の角の半分は、いつでも 90∘ 未満です。だから符号はつねに正になる。
検算:内接円の半径から確かめる
同じ tan2A を、まったく別の道から計算します。内接円を使う方法。
ヘロンの公式で面積を計算します[2]。s=25+6+7=9 なので、面積は次のとおり。
S=9×4×3×2=216=66
内接円の半径は r=sS=966=326。
頂点 A から接点までの長さは s−a=9−5=4。この 2 つで直角三角形ができ、tan2A=s−ar。
tan2A=426/3=66
半角の公式で計算した値と一致しました。式変形と図形という、まったく別の道から同じ数に着いています。
まちがえやすい点
θ の象限で符号を決めてしまう誤りが最も多い。判断するのは 2θ の象限です。
θ=300∘ は第 4 象限ですが、2θ=150∘ は第 2 象限。sin は正、cos は負になる。
次に多い誤りは、21−cosθ の 2 を根号の外に出す形です。21−cosθ=211−cosθ。
sin と cos の ± の中身もいれかえやすい。sin が引き算、cos が足し算。
θ=0 で確かめられます。sin0=0 なので引き算のほう、cos0=1 なので足し算のほう。
90∘<θ<180∘ で cosθ=−53 のとき、sin2θ はどれですか。
__RESULT__
θ が第 2 象限なので 90∘<θ<180∘、したがって 45∘<2θ<90∘ で第 1 象限です。符号は正になります。値は 21+53=54=525 です。
tan の形も確かめます。
cosθ=31、sinθ=322 のとき、tan2θ はどれですか。
__RESULT__
tan2θ=1+cosθsinθ=34322=422=22 です。分数の形を使えば、象限を調べなくても符号ごと決まります。22 は分母の 1+cosθ をかけずに sinθ を cosθ で割った値です。
2 倍角を裏返し、2θ の象限で符号を決める。tan だけは分数の形で符号を省ける。
出典
Non-right Triangles: Law of Cosines. Algebra and Trigonometry 2e, OpenStax(余弦定理とヘロンの公式).
$\cos\theta = 1 - 2\sin^2\dfrac{\theta}{2}$ を $\sin^2$ について解けば、半角の公式はそれで出ます。難しいのは $\pm$ のほう。判断するのは $\theta$ ではなく $\dfrac{\theta}{2}$ の象限で、$\theta = 300^\circ$ なら $\dfrac{\theta}{2} = 150^\circ$ は第 2 象限になります。$\tan$ だけは $\dfrac{\sin\theta}{1+\cos\theta}$ という平方根も符号も要らない形を持つ。$22.5^\circ$ の $\tan$ が $\sqrt{2}-1$ になる計算と、$a=5$、$b=6$、$c=7$ の三角形で出した $\tan\dfrac{A}{2}$ を内接円から検算する手順まで。
θ が第 2 象限なので 90∘<θ<180∘、したがって 45∘<2θ<90∘ で第 1 象限です。符号は正になります。値は 21+53=54=525 です。