アフィン空間は、ベクトル空間から「原点」の概念だけを取り除いた構造です。アフィン接続は、そのアフィン空間や一般の多様体上で、向きや曲がり具合を比較しながら、ベクトルを別の点へ滑らかに運ぶための仕組み。
アフィン空間
アフィン空間では、点同士の差はベクトルとして定義でき、点にベクトルを加える操作も定義できます。ただし、点同士の「和」や「原点」は定義されていません。これは幾何学的な直感に沿っています。
「点 − 点 = ベクトル」が定義される
「点 + ベクトル = 点」が定義される
「点 + 点」や「原点」は定義されない
ユークリッド空間は本来アフィン空間であり、座標を導入して初めて原点が決まるだけです。原点がどこであっても距離や角度には影響しません。
アフィン接続
アフィン接続は、曲がった空間や一般の多様体上で、ベクトルどうしを比較したり、ある点から別の点へベクトルを運んだりするためのルールです。微分幾何では、接続により曲がりやねじれを記述できます。
ベクトルを別の点へ平行移動させる規則を与える
曲がり具合(曲率)やねじれ(ねじれテンソル)を記述できる
測地線を「まっすぐな曲線」として定義できる
アフィン接続が与えられると、次のような計算ができるようになります。
共変微分
ベクトル場を別の方向に沿って微分するときの正しい計算方法を与えます。曲がった空間における「方向微分」の一般化。
平行移動
空間が曲がっていても、ベクトルを滑らかに「同じ向きのまま」運ぶ手続きを与えます。これにより、別の点に持っていったベクトルを比較できるようになります。
アフィン空間とアフィン接続の関係
アフィン空間にはもともと「平行移動」の考え方が自然に備わっています。平坦なアフィン空間には標準的な接続があり、これは座標変換をしても変わりません。
一方、多様体では、このような標準の接続は一般に存在せず、接続を別途導入する必要があります。接続の選び方によって、測地線(最も自然な直線の一般化)が変わったり、曲率が生じたりします。