リーマン計量の基本

リーマン計量は、多様体の各点における接空間に内積を与える構造です。これにより曲線の長さ、角度、面積といった幾何学的な量を定義できるようになります。

リーマン計量の定義

次元可微分多様体 上のリーマン計量とは、各点 において接空間 上の内積

を与える対応 であって、次の条件を満たすものです。

対称性:
正定値性: であり、等号成立は のときに限る
滑らかさ: 任意のベクトル場 に対し、関数 が滑らかである

リーマン計量を備えた多様体 をリーマン多様体と呼びます。

局所座標での表示

局所座標 をとると、各点での接空間の基底は で与えられます。リーマン計量はこの基底に関して

という成分で表されます。行列 は対称かつ正定値であり、計量テンソルと呼ばれます。

接ベクトル , に対して、内積は

と計算されます(アインシュタインの縮約規則を使用)。

具体例

ユークリッド空間

に標準的なリーマン計量を入れると (クロネッカーのデルタ)となります。これは通常のユークリッド内積に対応します。

球面

半径 の球面 には、 のユークリッド計量から誘導される計量が入ります。球座標 を用いると

と表されます。

線素と曲線の長さ

リーマン計量は線素 を用いて

と書かれることがあります。この記法を使うと、曲線 の長さは

で定義されます。これはユークリッド空間における弧長の一般化です。

計量の引き戻し

滑らかな写像 があり、 にリーマン計量 が入っているとき、引き戻し

で定義できます。ただし が正定値になるのは が各点で単射のとき、すなわち がはめ込みのときに限ります。

部分多様体のリーマン計量は、包含写像による引き戻しとして自然に誘導されます。これを誘導計量と呼びます。