微分形式は「積分されるもの」を統一的に扱う言語である。線積分、面積分、体積積分を同じ枠組みで理解できる。
積分には相手が必要
積分とは「足し上げる」操作である。でも何を足し上げるのか。
曲線に沿って力の仕事を計算するとき、足し上げるのは「力 × 微小変位」である。曲面上で流量を計算するとき、足し上げるのは「速度 × 微小面積」である。
積分される側(力や速度)と、積分する側(曲線や曲面)がぴったり噛み合う必要がある。微分形式はこの「噛み合い」を数学的に定式化する。
1-形式:線積分の相手
曲線に沿って積分されるものが 1-形式である。
仕事の計算 を思い出そう。力 と微小変位 の内積を足し上げる。
1-形式 は各点で「接ベクトルを受け取って数を返す装置」である。曲線上の各点で接ベクトル(進む方向)を に食わせて、出てきた数を足し上げる。これが線積分 である。
2-形式:面積分の相手
曲面上で積分されるものが 2-形式である。
流量の計算 では、速度と微小面積ベクトルの内積を足し上げる。
2-形式は各点で「2つの接ベクトルを受け取って数を返す装置」である。曲面上の各点で、曲面を張る2つの方向を食わせると、その微小平行四辺形が寄与する量が出てくる。
向きと反対称性
と は符号が逆である。つまり となる。
これは向きを反映している。 軸から 軸への回転と、 軸から 軸への回転は逆向きである。面積分で曲面の向きが重要なのと同じ理由である。
外積の意味
は「 方向と 方向が張る面積要素」を表す。
は「 方向にどれだけ進んだか」を測り、 は「 方向にどれだけ進んだか」を測る。両方を組み合わせて「 平面にどれだけの面積を張るか」を測るのが である。
外微分:境界との関係
外微分 は「次元を1つ上げる」操作である。0-形式(関数)の外微分は 1-形式、1-形式の外微分は 2-形式になる。
そして Stokes の定理が成り立つ。「領域上で を積分する」のと「境界上で を積分する」のは等しい。
古典的定理の統一
微分積分学の基本定理、Green の定理、発散定理、古典的 Stokes の定理。これらはすべて一般化された Stokes の定理の特殊な場合である。
0-形式 (関数)を線分で積分。。
1-形式または 2-形式を曲面や立体で積分。すべて の形。
閉形式と完全形式
のとき を閉形式という。 と書けるとき完全形式という。
閉形式の積分は、境界だけで決まる。経路の取り方によらない。これは保存力のポテンシャルの存在と同じ話である。
完全形式は常に閉形式である( だから)。逆は一般に成り立たないが、穴のない空間では成り立つ(Poincaré の補題)。
なぜ微分形式を使うのか
微分形式の利点は座標に依存しないことである。
ベクトル解析では、発散や回転の公式が座標系ごとに違う。直交座標、円柱座標、球座標で公式を覚え直す必要がある。
微分形式では の定義は座標によらない。複雑な座標系でも、多様体上でも、同じ記号で同じ操作ができる。
まとめ
微分形式は「積分の相手」を統一的に扱う枠組みである。1-形式は線積分、2-形式は面積分、-形式は 次元の積分に対応する。外微分 と Stokes の定理により、多変数の微分積分学が美しく整理される。