微分形式のイメージ〜線の束から向き付きの面積まで
線積分、面積分、体積積分は、別々の公式として習います。積分記号の下に置くものも、、、 とばらばら。
微分形式を入れると、この 3 つが 1 つの形になります。 次元のものの上で積分できる相手が 次微分形式、というだけの決め方[1]。
以下では 形式を等高線の束として、 形式を向き付きの面積として読む見方を作り、外微分が境界をとる操作にあたることを確かめ、ストークスの定理まで進みます。
積分には相手がいる
の を、単なる記号だと思って読み飛ばすことがあります。置換積分で が に化けるあたりで、何かの量だと気づく。
積分は、道や面といった図形の上で行います。図形のほうは向きを持ち、細かく刻めば小さな線分や小さな平行四辺形になる。
積分の中身は、その小さな線分や平行四辺形に数を返すものでなければなりません。この「返すもの」が微分形式です。
測る道具を先に決めている
長さを測るには、単位を決める必要があります。面積も同じ。
ユークリッド空間では単位が暗黙に決まっているので、意識しないまま済みます。多様体では決まっていません。
微分形式は、この単位を各点で指定する道具です。点ごとに変わってよいところが、定数の単位との違い[3]。
形式は等高線の束
形式 は、接ベクトル 1 本に数を返します。線型なので、返す数は「ベクトルが等高線を何本横切ったか」と読める。
なら等高線は の等高線そのものです。一般の 形式でも、局所的には同じ絵になります。
束が密なほど、同じベクトルに大きい数を返します。 の大きさは線の密度。
矢印が線に沿って動くと、横切る本数は です。線に垂直に動くと本数が最大になる。
負の値も出ます。逆向きに横切れば符号が変わる、というだけのこと。
例: は縦線の束
は 座標の等高線、つまり縦線の束です。間隔は 。
、 が、この絵の言い換えになります。横に進めば線を横切り、縦に進めば横切らない。
なら線の間隔が半分になります。同じベクトルに 2 倍の数を返す。
例: の束を描く
の等高線は、 という斜めの直線です。
法線の向きは で、間隔は になります。係数が大きいほど密。
、 です。どちらも束を横切る本数として読めます。
形式とベクトル場は違うもの
矢印で描けるという点で、 形式とベクトル場は似て見えます。計量があれば実際に対応が付く。
計量がないと対応しません。 形式は「線の束」で、ベクトルは「矢印」。束の密度と矢印の長さを結びつけるには、長さを測る仕組みが要ります[3]。
座標変換での動き方も逆です。ベクトルの成分は基底と逆に、 形式の成分は基底と同じ向きに変わる。
線の束。ベクトルを食べて、横切った本数を返します。座標を細かくとると束は密になる。
矢印。長さと向きを持ちます。座標を細かくとると成分は小さくなる。
同じ絵に見えても、座標を変えたときの動き方が逆です。計量があれば橋が架かり、なければ別の対象のまま。
線積分の相手が 形式である理由
曲線を細かく刻むと、小さな接ベクトルの列になります。各点で 形式に食わせて足すのが線積分。
右辺は の関数の普通の積分です。パラメータのとり方を変えても値が変わらないのは、 が線型で が連鎖律で変わるため。
向きを逆にすると符号が変わります。 形式が向き付きの量であることの現れ。
例:仕事は 形式の積分
力の場を とし、 とします。
経路に沿った仕事は です。物理で と書いているものと同じ。
内積が現れるのは、力をベクトルとして書いたためです。もともと力を 形式として扱えば、内積は要りません。
形式は向き付きの面積
形式は接ベクトル 2 本に数を返します。2 本が張る平行四辺形の、向き付きの面積を測る道具。
反対称性 は、2 本を入れ替えると裏返る、という意味です。
同じベクトルを 2 本入れれば になります。潰れた平行四辺形の面積が であること。

図形は同じで、辺をたどる順だけが違います。返る数は符号だけ入れ替わる。
面積に符号を付けておくと、向きを変えたときの扱いが自動になります。積分の向きを別に管理しなくてよい。
例: が測る面積
に と を入れると
になります。行列式そのもの。
、 なら値は で、単位正方形の面積。順を逆にすれば です。
例: の読み方
に と を入れると です。
図でいえば、同じ方向の束を 2 回数えていることになります。平行四辺形が潰れる。
この関係が、次数の上限を作ります。 次元では で添字がすべて相異なる必要があるため。
外積の意味
形式 と の外積は、2 つの束を組み合わせて「網」を作る操作です。網の目の細かさが の大きさ。
一般に が成り立ちます。、 はそれぞれの次数[3]。
奇数次どうしだけが反可換で、それ以外は可換です。 形式どうしは順を変えても符号が変わらない。
例:3 次元で 2 形式の基底を数える
次元では 、、 の 3 つが基底になります。
で、ベクトルの数と同じです。 次元でだけ 形式とベクトル場を対応させられるのは、この一致から。
外積代数の次元は で、 次元なら です[6]。
次元多様体上の 次微分形式の基底は何個か。
- 4 個
- 6 個
- 8 個
- 16 個
関数。点に数を返します。 次元の点の上で「積分」すると、その点での値。
線の束。接ベクトル 1 本に数を返し、曲線の上で積分できます。
向き付きの面積。接ベクトル 2 本に数を返し、曲面の上で積分できます。
体積要素。 次元多様体の上で積分でき、次数はここで打ち止めになります。
次数と、積分できる図形の次元がそろっています。この一致が微分形式のいちばんの強み。
図形を細かく刻む
小片に微分形式を食わせる
返った数を足し上げる
3 歩とも、次数と次元が合っていないと動きません。合わせるために反対称性が要る。
次数が次元を超えると 0 になる
次元多様体では、 次以上の形式は しかありません。相異なる添字を 個そろえられないため。
次形式は 次元ぶんしかなく、体積形式の定数倍です。向きの付いた多様体では、これがどこでも でないようにとれる。
次元で 重積分が出てこないことに対応しています。積分できる次元は多様体の次元まで。
外微分は境界をとる操作
外微分 は 形式を 形式へ送ります。座標では
と書けます。係数を微分して、 を前に付ける。
図で読むと、境界をとる操作に対応します。 次元の小片の縁で を測ったものが、 が返す数[5]。
例: 形式の外微分は回転
の外微分を計算します。
括弧の中はベクトル解析の回転です。小さな長方形の周りを 1 周したときの値が、面積あたりでこの量になる。
次元で同じ計算をすると、回転の 3 成分がそろって出ます。
例: 形式の外微分は発散
の外微分は
になります。括弧の中は発散です。
勾配・回転・発散が、次数 、、 の外微分として並びます。3 つの別々の公式が、1 つの に畳まれる[1]。
は境界の境界がないこと
は、偏微分の交換可能性から出ます。 が対称で、 が反対称なので消える。
図で読むと、境界の境界が空であることに対応します。四角形の縁をたどり、その縁の縁をとれば何も残らない。
と が、この一行にまとまります。
内側の辺が打ち消し合う
ストークスの定理の絵を、細かく刻んだ四角形で描きます。
隣り合う 2 つの四角は、共有する辺を逆向きにたどります。足せば消える。
残るのは外周だけです。この打ち消しが、ストークスの定理の中身のほとんど。
一般化ストークスの定理
を向きの付いた 次元の境界付き多様体、 をコンパクトな台を持つ 次形式とします。このとき
が成り立ちます[5]。境界には誘導された向きを入れる。
左辺は をとってから積分し、右辺は境界をとってから積分します。 と が互いに双対な操作になっている。
例:微分積分学の基本定理
、( 次形式)とします。 は端点 2 つで、向きは が正、 が負。
が出ます。高校で習う公式が、いちばん低い次数の場合[5]。
例:グリーンの定理と発散定理
次元で とすればグリーンの定理になります。 の係数が回転。
次元で を 形式にとれば発散定理です。 の係数が発散。
同じく 次元で曲面と 形式をとれば、古典的なストークスの定理。4 つの定理が 1 本の式の場合分けになります。
閉形式と完全形式
となる形式を閉形式、 と書けるものを完全形式といいます。
から、完全なら閉です。逆は成り立つとは限りません[2]。
食い違いの大きさがド・ラームコホモロジーで、空間の穴の情報を持ちます。
例:穴のあいた平面の
の上で
とおくと、 です。ところが原点を回る円周にそって積分すると になります。
完全なら のはずなので、 は完全ではありません。
穴が 1 つあることが、この に出ています。 が 次元[2]。
ポアンカレの補題
の開球、あるいは可縮な開集合では、閉形式はすべて完全です[2]。
局所的には閉と完全が一致します。差が出るのは大域の話だけ。
「回転が ならポテンシャルがある」という物理の言い回しは、この補題の 次の場合です。領域が可縮でないと崩れる。
座標に依らないこと
外微分の定義は座標で書きましたが、結果は座標に依りません。
確かめ方は 2 つあります。座標変換の計算で直接確かめるか、 を特徴づける性質から一意性を出すか[4]。
引き戻しと交換する という性質も、座標に依らないことの言い換えになります。











(24)=6 です。3 次元のときと違い、ベクトル場の 4 個とは一致しません。