t 分布の定義と性質

t 分布(スチューデントの t 分布)は、母分散が未知の場合に母平均を推定する際に現れる分布です。正規分布に似た釣鐘型ですが、裾が重いという特徴を持ちます。

t 分布の定義

が独立であるとき

は自由度 の t 分布に従います。これを と書きます。

確率密度関数は

で与えられます。この関数は に関して対称です。

期待値と分散

のとき、期待値は

です。分散は のとき

であり、 では分散が存在しません。自由度が小さいと分散は 1 より大きく、正規分布よりばらつきが大きいことを意味します。

正規分布との関係

自由度 が大きくなると、t 分布は標準正規分布 に近づきます。 のとき です。実用上、 程度で正規分布による近似がよく使われます。

裾の重さについては、t 分布は正規分布より裾が重く、極端な値が出やすい分布です。これは分母のカイ二乗変数による揺らぎが原因です。

統計的推測への応用

からの無作為標本のとき、標本平均 と標本分散 に対して

は自由度 の t 分布に従います。これにより、母分散 が未知であっても母平均 の区間推定や検定が可能になります。

この結果を示したのは W. S. ゴセットで、彼はギネス社に勤務していたため「スチューデント」というペンネームで論文を発表しました。