中心極限定理は、多数の独立な確率変数の和が正規分布に近づくことを述べる定理です。正規分布がなぜこれほど普遍的に現れるのかを説明する、確率論における最も重要な定理の一つです。
定理の主張
を同一の分布に従う独立な確率変数列とし、期待値 、分散 ()とします。標本平均 を標準化した
は、 のとき標準正規分布 に分布収束します。
同じことを和の形で書くと、 に対して
となります。
分布収束の意味
とは、任意の連続点 において累積分布関数が収束すること、すなわち
が成り立つことを意味します。ここで は標準正規分布の累積分布関数です。
定理の意義
中心極限定理の驚くべき点は、元の分布の形状によらずに正規分布への収束が起こることです。元の分布が離散でも連続でも、対称でも歪んでいても、十分に多くの独立な変数の和は正規分布に近づきます。
自然界や社会現象で正規分布が頻繁に現れるのは、観測値が多数の微小な独立な要因の累積効果として決まることが多いからです。身長、測定誤差、IQ などが正規分布に従うのはこのためです。
近似への応用
中心極限定理を用いると、 が大きいとき
として確率を近似計算できます。
例えば、サイコロを 100 回投げたときの出目の合計が 330 以上になる確率を求めるには、、 として正規近似を用います。実用上、 程度あれば近似は十分良好です。
一般化
独立だが同分布でない場合にも、適切な条件のもとで中心極限定理が成り立つことが知られています(リンデベルグ・フェラー条件など)。これにより定理の適用範囲は大きく広がります。