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確率変数を定数倍すると分散だけ 2 乗で効く理由と変換公式

全員の点数に 10 を足しても、分散は 1 も動きません。全員を 2 倍すると、分散は 4 倍になります。

足し算は効かず、掛け算だけが 2 乗で効く。ばらつきが「平均からの距離」で測られていることが、この差を生みます。

期待値は 1 次式をそのまま通す

定数 と確率変数 について、次が成り立ちます[1]

期待値は積分なので、定数倍は外へ出せ、定数の期待値はその定数のまま。この 2 つを合わせた形です。

変数が 2 つでも同じです。 が、独立でなくても成り立ちます[1]

独立性が要らないのは、期待値が足し算の構造だけを見ているためです。積のほうは事情が変わります。

分散は平行移動を無視する

分散は平均からの距離の 2 乗の平均です。 を入れてみます。

が途中で消えました。 の平均にも が入っているので、引き算のところで打ち消し合います[2]

残るのは だけ。距離を 2 乗しているので、倍率も 2 乗で効きます。

を足す

分布ごと横へずれる。中身の並びは変わらないので、ばらつきは同じ

倍する

目盛りそのものが伸びる。距離が 倍、2 乗して

標準偏差には絶対値がつく

標準偏差は分散の平方根なので、 です。

が負でも標準偏差は正のまま。 倍すれば分布が反転しますが、広がり方は 2 倍で同じです。

分散が 、標準偏差が 倍。単位の入り方を考えると自然で、標準偏差はもとの量と同じ単位を持ちます。

標準化

2 つの公式を組み合わせると、平均 、分散 に直せます。

にあたる 1 次変換です。

単位が消えるので、違う尺度で測った量どうしを並べられます。 何個ぶん離れているか、という共通の物差しになる。

例:試験の点を変換する

の得点に、 という変換を当てます。

平均は 。分散は で、標準偏差は 20 です。

もとの標準偏差 10 が 20 になりました。 はどこにも出てきません。

なら平均は 40、分散は で変わらず、標準偏差も 10 のまま。順位が逆になっても、広がりは同じです。

独立な和

が独立なら、分散は足し算になります[2]

独立でないと、共分散の項が残ります。期待値の加法性が独立性を要求しないのと対照的です。

標本平均に当てはめると を掛けたぶんが で効き、 個ぶん足すので が残ります。

標準偏差のほうは足せません が足し算なので、 どうしは という形になる。

を合わせると ではなく 。斜辺の長さと同じ足し方です。

積の期待値には条件がつく

和の期待値はいつでも足し算に分かれますが、積は違います。

独立なら共分散が になるので、 が成り立ちます[2]。独立でなければ、ずれたぶんが共分散として残る。

さいころ 2 個を独立に振るなら です。ところが同じ 1 個の目を 2 回使うと になります。

同じ記号でも、別々に振ったのか 1 回の結果を使い回したのかで答えが変わる。共分散の項が かの違いです。

関数と期待値は順番を入れかえられない

1 次式なら でしたが、2 乗になると崩れます。

差はちょうど分散です。 を移項すれば [2]

分散は負にならないので、 はつねに 以上。等号は が定数のときだけです。

一般に、下に凸な関数 については が成り立ちます[1]。イェンセンの不等式と呼ばれます。

図では を半々でとる確率変数を置いています。平均は 2.5 で、

で、こちらのほうが大きい。差の 2.25 が分散にあたります。

例:さいころで確かめる

1 から 6 が等確率のとき、 です。2 乗の期待値も出します。

なので、差は 2.9167。これが です。

とすると、

もとの標準偏差 1.708 のちょうど 2 倍になりました。

のとき、 はいくつですか。

  • 81
  • 32
__RESULT__

なので、 です。分散は負になりません。 は平行移動なので効かず、足し算で になることもありません。

足し算は位置を動かし、掛け算は目盛りを伸ばす。分散が反応するのは後者だけで、しかも 2 乗で反応します。

参考

Mathematical expectation. Encyclopedia of Mathematics.
Dispersion. Encyclopedia of Mathematics.
全員に 10 を足しても分散は 1 も動かず、全員を 2 倍すると 4 倍になります。$V[aX+b] = a^2V[X]$ の導出では、$Y$ の平均にも $b$ が入っているので引き算のところで打ち消し合う。標準偏差は $\sqrt{a^2} = |a|$ 倍なので、$-2$ 倍でも正のままです。期待値の加法性は独立でなくても成り立つのに、分散の加法性と積の期待値には独立が要ります。さいころ 2 個なら $E[XY] = 12.25$、同じ目を 2 回使えば 15.1667。$E[X^2]$ と $(E[X])^2$ の差がちょうど分散になること、下に凸な関数でのイェンセンの不等式まで、さいころの数値で確かめます。