可換環 に対して を の素イデアル全体の集合とする。 のイデアル に対し
とおく。 を閉集合族として入る位相を Zariski 位相という。基本的な直観は「 が消える( のすべての元が点 上で になる)」という零点集合の集まりで閉集合を作る、というもの。
は「 を含む素イデアルの集合」
は素イデアルそのもの
閉集合の和・積の基本恒等式(証明つき)
Zariski 位相が本当に位相になっていることは次の恒等式で確認できる。以下、 はイデアル。
、
(1) と
は常に成り立つので 。 なら だが素イデアルは真のイデアルなので存在しない。ゆえに 。
(2) 交わり:
なら かつ 。すると 、ゆえに 。逆向きも同様に従う。
(3) 和集合:
包含 から は明らか。逆向きの同値は が素イデアルであることを使う:
よって 。さらに も成立する(一般に であり、 を使うと一気にわかる)。
これで閉集合族が空でなく、任意交わりと有限和で閉じていることが示された。
基本開集合と位相の基
に対し
を基本開集合という。 は Zariski 位相の基になり、次が成り立つ:
最後の等式は
で証明できる。任意の開集合は基本開の和集合として書ける。
点の閉包と閉点・一般点
点 の閉包は
である。実際、 は を含む最小の閉集合だから。特に
が極大イデアル なら なので点は閉。
一般には極大でない素イデアルは閉でない。 は閉集合 の「一般点(generic point)」になり、その閉包全体を代表する。
可約性と冪零元
の零化根(ニルラジカル)を とすると
が成り立つ。理由は
である( が既約 が素、を使う)。したがって に置き換えても位相は変わらない。
有限生成条件下の性質(概略)
が Noether 環なら は
- 任意の閉集合が有限個の既約成分に分解できる(既約分解の有限性)
- 準コンパクト(基本開での被覆は有限部分被覆をもつ)
といった位相的性質を満たす。Zariski 位相は粗いが、代数と対応がよい。
環準同型と連続性
環準同型 によるスペクトル写像
は連続になる。実際、任意の について
が成り立つから(証明:)。特に基本開について
が従う。
よく使う恒等式まとめ
以上の等式と 、 を押さえれば、Zariski 位相の計算はたいていその場でさばける。