準連接層(quasi-coherent sheaf)は、代数幾何学における層の重要なクラスで、連接層よりも広い概念です。スキーム上の準連接層は、局所的に見るとある環の加群として記述できる層として定義されます。
スキーム 上の 加群 が準連接層であるとは、 の任意のアフィンな開集合 に対して、ある 加群 が存在して となることを意味します。ここで は に対応する層を表します。
準連接層は代数幾何学において最も自然に現れる層のクラスで、多くの幾何学的対象がこの形で記述されます。例えば、スキーム上のベクトル束や、その一般化である準連接層の完全列などが基本的な研究対象となります。
連接層との違い
準連接層と連接層は密接に関連していますが、有限性の条件が異なります。
局所的にある環の加群として記述できる層。有限生成性は要求されない。無限次元のベクトル空間に対応する層なども含まれ、より広いクラスを形成する。
準連接層であり、さらに局所的に有限生成という条件を満たす層。ネーター環上では有限表示と同値になる。幾何学的には「有限次元」の対象に対応する。
連接層は準連接層の特別な場合であり、スキームがネーターの場合には特に重要な役割を果たします。
準連接層の例
準連接層の具体例としては、以下のようなものがあります。
構造層 自身
ベクトル束に対応する局所自由層
イデアル層
任意の連接層
無限次元加群から構成される層
特に、アフィンスキーム 上では、 加群 から自然に準連接層 が構成され、この対応は圏同値を与えます。つまり、 加群の圏と 上の準連接層の圏は本質的に同じものとみなせます。
準連接層の圏は、層の押し出しや引き戻しなどの操作に対して良い性質を持ち、スキームの射に沿った層の変換を研究する上で自然な枠組みを提供します。