チェックコホモロジー(Čech cohomology)は、位相空間のコホモロジー群を計算するための手法の一つ。エドゥアルト・チェックが導入したこの理論は、開被覆を用いて位相空間の大域的な性質を調べることができます。
チェックコホモロジーの基本的なアイデアは、位相空間 の開被覆 を使って、空間の情報を有限個の開集合とその交わりの情報に分解することです。開集合の交わり方を記録したデータから、コホモロジー群と呼ばれる代数的な不変量を構成します。
チェック複体の構成
位相空間 と開被覆 が与えられたとき、チェック複体を次のように定義します。
次のチェック共鎖群 は、 個の開集合の交わり 上で定義された層 の切断の積で構成されます。具体的には、
となります。
境界作用素 は次の式で定義されます。
ここで は を除くことを意味します。この境界作用素は を満たすため、複体を形成します。
チェックコホモロジー群
チェック複体から得られるコホモロジー群を、開被覆 に関するチェックコホモロジー群と呼びます。
開被覆を細かくしていくと、チェックコホモロジー群は安定します。すべての開被覆に関する極限をとったものが、空間 のチェックコホモロジー群です。
特別な場合
層 が定数層の場合、チェックコホモロジーは位相空間の穴や捻れといった幾何学的な性質を反映します。
位相空間 がパラコンパクトで、層 が軟弱層のとき、チェックコホモロジーは層コホモロジーと一致します。この性質により、チェックコホモロジーは実用的な計算手段となっています。
球面 のチェックコホモロジーは、適切な開被覆を選ぶことで比較的簡単に計算できます。たとえば を 2 つの開区間で覆うと、1 次のコホモロジー群が となることが示せます。
チェックコホモロジーは代数幾何学でも重要な役割を果たします。スキームのコホモロジーを計算する際、ザリスキ位相の開被覆を用いたチェック複体が基本的な道具となっています。