位数 12 のアーベル群はいくつある?有限生成アーベル群の基本定理
有限生成アーベル群は、無限巡回群と有限巡回群の直和にただ一通りに分かれます[1]。
を階数、 を不変因子といいます[3]。生成元と関係式を書き下せば、この形は行列の計算で求まります。
表示行列から始める
が で生成されているとします。全射 があり、 です。
は の部分群なので、階数 の自由アーベル群になります[1]。その生成元を の標準基底で書き並べると、整数行列 ができる。
これが表示行列です。あとは を扱いやすい形に直せばよい。
適合基底
鍵になるのは次の定理です[1]。階数 の自由加群 と、階数 の でない部分加群 に対し、 の基底 と でない整数 がとれて
となり、さらに にできる[1]。
部分加群の基底が、全体の基底の各方向を整数倍に縮めた形になる。線型代数の基底の延長定理に近い主張ですが、係数環が体でないぶん、倍率 が残ります[2]。
商をとると答えが出ます。
が のところは で消えます。残ったものが不変因子、 が階数です。

Smith 標準形で計算する
適合基底を実際に求める手順が、整数行列の Smith 標準形です[2]。
使えるのは、行と列に対する 3 種類の基本変形です。行を入れ替える、行に別の行の整数倍を足す、行を 倍する。列でも同じ。どれも の元を掛けることにあたるので、格子は変わりません。
例を 1 つ計算します。
2 行目から 1 行目の 倍を引きます。
2 列目から 1 列目の 倍を引き、2 行目を 倍します。
なので、これが Smith 標準形です。
位数は で、 と合っています。
自由部分が出る例
対角成分に が現れると、そこが自由部分になります。
2 行目から 1 行目を、3 行目から 1 行目の 倍を引くと、2 行目と 3 行目がどちらも になります。3 行目から 2 行目を引けば 行になる。
2 列目から 1 列目の 倍、3 列目から 1 列目の 倍を引き、最後に 3 列目から 2 列目を引きます。
対角成分は です。 の分だけ が残ります。
関係式が 3 本あっても、そのうち 1 本が他の 2 本から出ていたので、階数が 残りました。
指数は行列式で決まる
上の 2 つの例で が位数と一致したのは偶然ではありません[1]。
階数 の自由アーベル群 と、同じ階数 の部分群 をとります。 の基底で の基底を表した係数行列を とすると
が成り立ちます[1]。適合基底をとれば で指数は 、一方で基底変換の行列式が なので も同じ値になります。
階数が落ちる場合は で、指数が無限であることに対応します。
指数は有限で、 に等しい。商は有限アーベル群
関係が足りず、商に自由部分が残る。指数は無限
2 つの書き方
不変因子とは別に、素数冪で書く形もあります[3]。
これを単因子分解といいます。2 つは中国剰余定理でつながっています。 なら です。
具体例で行き来します。 をとります。
素数ごとにばらすと、 の側が と 、 の側が と 。単因子は です。
不変因子に戻すには、各素数の最大の冪から順に掛け合わせます。、。
で、積は です。
位数 12 のアーベル群は 2 つしかない
同型なものを数え上げるとき、書き方の違いを別の群と数えてしまいがちです。
位数 のアーベル群を並べます。 の側は か の 2 通り、 の側は の 1 通りだけ。
個です。 と を別々に数えると 個に見えますが、中国剰余定理で同じものになります。
一般に、位数 のアーベル群の個数は です。 は の分割の個数を表します。
なら 個。 なら 個になります。

一意性
分解が一通りしかないことは、 からとり出せる不変量として が書けることから出ます[1]。
素数 を固定し、 の大きさを見ます。 の成分は 倍しても 個ぶんの剰余を残し、 の成分は のときだけ剰余を残す。だから になります。
同じことを について を動かしながら並べると、各素数について冪の並びが復元できます。復元された並びが単因子で、そこから不変因子も決まる。
分解の書き方は選べても、そこに現れる数の並びは選べません[3]。
どう使うか
有限生成アーベル群が現れる場面では、生成元と関係式を書いて表示行列を作り、Smith 標準形に落とせば同型類が確定します。
代数的整数論では、単数群やイデアル類群の構造がこの形で書けます。位相幾何では、ホモロジー群の計算が境界作用素の行列の Smith 標準形に帰着します。
行列を対角に落とすという 1 つの計算に、群の同型類の決定がまとまっている。それがこの定理の使い道です。
位数 のアーベル群は同型を除いて何個ありますか。
- 1 個
- 3 個
- 5 個
生成元と関係式から出発して、行列を対角に落とすところまでが 1 本の道になっています。分解の存在と一意性が同時に出るので、有限生成アーベル群は完全に分類されている、と言い切れる数少ない対象になりました。










8=23 なので、3 の分割の個数だけあります。3、2+1、1+1+1 の 3 通りで、それぞれ Z/8Z、Z/4Z⊕Z/2Z、Z/2Z⊕Z/2Z⊕Z/2Z に対応します。非可換なものを入れると位数 8 の群は 5 個ですが、ここで数えているのはアーベル群だけです。