行列のランクとは、行列が持つ独立な行(または列)の最大個数です。ランクは行列の本質的な次元を表す重要な概念で、連立方程式の解の存在や線形変換の性質を調べるために使われます。
ランクの定義
行列 のランクは、 の行ベクトルまたは列ベクトルのうち、線形独立なベクトルの最大個数として定義されます。行ランクと列ランクは常に等しく、これを単に「ランク」と呼びます。
行列の行ベクトルのうち、線形独立なものの最大個数を指します。行基本変形によって求められます。
行列の列ベクトルのうち、線形独立なものの最大個数を指します。列基本変形によって求められます。
どのような行列に対しても、行ランクと列ランクは必ず一致します。この性質により、ランクは行列固有の値として扱えます。
ランクの求め方
行列のランクを求めるには、行基本変形を用いて階段行列に変形する方法が一般的です。階段行列における非零行の個数がランクになります。
例として、次の行列 を考えます。
この行列に行基本変形を施して階段行列にします。
非零行は 2 行なので、 です。
ランクの性質
行列のランクにはいくつかの重要な性質があります。
ランクと連立方程式
行列のランクは、連立方程式 の解の存在条件を判定するときに使われます。 を係数行列、 を拡大係数行列とすると、次の関係が成り立ちます。
例えば、次の連立方程式を考えます。
係数行列 と拡大係数行列を作ると、
どちらもランクは 1 で、未知数は 2 つなので、無数の解が存在します。
フルランクとランク落ち
行列 のランクが に等しいとき、 はフルランクであるといいます。フルランクでない行列をランク落ちしているといいます。
行列の行数または列数の小さい方とランクが一致している状態です。正方行列の場合、フルランクであれば正則行列(逆行列が存在する)になります。
行列のランクが行数や列数より小さい状態です。正方行列がランク落ちしていると、逆行列は存在せず、線形従属な行や列が含まれています。
正方行列がフルランクであるかどうかは、逆行列の存在や行列式の値とも関係します。フルランクの正方行列は行列式が 0 でなく、逆行列を持ちます。