被覆で測るコンパクト、点列で測るコンパクト、どこでずれるか
開被覆から有限個を選び出せる。これがコンパクトです。どんな点列にも収束する部分列がある。こちらが点列コンパクト[3]。
距離空間では 2 つが一致します。一般の位相空間では、どちらか片方だけが成り立つ空間が両方向にある。
2 つの定義
がコンパクトであるとは、 の任意の開被覆が有限部分被覆を持つことをいいます[1]。
が点列コンパクトであるとは、 のどの点列にも収束する部分列があることをいう[3]。ボルツァーノとワイエルシュトラスの条件と呼ばれることもあります。
見ている対象が違います。片方は開集合の族、もう片方は可算個の点の並び。
開被覆を有限に減らせる。個数の制限は被覆の側
点列から収束部分列がとれる。可算個の点しか見ない
被覆を減らすとはどういうことか
有限部分被覆が存在するかどうかは、被覆の作り方すべてに対する条件です。1 つの被覆で成功しても足りません。
は開被覆 を持ち、これには有限部分被覆がない。だから はコンパクトではありません。
を たちで覆うと、有限個ではどうしても のそばが残ります。閉区間 ならこの逃げ道がふさがる。
点列は集積点をつかまえる
点列コンパクト性の側は、点が無限に並んだとき、どこかに寄り集まる場所があるかを問います。
下の図は の中の点列です。無限個の点が有限の幅に詰め込まれるので、どこかに詰まる場所ができる。

だと寄り先が や になることがあり、その点が空間の外に落ちます。閉じているかどうかがここで効いてくる。
距離空間では一致する
距離空間 では次の 3 つが同値になります[1]。
効いているのは第一可算性です。距離空間では各点が可算な近傍基を持つので、位相の情報を点列だけで復元できる[3]。
ユークリッド空間では、さらに簡単な言いかえがあります。 の部分集合がコンパクトであることと、有界閉集合であることが同値[1]。ハイネ・ボレルの定理です。
全有界と完備に分ける
距離空間では、コンパクト性が 2 つの条件へきれいに分かれます。
全有界とは、どんな に対しても、半径 の球有限個で全体を覆えることをいいます。空間の広がりを押さえる条件です。
完備とは、コーシー列がすべて収束すること。すきまがない条件です。
は全有界ですが完備ではありません。 は完備ですが全有界ではない。どちらか片方が欠けるとコンパクト性が崩れます[1]。
一般の位相空間ではずれる
一般には 2 つが独立します。片方だけを満たす空間が両方向にある[3]。
第一可算性がないと、点列は空間の一部しか見ません。可算個の点をどれだけ並べても、届かない場所が残ってしまう。
点列は可算個の点しか使えない
第一可算でない空間では近傍を汲みつくせない
点列コンパクトとコンパクトが分かれる
例:コンパクトだが点列コンパクトでない
をとります。 を添字集合とする 2 点空間の直積で、積位相を入れる。
各因子がコンパクトなので、チコノフの定理から全体もコンパクトです。
ところが点列コンパクトではありません。 を の 2 進展開の第 桁と決めると、この点列には収束する部分列がない。
部分列 をどう選んでも、その番号のところで と が交互になる が作れます。積位相の収束は各点収束なので、その で値が振動して収束しません。
例:点列コンパクトだがコンパクトでない
最初の非可算順序数 に順序位相を入れます[3]。
どの点列も可算個の項しか持たないので、その上限が より小さいところに収まります。可算個の順序数の上限は可算だからです。
そこで話が可算な区間に閉じ込められ、収束部分列がとれる。だから点列コンパクトです。
いっぽう開被覆 には有限部分被覆がありません。有限個の の最大値より上が残ってしまう。
| 空間 | コンパクト | 点列コンパクト |
|---|---|---|
| はい | はい | |
| はい | いいえ | |
| いいえ | はい | |
| いいえ | いいえ |
4 つの組み合わせがすべて起こります。片方から他方は出てこない。
あいだにある可算コンパクト
どの可算な開被覆にも有限部分被覆がある空間を、可算コンパクトと呼びます[2]。
コンパクトなら可算コンパクトで、 空間では点列コンパクトなら可算コンパクトです[3]。
逆向きには条件が要ります。 で第一可算なら、可算コンパクトと点列コンパクトが一致する[3]。
コンパクト性は、リンデレフ性と可算コンパクト性へちょうど分解します[2]。どんな被覆も可算に減らせて、可算な被覆は有限に減らせる。この 2 段で有限部分被覆に届きます。
コンパクト性は、可算に減らす段と有限に減らす段の 2 つに分かれます。
は前半だけ、 は後半だけを持っている。
点列では足りない理由
点列コンパクトが弱くなるのは、添字集合を に固定しているためです。
これを一般の有向集合に広げたものがネット。フィルターを使う言い方もあります。ネットで書き直すと、コンパクト性は「どのネットにも収束する部分ネットがある」と同値になります。
の例では、収束する部分列はとれませんが、収束する部分ネットは必ずとれる。足りなかったのは点列の側だと分かります。
例:ヒルベルト立方体
に積位相を入れた空間をヒルベルト立方体と呼びます。可算個の積なので、チコノフの定理からコンパクトです。
しかもこちらは点列コンパクトでもあります。可算個の点列コンパクト空間の積は点列コンパクトのままだからです[3]。
との違いは添字集合の大きさ。可算個なら対角線論法で部分列を選び出せますが、非可算個になるとその手が使えません。
コンパクト性の基本性質
コンパクト空間の閉部分集合はコンパクトです[1]。開被覆に補集合を足して有限部分被覆をとり、足したぶんを外せばよい。
連続像もコンパクト。逆像で開被覆を引き戻すだけで済みます[1]。
ハウスドルフ空間ではコンパクト集合が閉集合になります[1]。この 2 つを合わせると、コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続な全単射が同相写像だと出る[1]。
点列コンパクト性のほうも、閉部分集合と連続像で保たれます。可算個の積で保たれる点も便利です[3]。
が点列コンパクトでないことを示す点列として使えるのはどれですか。
- を の 2 進展開の第 桁とする点列
- をすべての で使う定数点列
- を のとき 、それ以外で とする点列
被覆で測るか、点列で測るか。距離が入っていれば同じことを言っていますが、距離を外した瞬間に片方が弱くなる。可算という制限がどこに効いているかを見ると、ずれる理由がはっきりします。












第 1 の点列では、どんな部分列を選んでも、その番号の桁が交互に 0 と 1 になる x が作れます。積位相の収束は各点収束なので、その x で値が振動して収束しません。定数点列はそれ自身が収束します。第 3 の点列は x>0 で最後は 0、x=0 で 1 に落ち着くので、そのまま収束します。