距離空間では連続性を点列の収束で特徴づけられるが、一般の位相空間ではこの対応が崩れる。点列による特徴づけが可能な空間には第一可算性という条件が関わっている。
連続写像の定義
位相空間 から への写像 が連続であるとは、 の任意の開集合 に対して となることをいう。これは大域的な定義である。
各点での連続性は次のように定式化される。 が点 で連続であるとは、 の任意の近傍 に対して、 となる の近傍 が存在することをいう。 が各点で連続であることと、上の大域的な意味で連続であることは同値である。
距離空間における点列による特徴づけ
距離空間 から への写像 について、次は同値である。
この同値性は距離空間の解析学において基本的であり、- 論法と点列の言葉を自由に行き来できることを保証する。
一般の位相空間での乖離
一般の位相空間では、点列の収束による連続性の特徴づけは成り立たない。具体的には「 ならば 」が成り立っても が連続とは限らない。
反例として、非可算集合 に補可算位相(空集合と補集合が可算な集合を開集合とする位相)を入れた空間を考える。この空間では、点列 が に収束するのは、ある番号以降で となるときに限られる。したがって点列による議論では位相構造を十分に捉えられない。
第一可算空間
位相空間 が第一可算公理を満たすとは、各点 が可算な近傍基を持つことをいう。すなわち、 の近傍全体の中に可算個の近傍 があって、 の任意の近傍 に対してある が存在する。
距離空間は第一可算である。実際、()が の可算近傍基を与える。
第一可算空間では、点列による連続性の特徴づけが復活する。すなわち、 が第一可算ならば、 が点 で連続であることと、 ならば が成り立つことは同値である。
ネットとフィルター
点列の代わりにネット(有向集合を添字とする一般化された列)やフィルターを用いれば、任意の位相空間で連続性を特徴づけられる。
が点 で連続であることは、 に収束する任意のネット に対して が に収束することと同値である。ネットは点列の自然な一般化であり、有向集合の非可算性を許すことで位相空間の一般論に対応できる。
フィルターによる定式化も同様に強力で、Bourbaki 流の位相空間論ではフィルターが基本的な道具として用いられる。