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点をどこまで足せば閉じるのか?閉包とクラトフスキーの 4 公理

に、 すれすれの点を全部足す。足し終わった集合が閉包 です。

言い方は 3 通りあります。 を含む最小の閉集合、 の触点全体、 とその集積点の和[2]。どれも同じ集合を指す。

閉包の定義

位相空間 の部分集合 に対し、 を含む閉集合すべての共通部分を と書きます。

閉集合は無限個の共通部分について閉じているので、 も閉集合。定義から、これが を含む最小の閉集合になります[2]。

自身が閉集合なら 。閉じているかどうかは、閉包で何も足されないかどうかで判定できる。

触点で言いかえる

点 が の触点であるとは、 のどの近傍 も と交わることをいいます[2]。

証明は対偶で書くと短い。 の近傍 で と交わらないものがあれば、 は を含む閉集合で を含まないので 。

逆に なら が の近傍で、 と交わりません[2]。

境界の上に乗っている点は、 に属さなくても触点になります。閉包が より大きくなるのは、この種の点を拾うためです。

集積点との関係

のどの近傍も、 自身を除いて の点を含むとき、 を の集積点と呼びます。集積点全体を と書く[2]。

触点は の点か集積点のどちらかです。 の点で集積点でないものは孤立点と呼ばれます。

なら、 は孤立点、 と は に属さない集積点。閉包は になります。

数直線で 4 つ確かめる

下の図は代表的な 4 つの集合について、もとの と閉包 を並べます。足された点だけが橙色。

整数全体は閉集合なので、閉包をとっても変わりません。閉じている集合は、すでに触点を全部抱えています。

足された点
と
無理数と端点
なし

足される点の個数は、 個から連続体の濃度まで幅があります。もとの集合の散らばり方がそのまま出る。

例:有理数の閉包は実数全体

をとります。どの実数 にも、その近傍に有理数が入る。

の近傍は を含み、この区間には必ず有理数があります。よってすべての実数が触点で、。

となる を稠密な集合と呼びます。 が で稠密だという言い方は、この閉包の等式そのもの。

例: が拾う 1 点

の閉包は です[2]。

のどんな近傍も、 を大きくとれば を含みます。だから は触点。

一方 の各点は孤立点です。 のまわりを十分小さくとれば、その点だけが残る。足される点はちょうど の 1 つだけになります。

クラトフスキーの 4 公理

閉包の操作そのものを出発点にして、位相を定義できます。1922 年のクラトフスキーは、次の 4 条件を公理に置きました[1]。

原論文では、この 4 つに I から IV の番号が振られ、以降のすべての議論がここから導かれます[1]。

集合 とこの 4 条件を満たす作用素が与えられたら、 となる を閉集合と呼び、その補集合を開集合とすればよい。開集合の 3 条件がちゃんと出てきます[3]。

開集合から出発する

族 に 3 条件を課す。現在の教科書はほぼこの形

閉包から出発する

作用素 に 4 条件を課す。同じ位相空間の概念が出る

どちらを土台にしても、行き着く先は同じ。位相空間という概念に入口が複数あるということです。

単調性は公理から出る

ならば 。この性質は公理に書かれていませんが、1 番目から導けます[1]。

は と同じ意味なので、公理から 。よって が出ます。

和については等号が成り立つのに、共通部分では成り立ちません。一般には包含だけ。

例:共通部分で等号が崩れる

、 をとります。 なので左辺は 。

右辺は 。左辺と右辺が食い違います。

閉包をとってから交わらせるほうが大きくなる。順番を入れかえられない操作です。

内部と境界を閉包で書く

に含まれる開集合すべての和を の内部といい、 と書きます[2]。

内部と閉包は補集合で入れかわります。

境界は 。閉包から内部を抜いた残りが境界という関係です。

なら 、、 になります。

閉包と補集合を繰り返す

閉包と補集合を交互に当てていくと、いくつ違う集合が作れるか。クラトフスキーはこの問いに答えを出しています[1]。

どんな集合から始めても、作れる集合は多くて 14 個。 と補集合の 2 種類しか使えないのに、途中で新しい集合が出ては止まります。

止まる理由は、補集合を挟んで閉包を 2 回当てた形が、1 回当てた形と一致するため。原論文の第 6 定理がそれです[1]。

実数直線の中には、ちょうど 14 個そろう集合が実際にあります。閉包と補集合という 2 つの操作しか使えないのに、途中の形がそこまで枝分かれする。

実数直線で の閉包はどれですか。

__RESULT__

はどんなに小さい近傍をとっても両側の区間と交わるので触点です。 と も同じ理由で触点。よって閉包は になります。1 番目は そのままで、穴も端点も残したまま。3 番目は を拾えていますが、端点の と を落としています。

補足

閉包は位相にしか依存しません。同じ位相を与える 2 つの距離は、どの集合に対しても同じ閉包を返します。

いっぽう を土台にすると話が変わる。 の中で の閉包をとっても は現れません。

閉包は の中で足りない点を拾う操作であって、 の外から点を持ってくる操作ではない。完備化や実数の構成が別の話として要るのは、そのためです。

参考文献

Casimir Kuratowski. *Sur l'opération 0 de l'Analysis Situs*. Fundamenta Mathematicae 3 (1922), 182–199.
Daniel Plaumann. *Topologie*. Skript zur Vorlesung, Universität Konstanz, Wintersemester 2014/15, §1.3.
Closure of a set. Encyclopedia of Mathematics.
閉包は $A$ を含む最小の閉集合であり、$A$ の触点全体であり、$A$ とその集積点の和でもあります。3 つの言い方が同じ集合に行き着く。$(0,1)$ なら端点だけ、$\{1/n\}$ なら $0$ の 1 点、$(0,1)$ の有理数なら区間がまるごと埋まり、整数全体なら何も足されません。1922 年のクラトフスキーは逆に、閉包の操作へ 4 つの条件を課して位相を定義しました。単調性がその公理から出ること、共通部分では等号が崩れること、内部と境界を閉包で書き直す関係、閉包と補集合を繰り返すと多くて 14 個で止まる話まで扱います。