外微分は微分形式に対して定義される演算で、多変数の微分積分学における勾配・回転・発散を統一的に扱う枠組みを与えます。
微分形式の復習
次元多様体 上の 次微分形式とは、各点 で 個の接ベクトルを受け取り実数を返す交代多重線型写像を滑らかに割り当てたものです。局所座標 において、 次微分形式 は
と表されます。ここで は滑らかな関数、 は外積(ウェッジ積)です。
外微分の定義
外微分 は 次微分形式を 次微分形式に写す線型演算子で、次の性質で特徴づけられます。
関数 (0 次形式)に対しては (通常の全微分)
ライプニッツ則: ( が 次のとき)
冪零性: (任意の に対して)
これらの性質から、 次形式 に対する外微分は
と計算されます。
具体的な計算例
における座標を とします。
0 次形式(関数)
に対して
これは勾配 に対応します。
1 次形式
に対して
これは回転 に対応します。
2 次形式
に対して
これは発散 に対応します。
冪零性とド・ラームコホモロジー
外微分の重要な性質として があります。すなわち任意の微分形式 に対して です。
この性質から、閉形式( を満たす )と完全形式( と書ける )の概念が生まれます。完全形式は必ず閉形式ですが、逆は一般には成り立ちません。閉形式と完全形式の「差」を測るのがド・ラームコホモロジーであり、多様体の位相的性質を反映します。
引き戻しとの可換性
滑らかな写像 に対し、外微分と引き戻しは可換です。
この性質により、外微分は座標の取り方によらない大域的な演算として定義されていることが保証されます。