テンソル場は接ベクトルと余接ベクトルを組み合わせた多重線型的な量であり、リーマン計量や曲率といった幾何学的対象を統一的に扱う枠組みを与えます。
テンソルの定義
点 における 型テンソルとは、 個の余接ベクトルと 個の接ベクトルを引数にとる多重線型写像
のことです。 型テンソル全体の集合を と書きます。
(1, 0) 型テンソル
余接ベクトル1つを引数にとり実数を返す。接ベクトルと同一視できる。
(0, 1) 型テンソル
接ベクトル1つを引数にとり実数を返す。余接ベクトルそのもの。
(0, 2) 型テンソル
接ベクトル2つを引数にとる双線型形式。リーマン計量はこの型。
(1, 1) 型テンソル
余接ベクトル1つと接ベクトル1つを引数にとる。線型写像 と同一視できる。
局所座標での表示
局所座標 において、 型テンソル は
と表されます。成分 は 個の実数です。
座標変換則
座標 から への変換において、 型テンソルの成分は
と変換されます。上付き添字(反変成分)には 、下付き添字(共変成分)には がかかります。
テンソル場
各点 に 型テンソルを滑らかに割り当てたものがテンソル場です。 上の 型テンソル場全体を と書きます。
型テンソル場はベクトル場
型テンソル場は1次微分形式
型対称テンソル場にはリーマン計量が含まれる
型テンソル場にはリーマン曲率テンソルが含まれる
テンソルの演算
テンソルには様々な演算が定義されます。
テンソル積
型テンソル と 型テンソル のテンソル積 は 型テンソルとなる。
縮約
型テンソルの上付き添字1つと下付き添字1つを「縮約」すると 型テンソルが得られる。成分で書くと のように同じ添字で和をとる。
対称化・反対称化
同じ種類の添字について対称または反対称な部分を取り出す操作。反対称化は微分形式の理論で重要。
計量によるテンソルの型の変換
リーマン計量 とその逆行列 を用いると、テンソルの型を変換できます。
これを添字の上げ下げといいます。この操作により、たとえば 型テンソルを 型に変換できます。