数列の極限を厳密に定義するのが ε-N 論法です。「限りなく近づく」という直観を、不等式を用いて正確に表現します。
数列の収束の定義
数列 が に収束するとは、次が成り立つことをいいます。
日本語で書くと「任意の正数 に対し、ある自然数 が存在して、 ならば 」となります。
このとき または と書きます。
定義の意味
は「許容する誤差」を表します。どんなに小さな を指定されても、十分先()に行けば と の差が 未満になる、というのがこの定義の内容です。
は に依存して決まります。 が小さいほど、一般に は大きくなります。
具体例: の収束
を証明します。
任意の をとります。アルキメデスの原理より となる自然数 が存在します。 のとき
よって定義を満たし、 です。
具体例: の収束
を証明します。
なので、先ほどと同様に となる をとれば、 で が成り立ちます。
収束しない数列
数列が収束しないことを示すには、定義の否定を使います。すなわち
がすべての に対して成り立つことを示します。
たとえば は収束しません。 とすると、任意の に対し、 となる がいくらでも大きくとれます。
極限の一意性
収束する数列の極限は一意です。 かつ ならば です。
証明:任意の に対し、十分大きな で かつ となります。三角不等式より
は任意なので です。
有界性
収束する数列は有界です。 ならば、ある が存在してすべての で となります。
証明: に対応する をとると、 で です。 とすればよいです。