一様収束とは?各点収束との違いから項別積分・微分・M 判定法まで解説
連続関数を並べて極限をとると、連続でない関数が現れることがあります。 を で考えると、各 はなめらかな曲線なのに、 の極限は でとびをもつ関数になります。
各点で値が近づくというだけの収束では、連続性も、積分や微分との順序交換も保証されません。これらを救うのが一様収束です。 を点によらず一様にとれる、という一段強い条件を課すと、極限の下でも関数の性質がよく保たれます。
各点収束の復習
関数列 が関数 に各点収束するとは、定義域の各点 で数列 が に収束することです。式で書けば、各 で が成り立つことをいいます。
- の言葉に直すと、次のようになります。各 と各 に対して、ある番号 が存在し、 ならば となる。
ここで は と の両方に依存してよい点が急所です。同じ でも、点によって「十分大きい 」の目安が違ってかまいません。
が点ごとに変わる例
を半開区間 で見ます。各点で なので、極限は という定数関数です。
を満たすのに必要な を点ごとに調べると、点によって大きく違います。 なら は で足ります。ところが では に が要り、 では が必要です。
を に近づけるほど必要な はいくらでも大きくなり、全部の点に一斉に効く は存在しません。この「一斉に効く があるか」の違いが、各点収束と一様収束を分けます。
一様収束の定義
関数列 が に一様収束するとは、上の を によらずにとれることをいいます。
任意の に対して、ある番号 が存在し、 ならば、すべての に対して となる。
各点収束では が ごとに変わってよいのに対し、一様収束では 1 つの がすべての に同時に効く。
決定的なのは と「すべての 」の登場順です。一様収束では を先に選び、そのあとで任意の を動かします。 が より先に決まるので、 は に依存できません。
量化子の順序を見る
2 つの定義を論理式で並べると、違いは量化子の順序だけだとわかります。
各点収束は次の形です。
一様収束は と を入れ替えた形です。
が の左に来ると、 は を知らずに決まらねばならず、条件が強くなります。数学では「 と の順序」がしばしば概念の強さを決めますが、これはその典型例です。
一様ノルムで言い換える
各点ごとの誤差 の、 全体での最大の広がりを 1 つの数にまとめます。
これを上限ノルム(一様ノルム)といいます。すると一様収束は、この 1 つの数列が に収束することと同値になります。
が一様収束することと、()は同値である。
すべての で となることは、その上限が 以下であることにほかならない。
証明を追う代わりに 1 つの数列の極限を計算すればよいので、この言い換えは実用上とても便利です。以降の判定はほとんどこれで済みます。
幅 の帯に入る
一様収束には見た目のイメージがあります。極限 のグラフの上下に幅 ずつの帯を描くと、 のすべての が丸ごとその帯の中に収まります。
<div class="uc-fig">
<svg viewBox="0 0 440 220" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="極限のグラフの上下に幅イプシロンの帯を描き、その中に f_n が収まる図">
<rect x="0" y="0" width="440" height="220" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<line x1="40" y1="185" x2="410" y2="185" stroke="#9aa3ad" stroke-width="1"/>
<line x1="40" y1="30" x2="40" y2="185" stroke="#9aa3ad" stroke-width="1"/>
<rect x="40" y="86" width="370" height="48" fill="#3468d6" fill-opacity="0.12"/>
<line x1="40" y1="110" x2="410" y2="110" stroke="#1b4fb8" stroke-width="2"/>
<line x1="40" y1="86" x2="410" y2="86" stroke="#3468d6" stroke-width="1" stroke-dasharray="5 3"/>
<line x1="40" y1="134" x2="410" y2="134" stroke="#3468d6" stroke-width="1" stroke-dasharray="5 3"/>
<path d="M 40 118 C 130 96, 200 128, 260 104 S 360 118, 410 100" fill="none" stroke="#e5484d" stroke-width="2.2"/>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12.5" fill="#1b1d22" stroke="#fafbfc" stroke-width="3.2" paint-order="stroke">
<text x="352" y="104" fill="#1b4fb8">f</text>
<text x="60" y="80" fill="#3468d6">f + ε</text>
<text x="60" y="152" fill="#3468d6">f − ε</text>
<text x="150" y="150" fill="#c93c41">f_n</text>
</g>
</svg>
</div>.uc-fig { margin: 0; text-align: center; }
.uc-fig svg { width: 100%; max-width: 440px; height: auto; }各点収束はこれより弱く、各点では帯に近づくものの、どこか一部分が帯からはみ出したまま をいくら大きくしても残る、という状況を許します。 では右端付近の盛り上がりがそのはみ出しでした。暗い配色のテーマではこの帯が見えにくいかもしれません。
一様収束すれば各点収束する
2 つの収束の関係は一方通行です。一様収束するなら各点収束します。すべての で成り立つ評価は、特定の 1 点でも成り立つからです。
逆は成り立ちません。 が反例で、各点では に収束するのに一様収束しません。
したがって一様収束は各点収束より真に強い条件です。以下では、この強さがどんな見返りをもたらすかを順に見ていきます。
一様収束の調べ方
判定は上限ノルムに集約されます。差 を の関数とみて、その絶対値の最大値を求め、 での挙動を見ます。
最大値は で微分して になる点を探すのが定石です。 に収束すれば一様収束、 に収束しなければ一様収束しない、と結論できます。
以下、この方法で例を 1 つずつ計算していきます。極限が不連続になる典型例から、連続な極限にすら一様収束しない例まで並べます。
例: は一様収束しない
を で考えます。各点極限は次の関数です。
は でとびをもち、不連続です。連続関数の列の極限が不連続になった以上、あとで見る定理により一様収束はありえません。
上限ノルムでも直接確かめられます。 では で、その上限は で に近づきます。
差の最大の広がりが によらず のままなので、一様収束しません。右端がいつまでも帯からはみ出し続けます。
例: 定義域を狭めると一様収束する
同じ でも、定義域を ()に狭めると事情が変わります。
この区間では で、上限は右端の です。
より なので、 上では に一様収束します。問題を起こしていたのは のすぐ手前の領域だったわけです。
一様収束するかどうかは関数の式だけでなく定義域にもよる、という点をこの例は示しています。
例: は区間の広さで決まる
を考えます。各点で です。
有界区間 上なら なので一様収束します。上限は右端でとり、 が に行くからです。
ところが定義域を 全体にとると話が違います。どんな でも を大きくすれば はいくらでも大きくなり、 です。各点では に収束するのに、一様収束はしません。
例: は一様収束する
振動が速くなる列でも、振幅が縮めば一様収束します。 を 全体で見ます。
という一様な上からの評価が効いて、 が何であっても差を同じ数で押さえられます。
全体という広い定義域でも一様収束します。あとで見るように、この列は微分すると事情が一変します。
例: 動く三角の山
一様収束しない様子を目で見るために、高さ の三角の山が左へ動いて消えていく列を作ります。区間 上で、 は で頂点 をとり、その外では とします。
各点 を固定すると、 が大きくなれば山は より左へ抜けるので に落ち着きます。 でも常に です。よって各点極限は です。
<div class="uc-fig">
<svg viewBox="0 0 440 210" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="高さ 1 の三角の山が左へ動いて幅を狭めていく関数列">
<rect x="0" y="0" width="440" height="210" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<line x1="40" y1="170" x2="415" y2="170" stroke="#9aa3ad" stroke-width="1"/>
<line x1="40" y1="30" x2="40" y2="170" stroke="#9aa3ad" stroke-width="1"/>
<line x1="40" y1="50" x2="415" y2="50" stroke="#c7ccd3" stroke-width="1" stroke-dasharray="4 4"/>
<polyline points="40,170 220,50 400,170" fill="none" stroke="#3468d6" stroke-width="2.2"/>
<polyline points="40,170 130,50 220,170" fill="none" stroke="#c93c41" stroke-width="2.2"/>
<polyline points="40,170 85,50 130,170" fill="none" stroke="#1b1d22" stroke-width="2"/>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12.5" fill="#1b1d22" stroke="#fafbfc" stroke-width="3.2" paint-order="stroke">
<text x="24" y="54">1</text>
<text x="226" y="66" fill="#3468d6">f_1</text>
<text x="136" y="66" fill="#c93c41">f_2</text>
<text x="90" y="66">f_4</text>
</g>
</svg>
</div>.uc-fig { margin: 0; text-align: center; }
.uc-fig svg { width: 100%; max-width: 440px; height: auto; }それでも山の高さは常に のままです。 が によらず残るので、一様収束しません。頂点は消える寸前まで高さ を保ち、これが帯からのはみ出しになります。
例:
もう一段きわどい列を見ます。 を で考えると、各点で に収束します。 を固定すれば分母が の速さで増えるからです。
上限を求めます。相加相乗平均から なので で、等号は すなわち で成り立ちます。
各点極限は という連続関数なのに、一様収束しません。極限が連続でも一様収束するとは限らない、という事実がここで表に出ます。ピークの位置 が原点へ逃げていくために、どの でも高さ の隆起が残ります。
一様収束と完備性
一様収束は、極限の関数を知らなくても判定できます。数列のコーシー列に対応する概念があるからです。
任意の に対してある が存在し、 ならばすべての で となること。
上の関数列が一様収束することと、一様コーシー列であることは同値である。
この事実には見返りがあります。 上の連続関数の全体に上限ノルムで距離を入れた空間 は、完備な距離空間になります。連続関数の一様コーシー列は必ず連続関数へ一様収束するからです。関数解析はこの完備性を土台に組み上がっていきます。
一様収束という概念が生まれるまで
一様収束は最初から明確だったわけではなく、誤りの訂正として練り上げられました。
コーシーが著書で「収束する連続関数の和は連続」と述べる。当時は収束の種類が区別されておらず、証明には見落としがあった。
アーベルがフーリエ級数の中に反例を見つけ、命題には例外があると指摘する。正しく成り立つのは一様収束の場合だと見抜いていた。
ザイデルとストークスがそれぞれ、収束の一様性という条件を独立に取り出す。各点収束と一様収束の区別がようやく言語化された。
コーシーが 1821 年に主張した命題は、一様収束を仮定すれば正しく、各点収束だけでは正しくありません。連続関数の列が不連続関数に各点収束する例( など)がまさに反例です。概念の分離が済むまで 20 年以上かかったこと自体が、この区別の微妙さを物語っています。
一様収束は連続性を保つ
一様収束の最初の見返りが連続性の保存です。各 が連続で が一様収束するなら、極限 も連続になります。
MIT OpenCourseWare の 18.100A 講義ノートでも、連続関数の一様極限が連続になることが基本定理として述べられています。各点収束ではこの結論は得られません。 の極限が不連続だったのがその証拠です。
言い換えると、連続関数の列が不連続関数に収束してしまったら、その収束は一様ではありえません。連続性は一様収束を否定する簡便な道具になります。
論法
連続性が保たれる理由は、 を 3 つに分ける有名な議論で説明できます。点 での の連続性、つまり が小さいことを示すのが目標です。
差を を経由して 3 つに分けます。
右辺の第 1 項と第 3 項は、一様収束のおかげで を大きくとれば によらず 未満にできます。 を固定したうえで、第 2 項は の連続性から を に近づければ 未満になります。合計が 未満です。
第 1 項を によらず押さえる箇所で一様性が本質的に効きます。各点収束では、 を に近づける途中で の要求が変わってしまい、この評価が破綻します。
対偶として使う
連続性の保存は、実際には対偶の形で使うことが多いです。極限が不連続なら一様収束しない、と読みます。
上限ノルムを計算しなくても、極限の関数を求めてそこにとびや角があるかを見るだけで、一様収束の否定が言えます。 の極限が でとぶこと、動く山の極限が原点でとぶ手前の挙動をもつことは、いずれも一様収束の否定材料でした。
連続性は必要条件です。一様収束するには極限が連続でなければならない。ただし十分条件ではありません。次にその反例を見ます。
極限が連続でも一様とは限らない
極限の連続性は一様収束を保証しません。すでに見た がそのはっきりした例です。
各点極限は という連続きわまりない関数なのに、 が残って一様収束しませんでした。連続な極限に各点収束するからといって、一様収束するとは言えないのです。
では極限の連続性に加えてどんな条件があれば一様収束が言えるのか。ここでディニの定理が登場します。
ディニの定理
ディニの定理は、いくつかの条件がそろうと各点収束から一様収束が自動的に従う、という珍しい主張です。
コンパクト集合 上の連続関数列 が、各点で単調に(各 で が単調増加または単調減少に)連続関数 へ各点収束するならば、収束は一様である。
単調性から、一度 以内に入った点は二度と外れない。コンパクト性から有限個の点での成立が全体に及ぶ。
Wikipedia の Dini’s theorem の項によれば、コンパクト性・各 の連続性・単調性・極限 の連続性という 4 つの仮定がすべて必要です。証明では、各点で が へ単調に減ることと、コンパクト集合上の開被覆から有限部分被覆がとれることを組み合わせます。
ディニの仮定はどれも落とせない
4 つの仮定はどれ 1 つ欠けても結論が壊れます。3 つの反例で確かめます。
コンパクト性を落とすと壊れます。 は 上で各点単調減少に連続関数 へ収束しますが、 はコンパクトでなく、一様収束しません。
単調性を落とすと壊れます。動く三角の山はコンパクト集合 上で連続関数 へ各点収束しますが、山が上下するので各点単調ではなく、一様収束しません。
極限の連続性を落とすと壊れます。 を 全体で見ると各点単調減少ですが、極限が で不連続なので、一様収束しません。Math Counterexamples のディニの定理まわりの解説も、この を代表的な反例として挙げています。
一様収束と積分の交換
一様収束の次の見返りは、極限と積分の順序交換です。 が 上で連続かつ へ一様収束するならば、次が成り立ちます。
左辺は「先に積分してから極限」、右辺は「先に極限をとってから積分」です。ふつうは一致する保証がなく、一様収束がその橋渡しをします。
証明は不等式 1 本
交換が許される理由は 1 行の評価に尽きます。積分の差を被積分関数の差で押さえます。
右端の が一様収束によって に行くので、左端も に行きます。区間の長さ が有限であることも効いています。無限区間ではこの一手が使えず、あとで見るように交換が崩れます。
交換して級数の和を積分する
交換定理は具体的な計算に使えます。 上で を項別に積分してみます。
この級数は に一様収束します( なので後述の M 判定法が使えます)。一様収束するので積分と和を交換できます。
左辺は です。無限和が閉じた値をもつことが、項別積分から難なく出てきます。
反例: 面積が残る山
一様収束が崩れると交換も崩れます。 上で を考えます。
各点では です。 を固定すれば指数関数の減衰が多項式の増加に勝つからです。よって右辺の です。左辺を計算します。
左辺は 、右辺は で、一致しません。各点収束だけでは交換できないことの、はっきりした証拠です。
山はどこへ消えたか
なぜ面積が残るのかは、グラフを見ると腑に落ちます。 は原点近くに鋭いピークをもち、 が大きいほど細く高くなります。
<div class="uc-fig">
<svg viewBox="0 0 440 220" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="n が大きいほど細く高くなるピークで、面積は一定に保たれる関数列">
<rect x="0" y="0" width="440" height="220" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<line x1="40" y1="180" x2="415" y2="180" stroke="#9aa3ad" stroke-width="1"/>
<line x1="40" y1="24" x2="40" y2="180" stroke="#9aa3ad" stroke-width="1"/>
<path d="M 40 145 Q 70 128, 110 138 T 200 160 T 300 172 T 405 177" fill="none" stroke="#1b1d22" stroke-width="2"/>
<path d="M 40 120 Q 78 92, 120 120 T 230 168 T 340 177 T 405 179" fill="none" stroke="#3468d6" stroke-width="2.2"/>
<path d="M 40 78 Q 62 40, 92 90 T 165 168 T 280 178 T 405 179" fill="none" stroke="#c93c41" stroke-width="2.2"/>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12.5" fill="#1b1d22" stroke="#fafbfc" stroke-width="3.2" paint-order="stroke">
<text x="96" y="34" fill="#c93c41">f_n(n 大)</text>
<text x="128" y="86" fill="#3468d6">f_n(n 中)</text>
<text x="150" y="132">f_n(n 小)</text>
</g>
</svg>
</div>.uc-fig { margin: 0; text-align: center; }
.uc-fig svg { width: 100%; max-width: 440px; height: auto; }ピークは高さ 程度まで伸び、 は に行かず発散します。一様収束しないことがこの高さから読み取れます。それでも山の下の面積はほぼ に保たれます。細くなる分を高さが補い、面積という積分値だけが取り残されるのです。
一様収束は十分条件にすぎない
交換定理の一様収束は十分条件であって必要条件ではありません。一様収束しなくても交換が成り立つ場合はあります。
上で を積分すると です。各点極限 は の 1 点を除いて なので 、両者は一致します。 は一様収束しないのに、積分と極限の交換はできてしまいました。
交換をより広く保証するのはルベーグ積分の収束定理です。一様収束は交換のための強力だが万能でない十分条件、と位置づけるのが正確です。
無限区間では一様でも壊れる
有界区間という仮定も落とせません。一様収束していても、区間が無限だと積分の交換が壊れます。
上で を考えます。 が によらず成り立つので、 は に一様収束します。一方それぞれの積分は一定です。
一様収束しているのに 、 でずれます。低い山が横に無限に広がり、面積 を保ったまま平らになるからです。証明の という評価で、区間の長さが無限だと が でも積が にならない事情が、そのまま反例になっています。
微分はもっと気むずかしい
積分がうまくいったので微分も、と期待すると裏切られます。 が一様収束しても、 は一般に成り立ちません。
微分は関数の細かい振動に敏感です。グラフ全体が極限に近くても、傾きは近いとは限りません。速く小さく波打つ列を思い浮かべると、値はほぼ でも傾きは激しく振れます。
一様収束が保証してくれるのは値の近さであって、傾きの近さではないのです。次の 2 つの反例が、この気むずかしさを別々の角度から示します。
反例: 一様収束しても導関数がずれる
を 上で考えます。 なので、 は に一様収束します。極限 の導関数は当然 です。
ところが導関数を計算すると、 の因子が現れて振幅が発散します。
では です。 は一様なのに、 は に収束するどころか発散します。値を縮める が、微分で を掛けられて に化けるのが原因です。
反例: なめらかな列が角をもつ関数へ
もっと極端なことも起こります。無限回微分できる関数の列が、微分できない関数へ一様収束します。 を で考えます。
各 は根号の中が正なので です。極限は で、 で角をもち微分できません。一様収束することは差を評価すればわかります。
なめらかな関数だけを一様に重ねた果てに、角のある関数が現れました。微分可能性は一様収束では保たれません。この現象を極限まで推し進めると、あとで見る「至る所微分できない連続関数」に行き着きます。
微分を保証する正しい定理
では何を仮定すれば微分と極限を交換できるのか。鍵は ではなく導関数 の側の一様収束です。
が で微分可能で、ある 1 点 で が収束し、導関数の列 がある関数 へ一様収束するとする。このとき はある へ一様収束し、 は微分可能で となる。
「導関数を一様収束させておけば」もとの関数の微分と極限を交換できる、という条件つきの定理。
結論は です。上の 2 つの反例は、いずれも が一様収束しない(発散する、収束しない)ために定理の外にありました。仮定はきちんと反例を排除しています。
収束は 1 点で足りる
定理の仮定で目を引くのは、もとの関数について要求されるのが「ある 1 点での収束」だけという点です。全域での各点収束すら最初は要りません。
導関数 の一様収束が強力で、そこから 自身の一様収束までが導かれるからです。1 点で高さを合わせ、あとは傾きの情報を積分して全体の一致を引き出す、という筋書きになっています。
積分の交換定理と役割が逆転している点も面白いところです。積分では の一様収束を仮定して積分値の収束を得ましたが、微分では の一様収束を仮定して の収束を得ます。
項別微分の実例
正しい定理を使えば、級数を項ごとに微分できます。 を考えます。
もとの級数は より収束します。項ごとに微分した級数 は、 と後述の M 判定法から一様収束します。
導関数の側が一様収束したので、定理により項別微分が正当化されます。
一様収束の確認さえ通れば、無限個の項の微分を機械的に足し合わせてよい、というわけです。
級数の一様収束
関数の無限和にも一様収束を定義できます。関数項級数 の収束は、部分和の列で定めます。
この が関数 へ一様収束するとき、級数 は に一様収束するといいます。関数列の理論がそのまま級数に移り、連続性の保存も項別積分・項別微分もこの枠組みで使えます。
問題は、部分和という複雑な対象の一様収束をどう確かめるかです。各項の大きさだけから判定できる強力な道具があります。
ワイエルシュトラスの M 判定法
M 判定法は、各項を によらない定数で押さえ、その定数の和が収束すれば一様収束を結論します。
すべての と で が成り立ち、かつ定数の級数 が収束するとする。このとき は一様収束し、かつ絶対収束する。
部分和の差 が で によらず押さえられ、一様コーシー列になる。
Wikipedia の Weierstrass M-test の項にある通り、判定に使うのは各項の上界 だけで、 は登場しません。関数の級数の問題を、数の級数 の収束という既知の問題に落とし込むのが、この判定法の値打ちです。
例:
M 判定法を使ってみます。 を 全体で考えます。
各項は と押さえられ、 の和 は収束します。よって級数は 全体で一様収束します。
各項は連続なので、一様収束から和も連続関数になります。無限個の連続関数を足しても連続性が保たれる、という保証がただちに得られました。
例:
もう 1 つ。 を 全体で考えます。
分母は なので です。ふたたび が収束するので一様収束します。
さらに項別微分の定理も使えます。微分した級数 も有界区間で一様収束するので、和は微分可能でこの級数が導関数になります。M 判定法は連続性だけでなくなめらかさの議論にも橋渡しします。
M 判定法が届かないところ
M 判定法は万能ではありません。絶対収束を要求するので、打ち消し合い(相殺)で収束する級数は捉えられません。
上で を考えます。各項の上限は で、 は発散するので M 判定法は使えません。
それでもこの級数は で一様収束します。各 で交代級数になり、項 が について へ減るので、余りが最初に落とす項で押さえられます。
上界が によらないので一様収束です。相殺による一様収束は、各項の絶対値しか見ない M 判定法の死角にあります。こういう級数にはディリクレやアーベルの判定法を使います。
ワイエルシュトラス関数
M 判定法の劇的な応用が、至る所連続なのに至る所微分できない関数です。ワイエルシュトラスが 1872 年に与えました。
、 を奇数の正整数とし、 を満たすとき、 は 上で連続なのにどの点でも微分できない。
連続性は M 判定法から一瞬で出ます。 で、 より が収束するので、級数は一様収束します。連続関数の一様極限だから は連続です。ミネソタ大学の Jeff Calder による講義ノートがこの筋道と、至る所微分不可能性の証明を丁寧に追っています。
部分和はふつうの連続関数で、項数を増やすほど細かいギザギザが乗っていきます。
import numpy as np
# a=1/2, b=13 は ab=6.5 で ab > 1 + 3π/2 を満たす(b は奇数)
def weierstrass(x, a=0.5, b=13, terms=20):
total = np.zeros_like(x)
for n in range(terms):
total += a**n * np.cos(b**n * np.pi * x)
return total
x = np.linspace(-1, 1, 4000)
y = weierstrass(x)
# どの倍率に拡大しても同じようなギザギザが現れる(自己相似・フラクタル)
print(y.min(), y.max())拡大しても同じ形のギザギザが現れる自己相似性をもち、フラクタルの初期の例になっています。連続な関数を一様に重ねた極限が、どこにも接線をもたない曲線になる。一様収束が連続性は保っても微分可能性は保たない、という事実の究極の姿です。
なら微分できてしまう
なぜ条件 が要るのか。ここに項別微分の定理がそのまま効いています。
部分和を形式的に微分すると です。もし なら、 と押さえられ、 が収束するので、導関数の列が一様収束します。
導関数が一様収束すれば、微分の交換を保証する定理から は微分可能になってしまいます。至る所微分できない関数を作るには、少なくとも が必要だ、というわけです。Calder のノートによれば、ハーディはのちに という条件まで緩めても微分不可能性が成り立つことを示しました。
微分の定理で「導関数の一様収束」を仮定した意味が、この関数ではっきりします。仮定が成り立つ側()ではなめらかで、破れる側( が大きい)では至る所微分不可能。定理の境界そのものが、関数の性質の境界になっています。
べき級数は内部で一様収束する
べき級数 は、収束半径 の内側では素直にふるまいます。()を満たす閉区間の上で一様収束します。
理由は M 判定法です。 なら が収束するので、 ととれば です。収束半径の内側に閉じ込めれば、べき級数は一様収束の恩恵をすべて受けられます。
したがって収束円の内部では、べき級数は連続で、項別積分も項別微分も自由にできます。多項式のように扱ってよい、という安心が保証されます。
端まで含めると一様とは限らない
注意すべきは「閉区間 で」という限定です。収束区間の内部の各点では一様収束しますが、開区間 全体で一様収束するとは限りません。
たとえば ()は、 で和が発散するため 全体では一様収束しません。 に下がればどこでも一様収束します。
この「内部では一様、端はあやしい」という切り分けが、次のアーベルの定理の舞台です。端点での挙動は特別な注意を要します。
項別積分で を作る
内部での一様収束を使って、対数の級数を導きます。 で等比級数から出発します。
右辺は ()を含む閉区間で一様収束するので、項別に積分できます。
一様収束のおかげで、無限和の積分を項ごとの積分に置き換えられました。この等式は今のところ で成り立ちます。
項別積分で を作る
同じ手口で逆正接関数の級数も出ます。 で次の等比級数を使います。
閉区間上で一様収束するので項別に積分できます。
これも での等式です。2 つの級数はどちらも で交代級数として収束しますが、 は収束半径のちょうど端にあたり、内部の一様収束はそこまで届きません。端で等式が生き残るかは別の議論が要ります。
アーベルの定理
端点をすくい上げるのがアーベルの定理です。内部での値の極限が、端点での級数の値に一致することを保証します。
べき級数 が で収束し、端点での級数 も収束するとする。
このとき が成り立つ。内部での値の極限が、端点での級数の和にちょうど一致する。
コネチカット大学の Keith Conrad による解説ノートでは、部分和分(アーベル変形)を使ってこの定理が証明されています。要は、端点で級数が収束しさえすれば、べき級数は端まで連続につながる、ということです。内部で作った等式を端点へ延長する道具になります。
を得る
アーベルの定理を の級数に当てます。 での級数 は交代級数として収束します。
条件がそろったので、 の極限をとれます。 は で連続だから、極限は です。
内部でしか保証されていなかった等式が、アーベルの定理によって端点 まで延びました。有名な交代調和級数の和が、こうして正当化されます。
を得る
同じことを の級数で行います。 での級数 は交代級数として収束します。
アーベルの定理から の極限をとると、 に等しくなります。
ライプニッツの級数と呼ばれる等式です。項別積分で の等式を作り、端点でアーベルの定理を使う、という 2 段構えで円周率の級数が出てきました。
アーベルの定理は逆にできない
アーベルの定理は「端点で級数が収束するなら」という仮定を外せません。内部の極限が存在するだけでは、端点で級数が収束するとは言えないからです。
を で展開すると です。 で と極限は存在します。ところが を代入した級数は で、発散します。
極限 が存在しても、端点の級数はそこに収束しません。アーベルの定理を使う前に、端点での収束を独立に確かめる必要がある、という戒めになっています。Conrad のノートもこれを反例として挙げています。
一様収束と一様連続は別物
名前が似ているので混同されますが、一様収束と一様連続は無関係な概念です。
一様連続は 1 つの関数の性質で、 に対する を定義域全体で共通にとれることをいいます。一様収束は関数の列の性質で、 に対する を定義域全体で共通にとれることをいいます。「一様」はどちらも「点によらず共通にとれる」を指しますが、共通にとる対象が と で別物です。
各 が一様連続でも列が一様収束するとは限らず、逆も成り立ちません。名前の一致に引きずられないよう注意します。
広義一様収束
実用でよく使うゆるめた収束も紹介しておきます。定義域のすべてのコンパクト部分集合の上で一様収束することを、広義一様収束(コンパクト一様収束)といいます。
べき級数がまさにこの形でした。 全体では一様収束しなくても、内部のどのコンパクト集合 の上でも一様収束します。連続性や項別積分・項別微分といった結論は局所的な性質なので、広義一様収束があれば内部の各点で成り立たせるのに十分です。
全体での一様収束は強すぎることが多く、広義一様収束くらいがちょうどよい、という場面は複素関数論をはじめ随所に現れます。
理解の確認
最後に 1 問。一様収束の効きめと限界を思い出してください。
連続関数の列 が に一様収束するとき、必ず成り立つのはどれですか。
- は微分可能である
- は連続である
- は に収束する
- は絶対収束する










一様収束は連続性を保つので f は連続です。一方、微分可能性は保たれず(x2+1/n→∣x∣ が反例)、導関数の収束も別途 fn′ の一様収束を仮定しなければ言えません。