偏微分と全微分とは|定義・計算例・接平面・勾配
偏微分は多変数関数を 1 つの変数だけについて微分したもので、全微分はその関数を点のまわりで平面によって近似することです。
2 つは別の概念です。偏微分がすべて存在しても全微分できるとはかぎらず、この食い違いが多変数の微分の要になります。
以下では偏微分の定義と計算から始め、高階偏導関数、全微分、連鎖律、勾配と方向微分までを扱います。計算例は 1 つずつ節を分け、要になる主張には証明を付けます。
直観:曲面を切った断面の傾き
2 変数関数 のグラフは空間の中の曲面です。1 変数のときのように傾きを測ろうとすると、どちらの向きの傾きなのかを決めなければなりません。
いちばん素朴なのは、変数を 1 つだけ動かすことです。 を に固定すると だけの関数が残り、その曲線の接線の傾きを考えられます。
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偏微分の定義
を 2 変数関数とします。点 における についての偏微分係数は、次の極限で定義されます。
分子で動いているのは第 1 引数だけで、 は のまま固定されています。 についても同じように定義します。
各点に偏微分係数を対応させた関数が偏導関数です。、、 などと書きます。
計算例:多項式の偏微分
の偏導関数を求めます。
で偏微分するときは を定数とみなします。 は 倍された なので になり、 は定数なので消えます。
で偏微分するときは を定数とみなします。今度は が になり、 が になります。
やっていることは 1 変数の微分そのもので、新しい計算規則は要りません。
計算例:積と合成が混ざる場合
を考えます。 については積の微分と合成関数の微分の両方が要ります。
を で微分すると、指数の中身 の 微分が なので になります。
については が定数の役をします。指数の中身 の 微分は です。
計算例:底と指数の両方に変数がある場合
(ただし )は、 から見れば冪関数、 から見れば指数関数です。固定する変数を変えるたびに関数の型そのものが変わります。
を固定すれば は冪関数なので、指数を前に下ろします。
を固定するときは と書き直すのが確実です。 の指数関数になり、係数として が出ます。
2 つの答えが似ていないのは、片方が冪の微分、もう片方が指数の微分だからです。どちらだったか迷ったら、指数関数の形に直せば間違えません。
計算例:距離関数の偏微分
原点からの距離 は、このあと何度も出てきます。 で偏微分しましょう。
平方根のまま微分してもよいのですが、 の両辺を で偏微分するほうが速いです。左辺は合成関数として になります。
と についても同じ形です。3 つ並べたベクトル は長さが で、原点から外を向いています。
高階偏導関数
偏導関数をさらに偏微分すると、2 階の偏導関数が得られます。2 変数なら微分する順序の組み合わせで 4 種類あります。
で 2 回微分したもの。分数の記法では と書きます。
で微分してから で微分したもの。 と書きます。
で微分してから で微分したもの。 と書きます。
で 2 回微分したもの。 と書きます。
添字の記法と分数の記法では、読む向きが逆になります。 は左から読んで「 のあと 」、 は右から読んで「 のあと 」です。
どちらの記法でも先に で微分している、と押さえておけば取り違えずにすみます。
計算例:2 階偏導関数を求める
の 2 階偏導関数を全部求めます。まず 1 階です。
これらをもう一度微分します。 は で微分しても変わらず、 と が で微分するたびに入れ替わります。
と が一致しました。さらに となっていて、この関数はラプラス方程式をみたします。
計算例: がみたす方程式
3 変数で とおき、 を の範囲で考えます。 を計算しましょう。
さきほど求めた を使います。
これをもう一度 で微分します。商の微分を使い、 の 微分が であることに注意します。
と でも同じ形になるので、3 つ足すと分子に が現れます。
は原点を除いてラプラス方程式をみたすわけです。点電荷の静電ポテンシャルや質点の重力ポテンシャルがこの形をしているのは、この計算の裏返しにほかなりません。
シュワルツの定理
と はいつも一致するわけではありません。一致を保証するのは連続性です。
と が点 の近傍で存在して で連続ならば、次が成り立ちます。
シュワルツの定理、あるいはクレローの定理と呼ばれます。実用上はほとんどの関数が条件をみたすので、順序を気にせず計算できます。
ただし「いつでも交換できる」と覚えるのは危険です。次の節で、条件が崩れると本当に食い違うことを見ます。
計算例: と が食い違う例
ペアノが挙げた次の関数を考えます。
原点以外で を計算します。積の微分と商の微分をていねいに実行すると、次の形にまとまります。
ここで とおくと、分子は 、分母は ですから です。
原点では なので となり、これも に を入れた値と合っています。つまり が 軸上のすべての点で成り立ちます。
この は をみたします。 と の役を入れ替えれば が出て、もう一方の値がわかります。
2 つは一致しません。 自身は連続で 1 階の偏導関数も連続なのですが、2 階の偏導関数が原点で連続にならないため、シュワルツの定理の条件が崩れています。
直観:接平面があるということ
偏微分が見ているのは、座標軸に平行な 2 方向だけです。曲面が点のまわりで平面のように見えるかどうかは、それだけでは決まりません。
方向と 方向の接線が 2 本引ければ、その 2 本を含む平面は 1 つに定まります。
<svg viewBox="0 0 700 360" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" style="max-width:100%;height:auto;display:block;margin:0 auto"><path d="M350 51 L365 45 L380 41 L395 39 L410 40 L425 43 L440 49 L455 56 L470 66 L485 79 L500 94 L515 111 L530 130 L545 152 L560 176 L575 202 L590 231" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M310 51 L325 44 L340 39 L355 37 L370 37 L385 39 L400 43 L415 50 L430 59 L445 71 L460 85 L475 101 L490 120 L505 141 L520 164 L535 189 L550 217" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M270 63 L285 55 L300 49 L315 46 L330 45 L345 47 L360 50 L375 56 L390 65 L405 75 L420 88 L435 104 L450 121 L465 141 L480 164 L495 188 L510 215" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M230 87 L245 78 L260 72 L275 68 L290 66 L305 66 L320 69 L335 74 L350 82 L365 91 L380 104 L395 118 L410 135 L425 154 L440 176 L455 199 L470 226" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M190 123 L205 113 L220 106 L235 101 L250 98 L265 98 L280 100 L295 104 L310 111 L325 120 L340 131 L355 145 L370 161 L385 179 L400 199 L415 222 L430 248" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M150 171 L165 161 L180 152 L195 146 L210 143 L225 141 L240 143 L255 146 L270 152 L285 160 L300 170 L315 183 L330 198 L345 216 L360 235 L375 257 L390 282" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M110 231 L125 220 L140 211 L155 204 L170 199 L185 197 L200 197 L215 200 L230 205 L245 212 L260 222 L275 233 L290 248 L305 264 L320 283 L335 304 L350 328" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M350 51 L335 50 L320 50 L305 52 L290 56 L275 61 L260 68 L245 77 L230 87 L215 99 L200 113 L185 128 L170 146 L155 164 L140 185 L125 207 L110 231" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M390 40 L375 37 L360 37 L345 38 L330 41 L315 45 L300 51 L285 59 L270 69 L255 80 L240 93 L225 107 L210 124 L195 142 L180 161 L165 183 L150 206" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M430 45 L415 42 L400 40 L385 40 L370 42 L355 46 L340 51 L325 58 L310 67 L295 77 L280 89 L265 103 L250 118 L235 136 L220 154 L205 175 L190 197" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M470 66 L455 62 L440 60 L425 59 L410 61 L395 63 L380 68 L365 74 L350 82 L335 91 L320 102 L305 115 L290 130 L275 146 L260 164 L245 184 L230 205" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M510 105 L495 100 L480 97 L465 95 L450 95 L435 97 L420 101 L405 106 L390 113 L375 122 L360 132 L345 144 L330 158 L315 173 L300 190 L285 209 L270 229" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M550 160 L535 154 L520 150 L505 147 L490 147 L475 148 L460 151 L445 155 L430 161 L415 169 L400 178 L385 189 L370 202 L355 217 L340 233 L325 251 L310 270" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M590 231 L575 225 L560 220 L545 216 L530 215 L515 215 L500 217 L485 220 L470 226 L455 232 L440 241 L425 251 L410 263 L395 277 L380 292 L365 309 L350 328" fill="none" stroke="#dcdcdc" stroke-width="1"/><path d="M262 32 L398 35 L262 163 L126 161 L262 32" fill="#a8d2f5" fill-opacity="0.4" stroke="#1b81e0" stroke-width="1.5"/><path d="M194 96 L330 99" fill="none" stroke="#e0761b" stroke-width="2.5"/><path d="M330 33 L194 162" fill="none" stroke="#e0761b" stroke-width="2.5"/><circle cx="262" cy="98" r="4" fill="#e0761b"/><text x="339" y="104" font-size="13" fill="#e0761b">x 方向の接線</text><text x="185" y="176" font-size="13" fill="#e0761b" text-anchor="end">y 方向の接線</text><text x="350" y="346" font-size="12" fill="#8a8a8a" text-anchor="middle">2 本の接線が平面を決めます。その平面が曲面に張りついているとき全微分可能です</text></svg>問題は、その平面が本当に曲面へ張りついているかどうかです。どの向きから点へ近づいても、曲面と平面のずれが距離より速く へ向かうこと。これを要求するのが全微分可能性です。
全微分の定義
が点 で全微分可能であるとは、次をみたす線型写像 が存在することをいいます。
末尾の はランダウの記号で、その項を で割ったものが で に行く、という意味です。
より真に速く小さくなるという条件。単に に近づくだけでは足りません。
このとき は一意に決まり、その係数は偏微分係数になります。
なぜそうなるかは定義から読み取れます。 とおくと、 の線型性から なので、差分商が に収束します。これは の定義そのものです。
全微分可能なら連続で偏微分可能である
定義から 2 つのことがすぐ従います。以下 と書きます。
まず連続性です。 は線型なので の形で押さえられ、剰余項も ですから、 で両方とも に行きます。
したがって となり、 は で連続です。
偏微分可能性は前の節で見たとおりで、 と が存在します。実はもっと強いことがいえます。
単位ベクトル を取り、、 とおきましょう。このとき です。
すべての向きについて微分が存在し、その値が で与えられます。全微分可能性は、向きごとの微分が向きについて線型になることまで要求している、と読めるわけです。
計算例:定義から全微分可能を確かめる
が点 で全微分可能であることを、定義に戻って確かめます。
増分を展開しましょう。
なので、1 次の部分は 、残りは です。 と に を入れた と に、確かに一致しています。
あとは剰余が であることを見るだけです。 かつ を使います。
剰余は より速く小さくなりました。 は で全微分可能です。
接平面の方程式
全微分可能ならば、曲面 は点 で接平面を持ちます。定義に現れた 1 次の部分が、そのまま平面の式です。
1 変数の接線 を素直に拡張した形になっています。
計算例:接平面を求める
の、点 の上での接平面を求めます。
必要なのは値と 2 つの偏微分係数です。、 より 、 より となります。
近さを確かめておきましょう。 での真の値は 、接平面の値は です。
ずれは で、これは にちょうど等しくなっています。2 次の項がそのまま誤差として残る、という定義どおりの姿です。
全微分の式
接平面の式で を 、 を と書き、 の変化分を と書くと、見慣れた形になります。
これを全微分といいます。 と は無限に小さい量ではなく、独立に値を取れる変数と読むのが安全です。
計算例:線型近似で値を見積もる
をおよそで求めます。 とおき、計算しやすい からのずれと見ましょう。
です。偏導関数は と なので、この点では と になります。
と を入れます。
したがって です。真の値は で、誤差は ほどにおさまっています。
偏微分可能でも全微分可能とはかぎらない
ここからが多変数に特有のところです。次の関数を見ます。
軸の上では 、 です。定数関数を微分することになるので となり、偏微分は両方とも存在します。
ところが直線 に沿って原点へ近づくと、 のまま動きません。 は原点で連続ですらないのです。
連続でないものが全微分可能なはずはありません。偏微分の存在は、全微分可能性はおろか連続性さえ保証しない、ということになります。
直観:2 本の直線しか見ていない
なぜこんなことが起きるのか。偏微分が調べているのは、点を通る 2 本の直線の上での挙動だけだからです。
軸に平行な 2 方向だけを見る。ほかの向きで何が起きていても関知しない
あらゆる向きからの近づき方をまとめて見る。近づき方によらず同じ平面で近似できることを要求する
さきほどの例は、2 本の軸の上でだけ値を に潰し、その間の領域では へ持ち上げてあります。軸しか見ていない偏微分に、この持ち上がりは映りません。
計算例:連続で方向微分がすべてあっても全微分できない
連続性を足せば十分かというと、そうでもありません。次の関数がそれを示します。
まず連続です。 から が出るので、原点へ近づけば に収束します。
次に、原点でのあらゆる向きの微分を求めます。単位ベクトル について を使うと、分母がきれいに約せます。
が残らないので、すべての向きで微分が存在し、値は です。
ここに と を入れると、どちらも になります。つまり です。
もし全微分可能なら、向きごとの微分は について線型でなければなりません。ところが を入れると で、 になりません。
連続で、しかもあらゆる向きに微分できる。それでも全微分可能とはかぎらないのです。
原点で偏微分が両方とも存在し、原点で連続でもある関数は、原点で全微分可能ですか。
- 全微分可能である
- 全微分可能とはかぎらない
- 偏微分が存在する時点で全微分可能である
偏導関数が連続なら全微分可能である
反例ばかりでは使えません。実用的な十分条件があります。
と が点 の近傍で存在して で連続ならば、 は で全微分可能です。この条件をみたす関数を 級といいます。
証明しましょう。増分を、 だけ動かす部分と だけ動かす部分に分けます。
第 2 項は を に固定したままなので、1 変数の平均値の定理が使えます。 と の間のある について、次が成り立ちます。
第 1 項は を に固定しているので、同じく平均値の定理から、 と の間のある について次を得ます。
目標の 1 次式 を引いた残りを と書きます。
のとき かつ です。 と の連続性から、角括弧の中はどちらも へ行きます。
と を使って、剰余を で割りましょう。
は です。したがって は全微分可能で、証明が終わりました。
なお、この条件はさらに弱められます。増分の分け方を次のように変えてみましょう。
第 1 項には平均値の定理と の連続性を使い、第 2 項には の定義をそのまま当てはめられます。 は で存在するだけでよく、連続性は片方の偏導関数に要求すれば足ります。
逆は成り立たない
級は十分条件であって必要条件ではありません。偏導関数が連続でなくても全微分可能な関数があります。
原点での全微分可能性は簡単に出ます。 と を候補にすると、剰余は 自身になります。
から が出ます。これは にほかなりません。
一方、原点以外での を計算すると、次の項が現れます。
第 1 項は原点で に行きますが、第 2 項は行きません。 が 以下におさまる一方、 が原点へ近づくにつれて激しく振動するためです。
つまり は原点で全微分可能なのに、 は原点で連続ではありません。この例は Math Insight が図つきで詳しく扱っています。
ここまでの関係を並べると、強さの順は次のようになります。
偏導関数が連続( 級)
全微分可能
連続かつあらゆる向きに微分可能
どの矢印も逆向きには成り立ちません。左から右へ落ちるたびに、反例が 1 つずつ用意されている、と思ってください。
直観:変化の寄与を足し合わせる
で、 と がともに時刻 の関数だとします。 を少し動かすと と が動き、その結果として が動きます。
<svg viewBox="0 0 700 240" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" style="max-width:100%;height:auto;display:block;margin:0 auto"><defs><marker id="chain-arrow" viewBox="0 0 10 10" refX="9" refY="5" markerWidth="7" markerHeight="7" orient="auto"><path d="M 0 0 L 10 5 L 0 10 z" fill="#9a9a9a"/></marker></defs><line x1="143.2" y1="113.9" x2="313.9" y2="68.9" stroke="#9a9a9a" stroke-width="1.4" marker-end="url(#chain-arrow)"/><line x1="143.2" y1="126.1" x2="313.9" y2="171.1" stroke="#9a9a9a" stroke-width="1.4" marker-end="url(#chain-arrow)"/><line x1="363.2" y1="68.1" x2="533.9" y2="113.1" stroke="#9a9a9a" stroke-width="1.4" marker-end="url(#chain-arrow)"/><line x1="363.2" y1="171.9" x2="533.9" y2="126.9" stroke="#9a9a9a" stroke-width="1.4" marker-end="url(#chain-arrow)"/><circle cx="120" cy="120" r="24" fill="#ffffff" stroke="#c9c9c9" stroke-width="1.2"/><text x="120" y="126" font-size="17" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle" font-style="italic">t</text><circle cx="340" cy="62" r="24" fill="#ffffff" stroke="#c9c9c9" stroke-width="1.2"/><text x="340" y="68" font-size="17" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle" font-style="italic">x</text><circle cx="340" cy="178" r="24" fill="#ffffff" stroke="#c9c9c9" stroke-width="1.2"/><text x="340" y="184" font-size="17" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle" font-style="italic">y</text><circle cx="560" cy="120" r="24" fill="#ffffff" stroke="#c9c9c9" stroke-width="1.2"/><text x="560" y="126" font-size="17" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle" font-style="italic">z</text><text x="222" y="79" font-size="13" fill="#8a8a8a" text-anchor="middle">dx / dt</text><text x="222" y="177" font-size="13" fill="#8a8a8a" text-anchor="middle">dy / dt</text><text x="458" y="79" font-size="13" fill="#8a8a8a" text-anchor="middle">∂f / ∂x</text><text x="458" y="177" font-size="13" fill="#8a8a8a" text-anchor="middle">∂f / ∂y</text><text x="350" y="226" font-size="12" fill="#8a8a8a" text-anchor="middle">t から z へ行く道が 2 本あります。連鎖律は道ごとの寄与を足し合わせます</text></svg>から へ至る道は 2 本あります。 を経由する道と を経由する道で、それぞれの寄与は道に沿った変化率の積になります。
全微分可能であれば、 の変化はこの 2 つの寄与の和で書けます。これが連鎖律です。
連鎖律
が全微分可能で と が微分可能ならば、 は微分可能で、次が成り立ちます。
の全微分可能性が要ることに注意してください。偏微分の存在だけでは足りません。
さきほどの で、、 と動かしてみましょう。 なので左辺は です。
一方、右辺は と がどちらも なので になります。 で連鎖律が破れているわけです。
媒介変数が 2 つある場合も同じ形です。 と のとき、 について次のようになります。
についても同じ形です。図でいえば、 から へ至る道がやはり 2 本ある、ということになります。
計算例:1 つの媒介変数で動かす
、、 とします。単位円の上を回りながら の値を追うことになります。
必要な材料を並べます。、、、 です。
代入してから微分しても確かめられます。 を直接微分すると となり、同じ式です。
この例では直接微分するほうが速いくらいですが、 の形が具体的に書けない場合には連鎖律しか手がありません。
計算例:極座標に移す
、 とおいて、 を と の関数と見ます。連鎖律をそのまま当てはめましょう。
この 2 つから と を消すと、きれいな関係が現れます。第 1 式を 2 乗し、第 2 式を で割ってから 2 乗して、足しましょう。
が効いて交差項が消えます。右辺は座標の取り方によらない量で、あとで出てくる勾配の長さの 2 乗にほかなりません。
計算例:陰関数の微分
が を の関数として定めているとします。 について解かなくても を求められます。
の両辺を で微分します。左辺には連鎖律が使えて、 が 自身と の 2 経路で効きます。
のところで解けば、次の公式が得られます。
デカルトの葉線 で試しましょう。 とおくと 、 です。
点 では なので、 になります。この曲線が直線 について対称であることと、きちんと合っています。
方向微分
軸方向に限らない一般の向きでも、変化率を測れます。単位ベクトル について、次を方向微分といいます。
なら 、 なら です。偏微分は方向微分の特別な場合、という位置づけになります。
を単位ベクトルに限るのは、単位距離あたりの変化率にそろえるためです。長さを 倍すれば値も 倍になってしまいます。
勾配ベクトル
偏導関数を成分に並べたベクトルを勾配といいます。
記号 はナブラと読みます。3 変数なら成分が 3 つに増えるだけで、考え方は変わりません。
勾配は関数からベクトル場を作る操作です。各点に 1 本ずつベクトルが生えている絵を思い浮かべてください。
方向微分と勾配の関係
が全微分可能ならば、方向微分は勾配との内積で書けます。
これは前に証明したことの言い換えです。全微分の定義に 、 を入れると、極限が に一致するのでした。
この等式には全微分可能性が要ります。偏微分が存在するだけでは成り立ちません。 の例では、左辺が で右辺が でした。
計算例:方向微分を求める
の、点 における 方向の微分を求めます。
は多項式なので偏導関数はどこでも連続で、 級です。したがって全微分可能で、内積の公式が使えます。
より 、 より です。
が単位ベクトルであること()を確かめてから使うのが安全です。
直観:なぜ勾配が最急増加方向なのか
内積の公式から、最も急な向きがすぐ求まります。 としましょう。
を と のなす角とすると、 が単位ベクトルなので内積は次の形になります。
が最大になるのは 、つまり が と同じ向きのときです。そのときの値は になります。
<svg viewBox="0 0 700 300" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" style="max-width:100%;height:auto;display:block;margin:0 auto"><defs><marker id="grad-arrow" viewBox="0 0 10 10" refX="9" refY="5" markerWidth="7" markerHeight="7" orient="auto"><path d="M 0 0 L 10 5 L 0 10 z" fill="#1b81e0"/></marker></defs><ellipse cx="340" cy="150" rx="55" ry="38.9" fill="none" stroke="#c9c9c9" stroke-width="1"/><ellipse cx="340" cy="150" rx="77.8" ry="55" fill="none" stroke="#c9c9c9" stroke-width="1"/><ellipse cx="340" cy="150" rx="95.3" ry="67.4" fill="none" stroke="#c9c9c9" stroke-width="1.8"/><ellipse cx="340" cy="150" rx="112.7" ry="79.7" fill="none" stroke="#c9c9c9" stroke-width="1"/><line x1="435.3" y1="150" x2="479.3" y2="150" stroke="#1b81e0" stroke-width="2" marker-end="url(#grad-arrow)"/><circle cx="435.3" cy="150" r="3" fill="#1b81e0"/><line x1="384.7" y1="90.5" x2="400.2" y2="49.3" stroke="#1b81e0" stroke-width="2" marker-end="url(#grad-arrow)"/><circle cx="384.7" cy="90.5" r="3" fill="#1b81e0"/><line x1="336" y1="72.2" x2="433.4" y2="108.8" stroke="#e0761b" stroke-width="2"/><text x="332.3" y="62.8" font-size="13" fill="#e0761b" text-anchor="end">接線</text><text x="408.2" y="53.3" font-size="14" fill="#1b81e0">∇f</text><line x1="275" y1="100.7" x2="250.8" y2="64" stroke="#1b81e0" stroke-width="2" marker-end="url(#grad-arrow)"/><circle cx="275" cy="100.7" r="3" fill="#1b81e0"/><line x1="255.9" y1="181.6" x2="220.7" y2="208" stroke="#1b81e0" stroke-width="2" marker-end="url(#grad-arrow)"/><circle cx="255.9" cy="181.6" r="3" fill="#1b81e0"/><line x1="387.6" y1="208.3" x2="404.2" y2="249" stroke="#1b81e0" stroke-width="2" marker-end="url(#grad-arrow)"/><circle cx="387.6" cy="208.3" r="3" fill="#1b81e0"/><text x="217.3" y="155" font-size="13" fill="#8a8a8a" text-anchor="end">f = c</text><text x="350" y="286" font-size="12" fill="#8a8a8a" text-anchor="middle">勾配は等高線に直交し、値が最も急に増える向きを指します</text></svg>勾配の向きが最も急な増加の向きで、勾配の長さがそのときの増加率です。逆向きに進めば最も急に減ります。
の点では話が変わります。すべての方向微分が になるので、最も急な向きというものが決まりません。極大・極小・鞍点の候補になる点です。
計算例:最も急な方向と増加率
さきほどの に戻ります。点 で でした。
最も急に増える向きは、 を長さ に直したものです。
そのときの増加率は になります。
前の節で計算した 方向の値 と、ほとんど変わりません。 が最急方向にかなり近いためで、それでもわずかに下回っている点が公式と整合しています。
勾配は等高線に直交する
等高線 の上を動く曲線を とします。曲線が等高線に乗っているので、 が恒等的に成り立ちます。
両辺を で微分しましょう。左辺は連鎖律で書けて、右辺は定数なので です。
左辺は と接ベクトル の内積にほかなりません。内積が なので、勾配は等高線の接ベクトルに直交します。
地図の等高線と、雨水が流れ落ちる向きの関係だと思えば納得しやすいはずです。水は等高線を垂直に横切って流れていきます。










x2y/(x2+y2) が反例です。連続であり、しかもすべての向きに微分できるのですが、向きごとの微分が向きについて線型にならないため全微分できません。全微分可能性は、各方向を別々に調べても届かない条件です。